027話
24時間働けますか?
俺が直接的に動かなければならない事に、不満しかないが、しょうが無い。で、早速UKに来た訳だが、今回のIOJの招待を新国王に進言したとされる男に面会を申し込んだ。
偽りの名では無く、正式なファスサの軍人としてその男、ビーケ・サー・ホルテに面会した。
「遠路、遙々ようこそ、私がビーケ・サー・ホルテです。ファスサ軍大佐、ガイテナル・トノマツ殿」
「ふむ、少し訂正をさせていただきたい」
「…?」
「私はファスサの軍人では無く、ファスサを管理する国である歴親沌保存帝国の軍人なのだ。そこは、覚えていてもらおうか」
ホルテ氏とその文官は、顔には出さないが驚いていた。当たり前だろう、ファスサからやって来る事自体が、珍しいのだ。そのやってきた人物が、ファスサよりも上位の国の人間と知れば、警戒せずにはいられない。
「それは、失礼しました」
「致し仕方ない事だ。我が国の名を聞いたのは初めてだろう。それに、前にファスサ側の人間が来たのはこの国が成立したばかりの頃と記録があったのだ」
「よくご存じで」
「これくらいは調べなければ、話にならないとは思われませんか?それに、私が専門としている分野は、非常に複雑怪奇な分野でしてね。何をしでかすか判らないのですよ。だからこそ、詰まらない事でも、覚えておかなければ、取り返しのつかない事になるのですよ」
「まあ、私に面会を申し込んできたと言う事は、彼らに関しての事をお聞きになりたい……と?」
「ええ、そうです。私の専門は、日本共和国との外交でしてね。お恥ずかしい事ですが、今の彼らに関して情報が枯渇しているのです。無論、タダで貰おうとは思いません。私の権限の中で、情報を交換しましょう。と、言う提案ですが」
話としては、こちらがした手に出るしかない。まぁ、情報の多さなら、問題ないほど持っている。そこから、交換できる情報をどれだけ引き出せるかという問題だ。
「ほう、交換ですか。しかし、今しがた「日本共和国に関する情報が枯渇している」と申されておられていたではありませんか?」
「この方面の、日本共和国の情報が不足しているに過ぎません。我が本国は、日本共和国の隣国ですので、そちらの、この国に有益な情報と交換を。そう思っていますがね」
その意味が分かりますね?と言う凄味を含めて言えば、2人は息を飲んだ。
ただ、こちらに来てからある程度調べた限りでは。早速、やらかしてくれちゃった様だが……。この男が、IOJ脅威論を展開する理由も、そのやらかしが理由だ。
「日本共和国と隣国ですか……(ドン引き)」
「ちょ、ちょっと、待ってほしい。彼らの様な狂人と同じ扱いは、失礼極まりない。私だって、何度酷い目にあわされた事やら……」
「狂人なのは、否定しないのですね…」
「話が通じない上に、それを自重しないのだ。気が狂っていると言って、何が悪い。貴国の愛弟子が、「軍人たるもの、ユーモアを持つべし」を歪曲した結果が、あの行動なのだ……」
萌えをユーモアに含めるのは、マズイと思うのは私だけではないが、完全に否定しきれないところが、痛い。
「戦場で、どの様な事をしでかしたかは分からないが、あれは彼らの本気ではない。そもそも、彼らが本気で戦う事ができる様な国は、我が国以外に存在しない。それ程、彼らの本気は凄まじい」
「そう、言い切れる根拠は?」
「ふむ、では、君は「兵レベル区分」について知っているかね?」
「いいえ、初耳ですね」
「そうか。…これは、日本共和国が強さをレベルという方法で表したものだ。通常の国の一般兵がLv.30~45程度、特殊部隊でLv.50~60程となる。そして、この表記なら、日本共和国一般兵はLv.1200程度と言う事になるな」
嘘だよなと言いたげだが、事実だ。そして、我が国の軍人も大体同じレベルだと伝えた。ちなみに俺は、Lv.1800を少し超えたあたりになる。
「そしてだ。ここが重要だが、日本共和国は「神」の必要最低レベルも表記している」
「なっ!神!?」
「そう、そして、日本帝国に1人だけ、最も近い男がいる」
「その、男とは……?」
「日本で最も、神に近い男と言われる存在は1人しか存在しないだろう。ちなみに、Lv.9650だそうだ」
神の最低レベルは1万となっている。限りなく、神に近しい存在だ。流石、神の子孫を名乗るだけはあるな。
「なんと…、不敬な……」
「それは、君達の宗教感覚からすれば、と言う事かね?なら、日本共和国に対してその論理を振りかざしても、全く意味は無い。彼らに、宗教感覚は無い。無いが故に、最も恐ろしいのだ。彼らは、「生まれた時は神社に行き、結婚する時は教会に行き、死んだあとは寺に行く」のだ。宗教的な不敬罪よりも、現実を見よ。脅威と思っているなら、最悪にならない様にするのが必要であろう?」
レベルの話を振って置いて難だが、混乱させてしまった様だな。ま、計画通りだがな!
だが、やはり。IOJの真意は分からなかった。資源…なのであれば、満州を手放す理由が分からない。ソ連を半壊させたのは、余計な手間を取らせないためだろう。
嫌な予感が的中しそうな予感が…。
「トノマツ殿に再度お聞きしたい」
「うむ?」
「日本共和国の真意はどこにあるとお思いでしょうか」
「分からんな」
「……」
「ただ、日本共和国には領土的な野心も、資源的な野心も無いと言う事は言える。だからこそ、分からんのだよ。彼らが、何を目的としているかが……」
直接聞くしかない。正直に答えてくれるかどうかは不明だが、答えを引き出さなければ、非常に困るのはこちらである。
か細い情報網を使って、派遣艦に関して調べる。IJも重要だが、他国の艦やその乗員にも気を配らなければならない。
IOJの出現により、本来歴史上に登場しない人物が出てくるのだ。先程のホルテ氏がそうである。
本来なら、伝えるべきではないが、UKが陥落する方が面倒くさい事になるため、それを避けると言う意味でも、本来起こるべきだった歴史をかい摘んで教える。
無論、ホルテ氏では影響力が低すぎるため、ホルテ氏が持ってしまったコネを使ってもらった。つまり今、話した内容はジョージ6世とそれに近しい人物に話したと言う事になる。
「ドイツが新たな戦争を起こす……。信じられませんね」
スタンリー・ボールドウィン首相は、そう発言をしたが、ウィンストン・レナード・スペンサー=チャーチル氏は、激しく反論した。
「ナチスが暴走するのも、時間の問題と言う事だな。なら、さらなる結束が必要であると」
「そう言う事になる。日本帝国の主権が停止しているため、三国枢軸同盟は成らないが、それに代わる同盟ができないとも限らない。それにより、貴国が滅ぶような事があれば、我が国にも被害が及ぶ。また、本来ならば、ウラル以西が発展している筈のソ連が半壊状態にある事が、加速的にドイツの強化を促進している。また、彼らは最終的に、日本共和国と戦うつもりなのだろう。その準備として、着々と科学技術を発展させている。そんな相手を前に、足踏みしているこの状況は凄まじいまでに、危険だ」
チャーチル氏以外の政治家達は、俺の話を話し半分で聞いている様だが、ジョージ6世が青ざめている事を考えれば、その態度はマズイと言わざるを得ない。
「日本共和国が何をしようとしているかは、今は不明だが、君達にとってはまずい事をしようとしているのではないか。そう、予想が立てられている」
「我々にとってのまずい事?」
「ただの予想だが、本来は干渉不可能なのだがな……。ソレを殺そうとしているのやもしれない。ジョージ陛下、あなたは予言をお聞きになった事はありますでしょうか?」
話を振られたジョージ6世は、言葉に詰まり全く話せない。だが頷き、予言を受けた事がある事を肯定した。
「本来は、干渉不可能な存在。そして、予言を授けてくれる。正に、神ではないのかね?」
「そうだ。神だ。正確には、少し違うのだが、彼女らが神に名を連ねているために、神を殺そうとしていると言っていい」
「な……」
「奴らは本気だろう。その証拠に、鹿島級巡察航洋練習艦の配備が決まっている」
鹿島級は、巡察航洋戦闘艦出雲級の乗員を育成するための専用艦であり、今の時代に配備しても、ただの余過剰戦力にしか過ぎない存在だ。政治的な意図により、派遣される事はあっても、配備される状況は異常事態と言っていい。
出雲級は本来、改黄泉平坂級防護巡洋艦の強化型の予定だった艦だが、西暦2012年に起きた「東海関東大震災」により、凍結された艦だった。
それを復活させ、更なる強化を行った理由は、ソレが深くかかわっていた。ソレは、1体で改黄泉平坂級5000隻に相当する戦力を備えていたのだ。
度重なる連戦により、改黄泉平坂級も消耗し、究極超兵器を投入せざるを得ない状況になる。究極超兵器と究極超兵器同士の戦闘など、破滅しか呼びこまない。
「出雲級は、ソレと戦うための専用艦としての性格が強い。それを配備する兆しを見せつけているのだ。もし、邪魔をするようならば、友好国でさえ容赦無く攻撃してくる。自国のためなら、世界を相手取った戦争も辞さない。それを完遂できる戦力を持つのだ」
「神に戦いを挑む事を見て見ぬふりをしろと!?」
「言っておくが、ソレらは君達も容赦なく攻撃してくるぞ?」
当然であった。彼女らは神兵であって、自らの創造主以外は基本的には気に掛けない存在だ。ただ、そんな奴らと交渉するIOJの交渉力は、頭がおかしいとしか言いようがないが…な。
「我が国とて、度々被害を受けるのだ。そして、本来同じ主を信仰する存在でも、自らに並ばないのであれば、容赦無く消す。あれらは、君達の事をアリ以下の存在としか見ていない。条件を揃えれば、召喚できなくはないが、やめておいた方がいい。日本には「触らぬ神に祟り無し」と言う言葉があるが、その通りだな」
我が国の数多ある植民地領の中にも、ソレに巻き込まれた領が存在する。大抵、こちらの戦力を多数投入することで、事なきを得る……いや、敵性戦力の排除はできるが、生命体が生きる事ができる環境を残す事は出来ていない。つまり、世界が滅んでしまったと言う事になる。
究極超兵器。またの名を「殲滅魔法兵器」と言う。神兵なので、殲滅魔法兵器と言うのが正しいだろう。
「……。もし、我々が形成しているFABDA包囲網が、日本共和国の琴線に触れてしまった場合。どの様な事が起こるのか…」
「ああ、日本共和国が南下政策をするとか何とかというヤツか。確かに、殲滅魔法兵器がいるのは、南極大陸だから、南方に興味が無いと言うのは、あながち間違えではないが、南極大陸以外には興味が無い以上、刺激はよした方がいいだろう。これ以上、刺激するなら理不尽な理由で宣戦布告された上で、ウラル以西の様な状況を世界中で起こしかねないだろうな」
過去に、「茄子が嫌いなので攻撃する」と言う理由で、ドイツを滅ぼしていた。そう伝えると、誰もが頭を抱えた。一応、ユーモアの範囲らしいが、そのネタ。お前らにしか分からないからな!?と、抗議した記憶がある。
「彼らに常識は無いのか!?」
「常識ならある。日本共和国の常識がな……」
「がっ!(吐血)」
チャーチル氏を含んだ、政治家達がうめき声を上げる。IJは純粋すぎる常識しか、持ち合わせていなかった。UK側は早々に、他国の植民地となると予想していたようだが、残っている事が奇蹟だと思っていたようだ。こんなに、壊れているのは想定外だが……。
数日後にUK側の協力を得て、要注意たりえる人物の特定が始まった。とは言え、UKでさえ本来参加しない筈の諜報員が紛れ込んでいたため、作業は難航する事となった。
ゆっくり来いとは言ったが、案外早くに到着したグロス中佐とその部下達を使って、作業の効率化を図ったり、他の政治家達の説得につきあわされたりと、スケジュールは目いっぱいに詰まっていた。
休まなくても済む、機人の身体のお陰で24時間働けるが、生身であるグロス中佐以下その部下達は、バタバタと倒れている。倒れても、起こされて仕事をさせられる。死にかけても、無理矢理治して仕事を積みあげられる。労働基準法?今は、無視だ。
「は?鹿島が未だに出航していないだと?足柄は、ジブラルタルに寄港したと報告があったぞ…」
「それなのですが、どうやら日本共和国側は、本埼幕僚総長を式典に参加させるために、ギリギリまで出航しない様なのです」
「本埼幕僚総長だと!?何故、その様な最重要報告が無かった!」
「今、入って来たばかりの報告です。まだ、報告書さえまとめてさえもいません」
目の下に隈ができ、げっそりと痩せたグロス中佐は、最近になって実力をつけたためか、仕事が早くなってきた。それはよい事だと思いつつも、新たな問題に頭を抱えたい気分になった。
本埼結衣希幕僚総長は、日本共和国軍のトップだ。軍で最上位、彼の上位者は国防大臣、総理大臣、天皇の3人しかいない。皇族が派遣できない状況に置いて出せる最上位者であると言える。
しかし、問題はそこでは無い。本埼幕僚総長はあまりにも可憐過ぎるのだ。女性よりも、女性らしく。余りにも低い背丈と、かわいらしい声に騙された奴は星の数もいる。日本共和国人なので、漏れなく高いレベルを有している(正確な数値は不明だが、だいたいLv.2200ほどだと言われる)ため、見た目に反して攻略は難しい。これで、論が立つのだ。絶対に相手にしたくない。
「つまり、瑞穂を使って直接転送してくると?」
「その前には合流するでしょう。式典ですので、入港する方にも品位が求められます。いきなり乗りつけるような事を、上層部が許可するとでも?」
常識が壊れている割には、礼節は守るため、それは大丈夫ではないかとグロス中佐は言った。たしかに、それは一理あった。
「あとは、こちらに来てからの行動だな…」
絶対にやらかす!だからこそ、それを最小限に抑えなければ……。彼らには申し訳ないが、あと少しだけ頑張って貰おう…。




