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お前らいい加減にしろっ(A)  作者: 加賀函館
第1章 何が起こるんです?
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002話

世界の反応と君主の戯言

 日本を占領した謎の国家は、自らを「日本共和国」と名乗った。日本を衛星国として扱うことを国連で宣言し、中国東北部の利権を一気に手放し、自らは併合した朝鮮まで軍を引いて沈黙。

 海軍の軍縮に関しては、大半の艦艇を売却またはスクラップにし、その数は一時の1/3程度まで減らしていた。スクラップとして出た、資材は国内整備のために使われ、急激に経済を持ち直すなど、世界恐慌の影響を抜け出していなかった列強各国から良くも悪くも注目を集める事となった。


 特に、太平洋を挟んで日本の反対側にある国の政治家(ビジネスマン)達にとっては、予想外に過ぎた事だった。アジアの利権の関係上、絶対に衝突が起こるであろう事は予想できた。しかし、日本共和国が日本を攻撃したため、国力の低下は避けられないと。武器輸出などで、恩を売ることも可能だと。誰もがビジネスチャンスに湧き立ったが、その日の内に天皇勅令によって、「占領を受け入れるため戦闘は許可しない」と公布されたため、ほぼ無血降伏してしまったのだ。誰がこの様な結末を予想できただろうか。いや、誰もできない事は、分かりきっている。

 今の日本を支配する天皇は、元は明治天皇の摂政をしていた。つまり、明治天皇クラスのカリスマ性を持っていても不思議ではないのだ。それなのに、誰もがその存在を忘れていたかのようだ。いや、世界恐慌の前に、流石にアレでも対処は不能かと、誰もが目を離したせいでもあった。実際に、不可能だったが、機を読む事には長けていたが故に、日本共和国の策に乗ったか利用したのであろう。それは、容易に想像できた。


 実際はそうではないのだが。そんな事は、当時の誰も知る必要は無かった。


 日本の大陸を挟んで反対側にある島国でも、今回の異常なまでの日本の急成長を厳しい目で見る老人達が居た。日本の外交能力の低さに、意気揚々と文句を連ねていた老人達も、あれだけ固執していた大陸進出を一気に諦めさせた日本共和国と言う国に対して、注目を集めていた。その代わりに、国政の混乱が思った以上に長引いたのを不思議に思ってもいた。

 日本の国政を監督するために、ゼネラル・アマノを残し、アドミラル・オノダは国防に傾注していると言う情報が漏れ伝わってはいる。しかし、アドミラル・オノダは相当問題の多い人物の様で、奇行と問題発言を繰り返し、日本軍とは仲が宜しくない様でもあった。ただ、それはゼネラル・アマノにも言えることで、政治家達の頭痛のタネとなっているそうだ。

 それでも、成長が止まらないため、別の要因もあるのだろう。しかし、この国の諜報能力を持ってしても、日本共和国については確証に足り得る情報が上がってこない。ただ、日本の政治家や軍人は、「日本共和国は、我が国とは全く関係の無い別の国」と漏らしている。何が彼らをそう思わせるのか、興味は全く尽きない。


 なお、「萌え」はその後80年の時を経ても、一向に理解されないのだが……。


 日本の西。海を隔てたところにある国も、動向を逐一気にせざるを得なかった。明治の頃から度々侵略を受けてきただけに、今回の撤兵と利権の返還に対して、何らかの罠であると誰もが思っていた。しかし、報復を行おうとすれば、確実に日本共和国とも戦う事となるだろう。そうなると、国境線に配備が始まった新型戦車や新型航空機とも戦火を交える事となるだろう。

 特に戦車は、ソ連が配備を進めていると言われる重戦車よりも大きい。航空機は複葉機が主力の我が天軍に対して、単葉高速機が配備されている様だ。報告書では、欧州の戦闘機の様な液冷エンジンで流線形の機体を持つ戦闘機と、空冷星型ながら多数の兵装を搭載可能な攻撃機だとある。特に、攻撃機は艦上機仕様でもある様で、海軍の搭乗員も養成しているという分析が得られた。これを他国に流し、協力を取り付け、再度の侵攻に備えるしかない。


 まだ、日本共和国と言う国の恐ろしさが分かっていなかったが故の、無意味な警戒。しかし、この警戒は全くの別件で報われる。


 中国の北に位置し、東西に大きな領土を持つこの国も、日本の動向を探っていた。しかし、急激なアカ狩りのせいもあって、情報は以前よりも更に少なくなってしまっていた。

 しかし、他国の諜報結果などから推察はできた。日本は、いや、日本共和国は大陸方面には全くと言っていいほど興味を持っていない様に思えた。唯一、朝鮮半島と、それに随伴する陸地は未だに統治しているが、それを手放すそぶりさえ見せている。

 ならば、我が国が中国を蹂躙しようとも、文句も言わないだろう。彼は、そう言うと数年をかけて侵攻を準備するように命じたのであった。中国の目が、日本に傾注している隙を付けば、赤化も容易であると。


 しかし、世界は日本共和国が、日本をこの世界の衛星国の基準で扱っていると思っていた。しかし、日本はまさかのほぼ対等な立場の衛星国として扱われていたのであった。それを世界が知る切っ掛けは、大変残念ながらソヴィエトが周知させてしまう事になる。


 各国の思惑が書かれた報告書を渡されたその男は、新たなゲームに心を躍らせていた。

 少しばかり余計な事を仕出かそうとしたヤツがいたが、政治力を持ってしてねじ伏せておいた。ただ、頭を抱えて地面をのたうちまわっていたのは、見てて呆れる他無かった。彼女も呆れて物を言わなかったが、それ以上に僕の事を警戒していた。したが、その時は何もせずに引きさがって行った。


 こんな事になるなら、警戒させなければよかったよ…。


 僕は、機能不全を起こした国会及び内閣の代わりをさせられる事に…。直接指示は出さないが、従士に指示を出すのさえも一苦労である。僕は天皇なのだ。「君臨すれど、統治せず」をモットーにしたいのだが、利用しようとして失敗した結果がこれだよ……。

 もう、我儘を言わないから、興陽(こうよう)姉上。たしゅけて……。


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