011話
軍組織は巨大だが、戦車の装備数が減った日本共和国の苦しいお話し
日本の国防組織の減少…と言う名の改編…により、特に大陸方面の防備は、大きく減っていると言ってよかった。ただし、それは人員に関してだった。
当時、機甲兵器や航空兵器は発展の途上にあり、特に日本の物は重要視されていない節があった。……のだが、日本共和国の軍備が入るとその状況は一変する事となった。
多砲塔戦車。この時代の最先端を行く戦車を日本共和国は、朝鮮半島に配備していた。しかも、かなり大きい。大型の砲塔の上部に機関銃砲塔が2つと、迫撃砲砲塔が1つと言う重武装。大型砲塔に納められている砲も、100mm前後の大口径砲であり、正に移動トーチカと言ったモノだ。
中華民国の諜報員が持ち帰った情報は、中華民国の外交カードとして使われ、この新型重戦車の情報は世界の陸軍関係者を驚愕の元に蹂躙する事となった。
また、未確認ながら、戦艦クラスの超大口径砲を搭載した自走砲も存在すると言う情報もあったが、さすがにそれは無いと誰もが首を横に振った。
誰もが首を横に振ったが、全員がそう言う訳では無かった。特に大きいモノ好きのソ連では、この重戦車と自走砲に対抗できる様な新型戦車の開発が、いち早くスタートする事になる。
ただし、その情報が日本共和国に漏れている事を誰も知らなかった。いや、知る訳が無い。あんなものから漏れるなんて、誰も予想しないのだから……。
日本共和国が、大陸への軍備増強をしたのは1932年の春の事だった。数少ない鉄道輸送艦「朱音丸型」を投入して、列車砲と装甲列車を搬入。特に、列車砲は10門と信じられない量を投入し、中華民国だけでなく、ソ連をも震えさせる事となった。
だが、中朝国境線では無く、朝鮮・対馬海峡方面への増強であり、沿岸防御のためであった。その中に、列車砲以外の車両が混じっている事に、誰も気付かなかったのは、ある種の偶然であったかもしれない。
「軍備増強に端を発したソ連の動き…、貴女はどう思いますかな?」
「どこのクソ司令ですか……?まぁ、日本が手放した満州への侵攻と考えるのが、当然でしょうね。まさか、朝鮮北部への侵攻なんて、馬鹿すぎる事は無いでしょう。彼らだって、海軍力の差ぐらい分かっていますよ」
カッコ付けた小野田幕僚だったが、案の定呆れられ、さっさと無視されてしまった。
「こっちだって、機甲部隊の不足はいかんともしがたいでは無いじゃないですか」
「ハニは増強可能です。今の時代の車両なら、ハニでも十分に対処可能です」
「ハニが対処できない戦車が登場するのは、どれくらい後になるんですかねぇ~?」
痛いところを突くな。と言いたげに、天野将軍は答えを返した。
「……。第4.5世代主力戦車で無ければ対処は不可能ですよ。特に、自動砲砲塔が……ね」
「大体、150年なら問題なさそうですね。台湾の工場でも、造らせるんでしょ?」
「ええ、国内だけではその数を賄えないでしょうし」
ハニ。正式名称、主力補助戦車99式軽戦車渡禽。21トンと言う軽量車体に105mm戦車砲を搭載した軽戦車だ。本来なら、主力補助戦車100式中戦車百虎が配置される予定であったが、現在の形式がこの時代では、製造不能なほどの超技術を用いていたため、ハニが配備される事となっていた。ただ、当然と言うべきか、日本共和国は更に強力な機甲部隊の配備を行いたかったが、肝心の戦車が無かったのであった。
「まさか、11式を配備しようなどと言う暴挙に出ようとは……」
「当然ながら、1両でもダメの一言でしたね」
「アレは戦術兵器では無く、もはや戦略兵器ですよ。主砲の射程及び貫通力が不明って…」
「不明なのは、出力40%以上からですよ」
「いい訳になって無いじゃないですか!?」
「ダメ…ですかね…?」
「目を潤ませたって、ダメな物はダメです!そんな事を言うなら、丁型の配備要請を出しますよ!」
天野将軍と秘書官は、慌ててやめるように説得を始めた。最初から冗談とはいえ、いくらなんでも無い。
「冗談でも、言っていい事といけない事があると思います。特に、丁型については駄目です」
「あんなもの配備したら、世界大戦どころじゃ無くなるだるぉぉぉおおお!?世界中を植民地にしてしまったら、大目玉確実じゃないですか。ヤダー!」
改黄泉平坂級丁型。いや、忘れよう。これは、アカン奴だ。そう言うと、小野田幕僚は書類を天野将軍へ渡した。
「第十艦隊の訓練が始まった様だ。このまま何事も無ければ、良いとは思ったのだが、そうもいかないか」
「ええ、我が隷下の第二中即には臨戦態勢令を出しています」
「今からですか!?」
「今からです。そして、戦闘車両をお貸し願いたいのです」
「ハニを増強できるんじゃ…」
「これからの提出では、当然間に合いません。そちらが、港で停泊させている特内火艇カノをお貸し願いたいのです」
「カ、カノを!?いや、ちょっと、それは……」
特(型)内火艇。日本共和国の水陸両用戦車で、艇体と一体化した車体を持った砲艇だ。20.3cm砲搭載の「カノ」と、46cm噴進臼砲を搭載した「カヨ」が主にある。天野将軍は、カノを貸してほしいと直談判しに来たのであった。
「漁業支援の一環で、特内火艇の殆どは出港予定が入っている。今、取り消せば勘付かれるが?」
「……」
漁業支援案を持ってきたのが、幕僚総長だったためこの2人は全く断れなかった。秘書官でさえ、鉄仮面を崩壊させてセクハラしまくったため、完全に断れなくなってしまった。幕僚総長…マジ魔性の男の娘。
「カミ815であれば、本国から1週間以内に配備可能だが?」
「本土決戦じゃないので、アレはいりません。インフラごと破壊するおつもりですか?」
「ふむぅ……。と、なると。ウチで出せる機甲戦力は、アレしか思いつかないな」
「あるのですか?」
「あるも何も、カヨなら可能だよ」
「いや、ですから、威力があり過ぎるんですが」
いまいち話が通じていないと思った天野将軍は、呆れていた。ただし、小野田幕僚も十分に呆れていた。
「天野将軍」
「はい?」
「カノとカヨの違いを知っているかね?」
「搭載砲が、20.3cm砲か46cm砲か…ですね。そうか、載せ換えればいいのか……」
どこから取り出したのか、ピコンと鳴り赤い丸が点滅する玩具を鳴らす小野田幕僚。実際、カノとカヨの違いはその程度であり、艇体は同じモノを使っている。
そして、カノの砲塔は主力補助戦車60式重戦車桜虎にも搭載されている。行進間射撃はできないが、停車射撃は十分に可能である。また、20.3cm砲は陸上では重砲に分類される砲であり、ベトンで固められた要塞でさえただでは済まない威力になる。
46cm砲は言わなくても分かる通り、戦艦を沈められる威力になってしまう。陸上で使えば、障害物ごと半径500mにある物を木端微塵に吹き飛ばし、破片を周囲2kmにばら撒き、敵味方関係なく屠る凶悪兵器である。カノでさえ、至近弾で横転とバク転を数度繰り返す事になる。中の人なんて生きていない。
「でも、モコも無いのですが…」
「ぁあ…、では、自走高角砲で」
「ア、ハイ」
ビンボーではないが、やはりナイナイは変わらない日本共和国であった。
主力補助戦車→主力(戦闘機人)を支援するための戦車。
主力駆逐戦車→主力(戦闘機人)を遠距離から撃破する車両。戦車とは限らない。
特内火艇→内火艇と区別するために特内火艇と呼ばれる。
カミ815→日本共和国最大の特内火艇。超巨大特内火艇と言われるが、艇…?神飼と終戦の2種類がある。




