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お前らいい加減にしろっ(A)  作者: 加賀函館
第3章 ちんどん欧州訪問()
22/72

022話

米国「お前らいい加減にしろっ」


日本共和国「……」

 孤立主義。アメリカ合衆国が、世界大恐慌からの脱却を狙って執られた外交主義だったが、極東で日本が大国化し始めると、すぐにそれが行き詰まり始めた。

 特に、日本が世界で最初に世界恐慌の影響を脱却したと言われたため、企業の経営者達や国民から罵声を浴びせられる形となった政府は、植民地としていたフィリピンだけでは、糧が足りないと、既に日ソの間で争奪が始まっていた中国東北部…満州に目を向けた。


 そんな時だった。あの国が、日本を蹂躙したのは。


 彼らは、自らを日本共和国と名乗り、国際連盟の議場で日本を日本共和国の庇護に置くと宣言。その上で、満州に展開していた軍を引き揚げ、中華民国へ天津と大連含んだ地域を返還。自らは、朝鮮半島へ引きこもった形となった。

 この日本共和国の行動に警戒したのか、ソ連も小規模な威嚇行為は行っても、大規模な軍事行動に出てこなくなった。正に、獲りに行くなら今がチャンスと言えただろう。日本共和国が、中華民国と不可侵条約と共に結んだ宣言さえなければ……。

 その宣言とは、「日本及び日本共和国は、本領を保有する国家の許可なく侵入する事はしない。しかし、本領を保有する国家、及び日本領朝鮮が危機に瀕した場合、許可を得た上で軍事行動をとり、平和を取り戻すために行動する所存である」と言うものだ。

 つまり、日本領や日本領に隣接する国に、他国が軍事力を持って侵入するならば、その国の許可を取るが、場合によってはそれをも無視して防衛と言う名の攻撃を行うと。

 中華民国の蒋介石は、軍の能力が低い今は、日本を利用しようと言う腹積もりだったに違いない。その証拠に、イギリスはインド、フランスは仏印から北上する気配すら全くない。

 肝心の中華民国は、日本軍が譲渡した(おそらく撤退時に破棄した物だろう)武装を使って他の地方閥を次々に平定して行った。忌々しい事に、日本が残りの装備も売却したことで、日本は外貨を得ていた。その上、日本共和国が行った大軍縮の影響で、軍事費が激減していた。

 しかし、日本の軍備は中華民国並みかそれ以下となった。これは完全な失策と言ってよかった。この機を逃さず、日本に対して南洋諸島の売却を打診した。完璧だ。日本にとっても、外貨を得られ、防衛する戦域が減る。我が国は、新たな植民地を得る。これ程まで、完璧な交渉は無い。そう、誰もが信じた。だが、誰も悪魔が我々の後ろで嗤っていた事に気が付かなかった。

 日本、いや、日本の外交権は日本共和国に握られており、日本共和国は即答で、「お断り申し上げます」と回答を寄越して来た。

 何故だと大げさに遠回しに喚いた、駐日大使に対して日本共和国の交渉官はこう口にした。

「これは、まだ公表されてはおりませんが、我が日本共和国は日本と安全保障条約を結びます。そして、軍事力のほぼ無い日本の国防を、我が日本共和国が担います。ですので、貴国の危惧する事は全く起こりえません」

 それが、建前上である事は解りきっていた。日本共和国は日本を植民地とした。日本共和国は、植民地を防衛しなければならない。武器も必要だが、相手が日本共和国では売り出す事も憚られる。そもそも、日本共和国は、「それくらい防衛する戦力はある」と宣言しているに等しい。

 残念ながら、歴戦の外交官でもほぼ意図の読めない日本共和国に対しては、ビギナーも良いところだった。南洋諸島に対しての軍備増強は禁止されており、艦隊さえも置かれていないが、警備艇程度は存在していた。その警備艇を日本共和国は、全て自国の軍艦に置き換えたのだった。これは、あからさまな決議違反だと議題が上がったが、肝心な日本共和国が出てくる訳でも、その日本共和国に制裁措置をとれる訳でもなかった。

 その日本共和国の注意が南方や日本本土に向いていた時、ソ連による満州侵攻が始まったのであった。 それは、圧倒的だった。多数の戦車を同時投入し、新型重戦車であるT-32(後のT-35)も惜しげも無く投入。多数の航空機による空襲で、中華民国の国境警備部隊は蹂躙された。北と東からの同時侵攻であったために、戦力に余裕の無い中華民国軍は、次々と敗退。中国共産党と共に決起したパルチザンが、勢力を伸ばしていく。

 イギリスもフランスも日本も、傍観を決め込んだように動かなかった。そのため、中華民国の特使が形振り構わず援軍を要請していた姿は、正に滑稽だった。滑稽だと笑っていたら、日本共和国が要請に応じて軍を派遣したと知ったのは、それが新聞記事になってからであった。

 なんと、日本共和国は特使の要請があったその日の内に部隊を編成して、次の日の朝には師団規模の軍を即時派兵したとその記事に書いてあったのだ。

 まるで、ソ連の侵攻を知っていたと言わんばかりだった。ソ連は情報管制が行きとどいているために、中々情報が得られない。そのため、繋がっているのかさえもわからないが、この状況は最悪だった。

 例えそれが歩兵を中心とした部隊だったとしても、中国人どもは援軍が来たと奮起するだろう。そうなってしまえば、ソ連に蹂躙されてしまった国土奪還を支援すると言う名目での商売ができない。売れる物は武器だけではない。ありとあらゆる「物」が売れるのだ。その機会をうかがう為に、その時を待つ事にしたのだ。

 それを潰された。しかも、イギリスも派兵すると言う情報に、我が目を、耳を疑った。これ以上乗り遅れる訳にはいかなかったため、渋々と武官の派遣を行い、情報収集を徹底させるよりほかになかった。


 通常。航空機で輸送できる量は、機体の大きさによって変わると言う。大きい輸送機ならば、大量の物資を搭載できる。しかし、それを飛ばせる様なエンジンも必要だ。そのため、人員などの軽量で小さな物は飛行機で、それ以外は船や鉄道といった交通手段が必要になる。

 何が言いたいのかだと?文句だ。ああ、文句だ。日本共和国の常識外な事に、文句を言いたいのだ。

 先程、輸送機には人員の様な小型軽量な物しか搭載できないと言ったが、それは我々の常識だった。だが、日本共和国は違った。全長300m、機体幅は20mを裕に超え、巨大な戦車を数十両搭載でき、完全武装の兵員も100人規模で運ぶ事ができる輸送機を持っていやがったのだ。

 それも、1機だけではない。詳細な数は不明だが10機以上は確実だろう。その輸送機に搭載されてきた兵員と車両によって、チチハル周辺域は平定され、戦力の浮いた中華民国は、東部平定に錯綜し、その補給線を護る様にイギリス派遣軍が仕事をしていた。

 普段、素直に仕事をしない奴らが仕事をしている事に、派遣した武官も他国の武官もいぶかしんだが、その原因はすぐに判明した。日本共和国軍が、強すぎたのだ。

 何を言っているか分からない?大丈夫だ、私も分からない。

 10両はいるであろう戦車に対して、カタナを振り回す1人の日本共和国兵が突撃して、戦車が破壊される光景に、誰もが絶句したと言う。しかし、映画やコミックスではよくある話ではないのだろうか。それを聞くと、「あれはフィクションですよ。日本共和国軍はノンフィクションですが…」と武官から返答があった。

 それだけではない。空襲があった際、拳銃で爆撃機を落としたり、落ちていた石を投げつけて戦闘機を撃墜したり、短パン一つで機関銃陣地に突撃したり……。捕虜にしたソ連兵からは、「魔女の婆さんに呪われた奴ら」と恐れられていたと言う。戦車砲で、「撃たれても死なない不死身の兵士」と新聞記事となっていた事を思い出し、頭痛がした。

 兵士がそれなら、戦車もそうだった。幅広の車体に車体幅と同じ幅を持つ巨大な砲塔。その砲塔に据えられていたのは、100mmクラスの重砲だったそうだ。現在の技術では、戦車にその様な大口径砲を搭載できないと言う。それを実現している技術があると言う事は、最低限判明したがそれだけではなかった。

 武官達が頭を抱えた主な原因は、巨大砲塔の上部に搭載された2つの機関砲砲塔だった。この機関砲砲塔、人力操作では無く、完全無人の遠隔操作砲塔だったと言う。エンジンが掛かっていなくとも、作動する。敵味方の識別をどうしているかは不明だが、的確に敵のみを倒していくと言う。そして、この機関砲は対戦車戦闘能力があった。

 対戦車ライフルと言う対戦車装備があるため、驚く事だろうかと思ったが、対戦車ライフルは数百m以内で戦う武器であり、数千m以上離れた目標を撃破できる装備ではないと言う。それをやって見せられたのだ。主砲なら分からなくもないが、T-32重戦車がまるで穴あきチーズの様にされる光景は、トラウマでしか無かったと報告があった。

 そして、残念ながら装甲車もだった。装甲車の砲塔は、重戦車の砲塔を載せ換えただけと言う酷い物だった。イギリス軍が輪装重戦車と口にしていたため、軍ではその呼び方が定着していると言う。

 そこで判明したのは、この砲塔。対空攻撃もできたと言う事実だった。ただの対空攻撃では無く、走行中の射撃だった。だからどうしたと言う私のと言う問いに、武官は走行中の射撃程当らない攻撃は無いと説明した。ガタガタと不規則に揺れる車内から、豆粒のように小さな的を正確に撃てと言うのは不可能。と、断言できる。そう言う常識…なのだがな……、奴らはやってのけたそうだ。

 100mmクラスの砲弾の直撃で、破壊されない航空機は存在しない……だろう。と、最後を言い淀んだ武官は、汗をハンカチで拭う。日本共和国にはいる可能性があると言う事だろう。厄介な。

 これ以上は、報告を聞くだけで嫌気がさしそうであったために、もういいと言うしかなかった。


 日本共和国が撤退した今となっては、新たな情報は殆ど無いが、あのソ連が日本共和国が行った所業を公表したのだ。

 それは、想像を絶する所業だった。日本から遠く離れたウラル山脈。そこから東側のソ連領土が、「空爆」と「艦砲射撃」によって、不毛の地とされてしまったのだと。死者・行方不明者・負傷者の数は不明。ウラジオストクが事実上、陸の孤島と化した事をこの公表は示していた。

 あからさまに、ソ連が負けた様な発表だが、仕組まれていると言っていい。ただし、これ以上の傍観が、悪い結果しか呼びこまないことは明白だった。

 北方の憂いを払いのけた以上、次は南方。そして、次は……。あのような、イカレタ武力を持つのだ。自制がきく訳が無い。

 その憂いは、我が国だけでは無かった。フランスが呼びかけ、我が国、イギリス、オランダ、オーストラリアが日本包囲網…事実上の日本共和国包囲網を形成する事となった。それに対する日本共和国の回答は無く、沈黙するのみであった。その沈黙が不気味であり、しかし、効果がある様にも思えてきた。

 そんな中、イギリスでは新たな王の戴冠式が行われる。その記念観艦式に、日本共和国も招待したと公表された。日本共和国はどの様な艦を持ちだすのか……。気にはなるが、不安も大きかった。


米国「軍備力の減少した国を、強大な軍事力を持った国が防衛するなど、どこの国が考えたんだよ!」


日本共和国「おまいう」


米国「は?」

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