030話
この後、宇垣は(精神的に)死ぬ
宇垣にとって、いつかは知られてしまう事であろうと覚悟していたが、足柄の艦長から出航当初から存在を知られていたと聞いて、愕然としてしまった。
秘密裏に潜水艇で接近して、艦底部から潜入したのにもかかわらずだ。
しかし、渡された電文は、山本からのものだった。交渉に関しては何も言ってきていなかったが、公式訪問員となる様に通達があった。
特に、今回初参加するファスサ・アメリカーナ連邦連合国と面識を持つようにと。
「ファスサ…と。ですか」
「か、勝手に文面を読むな」
「これは失礼致しました」
この男、実は日本共和国人なのではないか。そんな疑問が浮かんだが、それを振り払ってファスサについて知っている事を聞き出す。
「ファスサに関して知っている事は、殆どありません。しかし、日本共和国の友好国である事はアナウンスされております。今回の観艦式終了後、我が艦は鹿島と共に、ファスサの軍艦の誘導のもとでファスサの軍港を訪問します。その際、色々と分かる事もあるでしょう」
この際だから、日本共和国人に聞いてみてはどうかと足柄の艦長が、先程の戦闘機人の娘を連れてきた。
「は、はえ!?」
大変混乱した様子で大慌てだが、こちらも驚いているところだ。先程、離艦した筈ではなかったのか。しかし、ここにいる以上離艦はしていなかったと言う事だろう。
「私に何か御用でしょうか!?」
「あ、落ち着いて。ね、少し聞きたい事があるだけだから」
「聞きたい事…?ですか」
足柄の艦長が落ち付かせて、ファスサについて話せる事だけでもいいので、教えて欲しいと言った。命令系統の違いから、命令ができないためお願いと言う事になるが、彼女は承諾した。
「こちらでは確か、ファスサと言っていましたね」
「ああ、そうだね」
「では、本来の呼び方をご存知ですか?」
「ファスサ・アメリカーナ連邦連合国。とこちらでは呼ばれている」
「なるほど。よくわかりました。正解は、「歴親沌保存帝国植民地領中央アメリカ大陸諸連合ファスサ・アメリカーナ自治州」です」
「レキシントン…それが、本来の呼び方なのか…」
「そうです。そして、歴親沌保存帝国は我が日本共和国の同盟国です。小さいものでは「日歴布防共協定」。大きいものでは「枢軸連合国国家共同体」となります」
「友好と言っているのは方便で、同盟国家であると。しかし、こちらでそれを明かす事ができないために、友好国と公表していると言う事か…」
「そうですね」
「では、観艦式に参加するこのル・ジューラと言う艦に関しては知っているのかい」
しかし、彼女は首を横に振った。
「聞いた事がありません。また、かの国は現在「第6次軍備縮小整理計画」を実施しているため、新型艦が建造されたとしても、公表されるのはまだまだ後になります」
「軍縮中!?」
「そうです。この方面はどうなのかはわかりませんが、本国では年間40万隻の艦艇が解体されていますが、完了は800年後と試算されている様ですね」
規模が違い過ぎる。大小はあるだろうが、40万隻もの艦艇を処分できる施設と、それを管理できる国家の規模……。これは、想定以上に危険な国なのではないだろうか……。それこそ、軍事的には日本共和国よりも遥かに。
「では、レキシントンの国家規模…。取りあえず、この方面だけでいいので教えてくれないか」
「詳細は分かりませんが、この方面に民間人がいるとは聞いていません。軍の関係者程度は居るでしょうが…。軍備に関しては、聞かなくてもお分かりでしょうが…この方面には、海軍と空軍戦力のみが配備されています」
「む、陸軍は?」
「旧式の戦車が大量に放置されているでしょうね…。歩兵や戦車兵がいないと言う意味になります」
「旧式?」
「ああ、そうですね。この時代なら最新鋭の車両になるのですが、我が国の時代なら超が付くレベルの旧式です。T-34とかKV-1とか5号戦車とか……」
「前者はソ連の戦車か…。後者は?」
「ドイツの戦車です」
「現在計画中の車両と言う事か…」
肝心な海軍戦力の話をしろと促すと、2人は慌てて話を戻す。
「この方面には、超兵器は配備されていないそうです」
「超兵器……、確か通常兵器を遥かに超越した兵器、戦術程度の性能では済まず、存在が戦略に影響するでしたか……。どの様な兵器なのか…」
「改黄泉平坂級は超兵器に分類されます」
「「なっ!?」」
「ま、待ってくれ。では日本共和国は、超兵器を多数配備していると?」
「他国からすれば、超兵器に分類されているだけであり、我が国では通常戦力です。通常戦力を配備して何が悪いのです?それに、我が国で超兵器と言えば、この方面には1度しか投入された事がありませんが、改北海道級と言う事になります」
「改北海道級…確か、ソ連の満州侵攻で艦砲射撃支援をしたと言う戦艦か…………。確かに、あれ程であれば、改黄泉平坂と比べられないが…いや、基準がおかしいだろっ!」
「ふふん。それは、日本の基準だからです。日本共和国の基準では、問題ないのです」
ああ、話すだけ無駄だな。これだから日本共和国人は…。
「ああ、ありがとう」
「いいえ。お役に立ててのでしたら」
彼女は敬礼をすると、この場を離れて行った。
「逢引き中に連れて来たので、少し不機嫌でしたねぇ…」
「逢引き!?たるんでいるぞ!」
「乗員の自由時間まで、取り締まる事はできませんから。そんな事をしては、「ぱわはら」で訴えられてしまいますよ」
そう言う問題ではない。そうか、なら、私が鍛え直してやろうではないか…。覚悟しておけよ……。
恋人とおっぱじめようとして、呼び出しを食らった彼女は、怒り心頭でした。なお、すぐには帰艦せず、思いっきり楽しんだそうな。




