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お前らいい加減にしろっ(A)  作者: 加賀函館
第3章 ちんどん欧州訪問()
20/72

020話

今回は、


ボケ→天野将軍

ツッコミ→小野田幕僚


でお送りします

 腕を引かれて廊下に出ただけではなく、休憩所まで連れてこられた天野将軍は、ここにきてようやく小野田幕僚の腕から逃れる事ができた。

「何をするのですか!」

「何をではないよ。これでいいんだ」

 天野将軍は納得しなかったが、天皇の言いたい事は大体分かるので問題ないと言った。

「随分な自信ですね」

「自信も何も、元部下だから分かるんだよ」

「……え?」

 元部下?誰が?天皇が?

「どう言う事でしょうか…」

「ああ、彼は、三笠宮輝先浩紀尊王(みかさのみやてるすきひろきそんのう)は、練習巡洋艦鹿島の前の艦長をしていたんだ。当時の私は、練習艦隊司令だったから、仕事で度々会っていたんだよ」

 殆ど陸上勤務だった小野田幕僚だが、練習艦隊司令だった14年間は、洋上勤務だったそうだ。そして、着任当時に完成した練習巡洋艦鹿島型を集中運用するためにできた艦隊に配属されたそうだ。

「今は、その艦隊は無いのだけれども、度々メールで連絡は取り合っていたんだよ」

 教育者として、中々興味深い人物だったそうだが、こんなところでこんなこんな事になっているとは予想外だったそうだ。

「そうだったのですか……。しかし、彼らはどうするつもりなのでしょうか?」

「どうするつもりとは?」

「いやだって、大体想像はできるのでしょう?」

「陛下には、ここに来た理由を話してある。国防に関係する事だからな。アレと戦った事もあるから、彼らが何を言おうとも我々を排除しようとする輩を許しはしないだろうね」

「……。分かりました。小野田幕僚のお言葉を信じましょう」

 天野将軍は、自販機に向かうとコーヒーを2つ買い、1つを小野田幕僚に渡したのであった。


 コーヒー缶を飲みながら談笑していると、話が終わったのか、ぞろぞろと人が出てきた。その最後尾に、侍従長がおり、小野田幕僚、天野将軍、山本五十六、東條英機の4名は、再度会議室へ戻るように伝えてきた。

「観艦式の件ですか?」

「我は知らぬ。が、我が主は会議が終わった後で話すつもりでいたので、残っていてくれたことには感謝する」

 話そうとしたが、アレである。仕方が無いので、残っていた訳であった。

「この時期の観艦式……。皇紀2600年の観艦式でしょうか?」

「ジョージ6世の戴冠記念観艦式の方だ。天野将軍、君はミリオタじゃないのかね」

「歴オタじゃ、無いのでそこは……」

「自分で言うのも難だが、アニオタの私が知っているのに、君がすっとボケてどうするんだ……」

 今回はまじめ一辺倒なのか、小野田幕僚が突っ込みに回っている。

「むむむ。しょうが無いじゃないですか、私だって、不調な時はあります」

「君の体は機人ではないか!何が不調だ!」

「うぐ…痛いところを…」

 小野田幕僚が本当に呆れている。侍従長は、時間が惜しいからと早く来るように促した。

「あの、小野田幕僚?」

「む、何だね」

「あの侍従長の話し方、中々時代的と言うか、面白いですね」

「あれは、前鬼。式神だ」

「式神?陰陽師とがが使う?」

「陛下は、日本共和国本土では有名な上級陰陽師でもある。その陛下が、式神を護衛として身の回りに配置していても、何もおかしくないだろう?」

「ほへー。そうだったんですかー」

「君は、皇族に対して勉強不足過ぎやしないか?まさかとは思うが、陛下が日本共和国の準皇太子だと言う事も知らないとは言わないだろうな……」

 天野将軍は、冷汗が背中を伝うのを感じられずに居られなかった。勉強不足なのは否定しないが、使う場面があるとは思っても見なかったのも事実だった。

 しかも、小野田幕僚がすらすらと語っている事に、大きなショックを受けていた。ありえんと。

「陰陽師って、歌って踊る…」

「もう、何も言うな。言うだけ、君の真面目なイメージが崩壊するだけだぞ……」

「ア、ハイ」


 会議室に再度入室した4人は、天皇からジョージ6世の戴冠式とそれに伴う記念観艦式への招待状が届いている事が伝えられた。

「我が国だけでなく、貴国。日本共和国にも、渡してほしいと言われている」

 天皇が侍従長に招待状を渡し、天野将軍がそれを受け取った。天野将軍は中身を確認してみたが、修飾語だらけの英文に顔をしかめる。

「ウチの国からは裕仁の弟で、陸軍から秩父宮、海軍からは高松宮を行かせる。そっちの皇族は、来れないなら、それ相応の人間を出す様に。ただし、和村芳型樋野獲神(なごむらよしかたひのえのかみ)は駄目だ」

「駄目、でありますか」

「王の戴冠に、別宗教の神(八百万の神)を送ってどうする…」

 小野田幕僚は、先手を撃たれたと悔しがったが、皇族に詳しくない上に、宗教にも疎い天野将軍はポツ目で固まっている。

「せめて、軍の関係者で上級者…。幕僚長クラスを出してもらえ。幕僚長なら、陸海技諜の5名がいるだろう?」

「そうなると、総長が適任と言う事では?」

「やめろー!やめてください!総長だけは、総長だけはカンベンしてくれ!マジで頼む!」

 天皇の慌て様に、山本と東條は驚いた。総長という人物は、それほどまでに要注意人物なのかと。

「総長には、報告せねばなりませんから。とは言え、式典にだけの参加となるでしょうね。総長は、国会審議で多忙ですので」

「船旅で、イギリスまで行くのだぞ?」

「転送装置を使えば、問題はありません。となれば、派遣するのは有人艦であり、大型艦と言う事になりますね」

「ああ、それな。私の希望を述べていいか?」

「ええ、どうぞ。しかし、私の中でももう決まっていますので…。変更には応じませんよ?」

「変えろ」

「却下いたします。で、ご希望は?」

 天皇の要求に全く引き下がらない小野田幕僚に、顔をひきつらせ、溜息を吐いて希望の艦を述べた。

「大型艦であり、あちらに迷惑のかかり辛い艦。練習巡洋艦「鹿島」級はどうなのだ?」

「ええ、私も「鹿島」にしようと思っておりましたので」

 小野田幕僚が悪い顔をしている。

「鹿島…?それって、確か…」

「「天野将軍、余計な事はいいんダヨ?」」

「ア、ハイ…」

 先程の休憩室での事を思い出して口にした天野将軍だったが、満面の笑みの天皇と小野田幕僚に止められた。2人ともすっっごく悪い顔をしている。

「鹿島型は、海外演習も視野に入れて内装を考えてあります。急な来賓があっても対応は可能でしょう。特に、こう言った事に関しては適任かと」

「まあ、な。それに、いずれ、出雲級は配備されるのだろう。デモンストレーションにも丁度良いではないか」

 鹿島級練習巡洋艦は、出雲級巡察航洋戦闘艦の一部を設計変更した艦なのだと言う。出雲級は、日本共和国の艦種別では巡洋艦だが、41cm砲と言う。現在のこの世界の主力砲級を搭載している。その砲の扱いや、出雲級の様な大型艦でしか装備できない装備の扱いを学ばせるのに、新たに艦を設計し直すよりかは、既存の艦を改造した方が手間がかからなかったのだ。

 その鹿島級を観艦式へ参加させる意義はとても大きい。特に、これはイギリスだけでなく、フランスやアメリカと言ったFABDA包囲網参加国に対する砲艦外交の一環でもあるのだと。

「なら、こちらも最精鋭艦を参加させねばな…。山本海幕部長、帰ったら検討してくれ。東條陸幕部長、こちらの参加艦に乗り合わせる人員の調整を。そして、1週間以内にあちらに返答せねばならん。頼んだぞ」

 東條と山本は、深々と頭を下げて了承した事を伝えた。小野田幕僚と天野将軍も敬礼をして部屋を去って行ったのだった。

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