024話
ちょっと、ミリタリーっぽいお話し。伊藤の葛藤とも?
妙高型巡洋艦「羽黒」が就役し、艦隊指揮能力を強化した高雄型巡洋艦の建造がはじまっていた。計画を聞く限りでは、この後に15cmクラスの砲を搭載した最上型、索敵力を強化した利根型、妙高型の強化型である伊吹型、最上型の強化型である浅間型が続くそうだ。
水雷戦隊指揮用、5500t型の代替えとして阿賀野型、潜水艦隊指揮用として大淀型、直衛艦として改粟月型が整備される。
この中から、英国へ派遣する艦を選べ。そう言う命令であった。日本共和国からは、最精鋭練習巡洋艦鹿島が派遣される事が決まっており、鹿島に劣らない練度を持った艦で無ければ、恥をかいてしまうだろう。特に、現在の主力である妙高型の乗員を鍛え上げた鹿島型の乗員に認められる様でなければならない。
凄まじいまでのプレッシャーであったが、訓練の成績から派遣する艦を巡洋艦「足柄」にする事に決定した。
妙高型は、シアーの強い艦首から1、2番砲塔が続き、3番砲塔がシェルター甲板上に乗る。そのすぐ後ろに背の高い艦橋。本来2本になる筈の煙突を1本にまとめた大型煙突。航空作業甲板とクレーンの付いた後部艦橋。後部シェルター甲板上に4番砲塔。その後ろの甲板上に5番砲塔が並ぶ。
日本共和国では、「伊吹型船体」と呼ばれる配置だそうだ。この船体を、妙高型、高雄型、最上型、利根型、伊吹型、浅間型が共用する。遠目から見れば、妙高型と最上型は主砲が違うだけで、全く同じ艦であると見えなくは無い。
しかし、最上型は阿賀野型と共用する事が考えられており、魚雷発射管を搭載している。本来、他の巡洋艦にも搭載される予定だったが、防御上好ましくないの一言で、用兵側の要求は却下されている。
また、睦月型駆逐艦で採用された61cm魚雷も廃止され、水上、水中、航空の魚雷の長さ及び直径は同一の物となった。
即座に文句が挙がったが、日本共和国側が自らの過去を公開し、これから開発されたであろう「93式魚雷」を開発しない意図を説明して回った。当初、「それほどまでの高性能兵器ならば、多少の整備性の悪化は目を瞑るべきだ」と誰もが主張したが、日本共和国が今の我が国の技術力をもってして造れる、桁違いの魚雷開発書を持ってくると、誰もが蒼白となった。
ここに、新型魚雷「91式45cm魚雷」の性能表を出してみよう。
名称:91式45cm中魚雷
全長:4550mm
直径:450mm
炸薬:鋳化水素30kg
重量:500kg
速力:110kt
射程:70ktで60km
推進方式:二重反転ハイスキュードスクリュー
誘導方式:音響/熱源/有線/無誘導
信管:接触/近接/磁気/時限/大遅延
燃料:水(海水)
と、なる。炸薬の鋳化水素とは何ぞやと思い聞いてみると、特殊な方法以外では熱しても、電気を流しても爆発しない固体水素なのだとか。威力は50kgでダイナマイト(TNT)12t分にもなるそうだ……(ただし、発泡しているためにかさ張る)。
93式では、酸素を燃焼剤に用いていたが、91式は水…と言うよりも、その中に含まれる水素と酸素を燃焼剤として用いる。特殊なフィルターを使い、水中に溶け込んでいる水素と酸素を回収し、それを燃料に駆動する。なら、射程は関係ないのではないかと思えるが、発電機を搭載していないため、バッテリーである単一乾電池が切れるとそこまでとなる。
射程は最大速力である110ktで45km。最低速力である30ktで420kmにもなる。泊地に停泊している艦艇攻撃に用いるなら、30ktでも十分に役割を果たせそうである(おかしい事は理解しているが、気にしたら負けなのだろうな……)。
現在の魚雷には、誘導する方法は殆ど無い。魚雷制御盤である程度の角度は決められるが、魚雷自体に命中するための誘導機能は無い。それに、誘導機能が付くと言うのだから、感動モノだった。
日本共和国の68cm魚雷は撃ちっぱなし方式を採用している様だが、それを実現できる技術が我が国には無いため、ある程度の緒言を入力せねばならない(そもそも、日本共和国の魚雷は反重力推進(!?)の水中音速魚雷で、簡易RASと言う方式を用いている)。
これが、水上、水中、航空で共有される。特に、射程が短くても構わない航空魚雷は「92式航空魚雷」と名付けられ性能がおかしい。おかしい。
名称:92式45cm航空魚雷
全長:4550mm
直径:450mm
炸薬:鋳化水素100kg
重量:500kg
速力:260kt
射程:260ktで10km
推進方式:ハイウォータージェット
誘導方式:音響/熱源/無誘導
信管:直撃遅延
燃料:水(海水)
すぐに海中に没せず、10km程海面すれすれを滑空してから後部から着水する。推進器は、スクリューでは空回りするだけなので、海水を噴射する方式に切り替わった。
水中爆発の影響をほぼ受けないため、早速やらかしてくれたようだ……。艦艇にこんなものを搭載して、至近距離で使用すれば自爆しかねない威力だ。津波を引きおこせるため、直撃して艦内に飛び込んで爆発する方式となっており、突入できなければ爆発しない様になっている(ただし、誤作動時はこの限りではない)。
流石に、こんなおかしいものをホイホイと載せる訳にも行かず、日本共和国の提案に乗るしかなかった。まあ、肝心の主砲もおかしいのだがなっ!お前ら…いい加減にしろ……。
暴走した日本共和国技術陣による、おかしい兵器その2。15.5cm60口径砲。
砲撃の威力よりも、手数を持って相手を制するという考えの元開発されている。平射砲では無く、両用砲としての性格が強く、通常砲弾と装薬は別々になっているが、これは一体化している。ただし、装薬は先程の鋳化水素を用いており、発射後のガス排出や清掃を行わずに済むのであった。
また、リボルバー式と呼ばれる装填機構で、最大8連射が可能となっており、再装填に10秒もかからない強みがある。ただし、機構が大きいため砲塔が必然的に大型になっている。
暴走した日本共和国技術陣による、おかしい兵器その3。20.3cm55口径砲。
こちらは威力重視。平射砲として開発されているが、対地攻撃のみ誘導砲弾を使用した曲射攻撃を行う。誘導するためには、観測機をうち上げなければならないのが難点である。
速射性よりも威力重視であり、砲弾も100kgから170kgに増えている。ただし、多目的対戦車榴弾と呼ばれる榴弾だけは550kgの重量がある(この重量は、31cm砲弾に匹敵する。が、日本共和国の事なのであまりあてにはならない)。
砲塔にも十分な防御が施されており、25cm砲の直撃を弾く事ができる。日本共和国艦は防御重視なためか、1~3ランク高めの防御設定をしている。
余談だが、応急修理のやり方は特に重点的に叩きこまれ、数多くの将兵が根を上げたものだ。艦を失うなら、死んだ方がマシ。では無く、1人でも多くの仲間を救うために艦を失うな。と教え込まれ、意識を変えざるを得なかった。日本共和国の歴史に登場する巡洋艦「熊野」の話は、余りにも泣ける話である。こうならないためにも、必死に頭に、体に覚えさせられた。
暴走した日本共和国技術陣による、おかしい兵器その4。57mm多連装噴進砲。
対空兵器として高角砲の補助を主な役割としている。ただし、射撃する噴進弾により、対空のみの装備ではない。飛翔高度は高角砲と機関銃の中間程で、時限信管にて作動する。ただ単に、射程だけならば、30kmは飛翔する。
この噴進弾の威力を増し、炸薬を多くした対潜弾が存在し、今まで対潜能力の無かった大型艦にも威嚇程度の対潜能力を付与する事となった。本来ならば、前面にも投射可能な対潜兵器の登場はまだ先だが、そんな物知るかと言いたげに採用した。まあ、本来は対空兵器なので、それ以外の用途に気付く人間がいるとは思えない。
暴走した日本共和国技術陣による、おかしい兵器その5。新型高角砲。
高角砲は、高射砲の海軍的呼び方だ。当時は、形式美が優先されたためか、陸軍と同じ呼び方は好ましくないためか、この呼び方になった。
この高角砲は両用砲では無く、高角射撃専用であり、平射射撃をすると駐退器が故障しやすい。のだが、日本共和国のモノは、両用砲となっている。射撃に装薬を用いる方式だが、砲弾がベルト給弾式となっている。信管は、近接信管であり、射撃した艦から発せられた電波が相手にあたり、跳ね返った電波を探知した時に作動する、最も簡易的な近接信管だと言う。
そのために、電波探信儀と言う物を設置し、もっと効率のよい無線機を搭載した。確か、ディジタルと言ったか?現在のアナログ方式とは異なり、ディジタル方式無線機で無ければ、通信を拾う事さえもできないどうだ。また、暗号化しやすいため、暗号化キーが無ければ解読すら不能ときた。
これを利用して、通達を行っているが、これが文明の力だと思い知らされている。
しかし、最重要通達だけはQRコードを用いて行われる。これは専用の端末が無ければならず、その専用端末も登録者以外は全く操作できない様になっている。例え、敵に渡った場合でも、軍用のQRコードがでかでかと印刷された紙が1枚のみなので、何もできないと言う安心感……。無力感…?
話はそれたが、この新型高角砲は機関砲感覚で使えてしまうため、凄まじく危険ではないかと言われる。射程も15.5cm砲並みはあるため、例え徹甲弾が無くとも非装甲部に対して十分な打撃を与えられると考えられた。
どの艦型も4門以上は搭載する。特に、この新型高角砲を主砲とする改粟月型はケタ違いの艦となることは、既に確定済み。また、改粟月型は戦時量産を視野に入れた艦なので、戦時には艦隊が改粟月型で埋め尽くされかねないと言われている(改粟月型の元となった改秋月型と言う艦は、3000t近い排水量を持ちながら駆逐艦に分類されていた)。
暴走した日本共和国技術陣による、おかしい兵器その6。25mm自動砲。
日本共和国艦に搭載される自動機関砲。25mmで砲と言うのは語弊がありそうだが、砲と呼ばれているのでそう呼ぶ。
これには、陸戦型と海戦型が存在し、陸戦型が満州で大いに話題になったアノ機関砲砲塔である。海戦型は、装甲貫通力よりも速射力と多種多様な砲弾を使用する事が重要であった。特に、電磁パルス弾と言う砲弾は、1発で重爆撃機を撃ち落とす威力(爆発でと言うよりも、その特殊な効果でが正しい)を持っている。陸戦型は流体徹甲弾と呼ばれる砲弾を高速で撃ち出す事が重要であるため、速射力は犠牲になっている。
この海戦型をありとあらゆる艦艇に搭載することとなった。艦載水雷艇にも搭載されると聞いた時は、頭が痛くなった程だ。
暴走した日本共和国技術陣による、おかしい兵器その7。9mmガトリングガン。
直径9mmの鉛玉をばら撒くだけの機銃で、ガトリングガンは日本語で多砲身機関砲と言うらしい。このガトリングガン自体は古くから存在するそうだが、あまりにも整備性が宜しくなかったため、機関銃などが登場すると廃れてしまったそうだ。
ただ、音速を超える航空機の機関砲として再度脚光を浴びせられた結果、この様に多種多様なバリエーションを得た。
この9mmガトリングガンは、艦艇用では無く艦載機や搭載機用であり、後部機銃や防御機銃座に搭載される。これと同じモノが、ハニに搭載されているが、聞いたためしがないのは25mm自動砲のせいであろうか。
あたまおかしい。
さて、話に戻ろう。巡洋艦の整備計画が進む中、駆逐艦も吹雪型以降の艦を整備する事となっている。本来なら、艦隊型を整備するのだが、駆逐艦に専門性はあまり要らないと言って、多目的型の建造が行われる事となった。
型式:陽炎型
全長:120m
全幅:11m
排水量:2200t
速力:53kt
乗員:110名
武装:
12.7cm50口径高角砲×6門
45cm7連装魚雷発射管×2基
57mm8連装噴進砲×2基
25mm自動砲×8基
爆雷速射機×2基
となっている。大鳳型空母の最大速力が50ktに近いため、随伴艦にも高速が求められている。そのため、船体が大型化しており、大出力機関を搭載している。缶の配置は、シフト配置と呼ばれる型式だが、2軸だった推進器をスクリュー2軸とウォータージェット1軸にし、速力向上を図っている。
我が国の工業力/技術力が向上した場合は、更なる強化型の夕雲型の建造が計画されている。
型式:夕雲型
全長:125m
全幅:12m
排水量:2600t
速力:59kt
乗員:100名
武装:
12.7cm55口径高角砲×7門
45cm15連装魚雷発射管×1基
57mm12連装噴進砲×4基
25mm自動砲×10基
爆雷速射機×1基
防御も強化されており、完成形と言っても過言ではないだろうか。
艦隊に配備される艦は、最新型となるが後方に配備される艦は旧式艦を改造した艦ばかりとなる。ある程度致し仕方ないのやもしれない。しかし、補給線を維持する事は重要であるため、こちらにも力を入れるべきである。資金が無いが。
昔から言う「陸より海に」ではないが、海軍を優先した方がいいと思う。思いたい。
事実、日本共和国は陸軍よりも海軍の整備に力を入れている事は、ひしひしと伝わっている。だからと言って、油断もできなかった。
日本共和国の事なので、大きなしっぺ返しがあるのではないかと、参謀達が囁いている。事実、当初大型巡洋艦を中心とした整備計画を山本長官が、空母を中心とした整備計画に変更させている。また、山本長官の秘書官から、御前会議上で天皇陛下ご自身が提案された整備計画を変更させられた事に関して、文句を言っていたとの事だった。
知らなかったこととはいえ、我々海軍もやらかしてしまった以上、この先の更なる増強は難しい状況に、追い込まれるだろうと予測された。
山本長官にその事を問うと、一定の理解は得られたと返答はあった。ただし、永野GF長官が言うには、天皇陛下は日本共和国での従軍時は海軍の軍艦乗りだったそうだ。そんな天皇陛下でさえも、空母整備に難色を示した事に、海軍上層部。空母主戦派は、驚きと失望が折り混ざった状況になっていた。
これは、ある種の日本共和国に対する失望と言える。しかし、一国だけでどうにかできるような案件でもないため、今回の派遣に際して秘密裏に交渉を行うための交渉官を派遣する事となっていた。
天皇陛下は、日本共和国の排除には消極的な見解を示したが、それでも我慢できない派閥は存在する。空母主戦派も一枚岩ではないのだ。
今回は、戦艦主戦派が主だって動いていた。戦艦の整備計画は、八八艦隊計画にも届かない大和型戦艦4隻の整備のみであった。しかも、大鳳型が戦没する様な事があれば、空母に改装される事を前提としている。と、事前に通告されており、その怒りは空母主戦派にも向けられていた。
空母主戦派の首領たる山本長官が、積極的に排除を提案しなかったとして、戦艦主戦派は空母主戦派と決別しようとしてもいた。ただし、両派閥に存在する穏健派は関わらない姿勢を見せており、海軍上層部は混沌としていた。
その代わりに、陸軍は大陸からの撤兵の影響からか、それ程荒れた印象はない。多少の葛藤はあるだろうが、東條陸幕部長の元で、粛々と軍備増強を行っている。
ただし、ここ最近になって新たな問題が発生した。それが、陸軍艦隊の整備計画だった。
陸軍艦隊と言ってもピンと来ないだろうが、要は陸軍兵力を輸送するための艦艇部隊を整備すると言う事だ。今までは、陸軍が徴用した民間船を海軍が護衛する形をとっていた。それを、専用の輸送艦を建造して、陸軍所属艦に護衛させ、陸軍だけで完結できるようにすると言った計画なのだ。
残念ながら、日本共和国側はその案を理解したとして、海軍側に譲歩するように通達してきている。
山本長官が噛みついて、保留となったが、小野田幕僚に「後方を護る気が無いなら、後方の安全を陸軍に任せればいい。護る気があるなら、海軍内のゴタゴタをどうにか収め、現在進めている整備計画を見直すべきだ」と警告を受けてしまった。
両方を進めるべく、予算をくれと遠まわしに提案し、即刻却下されている。そんな人員はいないし、予算も無いと。陸軍に回す予算と人員を海軍に回すべきだと提案しても、却下された。予算内でやり繰りできるようにするべきであり、その努力を怠ったツケなのだと。
兎も角、海軍は予算を使い過ぎているため、予算の使い方をもっとよくしろと言う訳だ。陸軍もそうではないかと思ったが、天野将軍の部下が好き勝手にさせてくれず、厳しい目を持つ財務管理者が割り当てられた結果、予算を削減しつつも増強を行えるようになったそうだ。小野田幕僚は、天野将軍の様に「やさしくない」ため、自力で達成しろと言う事になる。ただし、永野GF長官と私以外に気付いている人間は、数えるほどだ。
あの、羽生司令さえも少し話せば理解したと言うのに、山本長官などは頭が固いと言わざるを得なかった。
大井提督の苦労を察しろと迫る小野田幕僚。優しく無いと言うよりも、小野田海将補にお灸をすえろと命令されたが正しい。




