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お前らいい加減にしろっ(A)  作者: 加賀函館
第1章 何が起こるんです?
3/72

003話

登場人物


1.小野田幕僚

2.小野田海将補(秘書官)

3.山本海上幕僚部部長

 孫は目に入れても痛くない。それには同意しよう。同意はするが、それを仕事には持ち込まないで欲しい。そう思う。そして、軍人の矜持を忘れても困るのだ。秘書官曰く「萌え」という文化らしいが、女性が居る執務室には似つかわしくないブツが飾られている。女児では無いのだから、人形遊びをするのはいただけないと遠まわしに伝える。

「私に将棋をさせと?」

「軍人ですので、当然お出来になられるのでしょう」

「…………」

 何故、そこで渋い顔をして沈黙するのだろうか。まさか、日本共和国には将棋がないのだろうか。いや、存在を知っていると言う事は存在するであろう。まさか、いや、まさかか。

「小野田幕僚がそう言った類の物を手にしている記憶が御座いませんが?」

 一番聞きたくない事実をしれと秘書官が口にした。そして、さも当然と開き直って彼は言い放った。

「考えるのは苦手だからな!はっはっは」

 幕僚と言う階級は、こんなのでもなれる階級なのだろうか?そう思っていると、秘書官が衝撃的な事実を打ち明けてきた。そんな情報こそ、最も必要無かったぞ…。

「あまりお聞きには成りたくは無いでしょうが、非常に不安に思える小野田幕僚は救国の英雄の1人なのです。この方が推進した計画がなければ我が国は……。ですから、普段の様子があまりに酷くとも、成果によって帳消しされるのです。恐らく、この事は天野幕僚も御存知ないと思われます」

「いや、あれは……。ナンデモナイデス」

 何か言おうとした彼を秘書官の無言の威圧が黙らせる。これでは、どちらが上か判らないではないか。

「取りあえず、仕事の話をしようではないか」

「ええ、何も決まってはいないので。早急に話し合いが必要でしょう」

 頷いた私に言葉を促した秘書官に対して、彼は訳が分からないと言いたげに、こう言いだした。

「既に、大方は決めたから、そのうち話そうかと…?」

「「は?」」

 秘書官と私の間抜けな声が重なる。決めた?一体何を?

「当事者の居ないところで、国防計画を決定なさったのですか!?」

「け、決定と言うか…私案と言うか……」

 秘書官の鬼の様な形相に圧倒されつつも、彼は言葉を口にした。どうやら、まだだった様で一安心だった。しかし、この人と仕事をするとなると、気苦労が絶えないな……。そんな事を思っていると、秘書官は計画書の概要を読み終え、少し考えた後にこう発言した。

「やはり、そうなりますか…」

「え?そうじゃないの!?」

「我々だけなら、納得できたでしょう。私も、異議を唱える必要性は全くないと判断します。しかし……」

 秘書官は、そう言って私の方を見た。彼は、取りあえず君も見る?と言って、概要書を渡して来た。2人とも意見が合致すると言う、言い得て奇妙な概要書に目を通した私は信じられなかった。何が、どうして、どうなって、これ程、信じられない計画に納得するのだろうか。

「駄目なのか?」

「山本さんの表情からもお分かりでしょう?」

「なぜだし」

「説明は必須です。ただ、説得は無理に等しいでしょうが」

 説得も、何も、ない。ありえない。常識人のはずの秘書官が非常識人に……。嘘だと、言って欲しい。しかし、非常に困った顔をしているためか、どうにか声は荒げないで置きたい。

「はひぃ!?「防護巡洋艦戦術」を「防護巡洋艦」を知らない奴に教えるのか!?」

「ですから、無理なのです。現物も見せられない状況では、遂行不能です」

「ho......」

 何を言っているのだこの2人は、防護巡洋艦なら知っている。若い頃、乗艦したこともあるのだ。その性質も、何も。防護巡洋艦とは、石炭貯蔵庫の上部に装甲を配置した巡洋艦の事で、現代の巡洋艦に続く系統の1つだ。それを知らないと思っているこの2人はあまりにも失礼ではないか!

「私も軍人ですので、粗方のフネは知っていますよ」

「「……」」

 2人の困惑度合いは更に増した様だ。

「……我々が言っている「防護巡洋艦」は、燃料庫に対しての防御を施した巡洋艦……「防護巡洋艦そうこうじゅんようかん(旧)」では無く、機動防衛戦に特化した超高速巡洋艦……「防護巡洋艦(新)」の事です」

 彼は私にそう説明した。意味が分からない。機動防衛戦?超高速巡洋艦?機動戦と言う事ならば水雷戦隊と言う事だろうか。しかし、水雷戦隊の船足がいくら早くとも航空機の機動力には敵わない。超高速巡洋艦と言うが、巡洋艦クラスの艦で40kt以上の速力を持つ事がどれ程無謀な事か。分からない訳ではないだろう。

「残念ながら、我々に関する知識が不足した状態で、何を言ってもどうする事も出来ません。が、知識を蓄える時間もありません。ですので、山本さん。山本さんの思う概要をお聞かせ願いませんか?」

 これ以上は時間の無駄であると割り切った秘書官は、当初の予定通り私に発言を促した。非常に遺憾だが、どうする事も出来ないので滅茶苦茶にされる前に、なんとかせねばなるまい。

この後、山本は(精神的に)死ぬ

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