54 悪い予感
宿直中は城の巡回を行ったり昼間の警備から上がった報告書に目を通し決済を行ったりしている。
夜が明け交代勤務の者が出勤すると引き継ぎを行い、夜間に纏めた書類を提出先へ持って行きながら帰宅する手筈で歩いていた時だった。
リカルドはアーバンヒル邸の結界からユリアーヌとセレイナが出て行ったことを感じとった。
結界に綻びなどはなく、もちろん外部から攻撃されてもいない。
そうなるとセレイナがユリアーヌを連れて出て行ったということになるのだが、母からは自分のところに何も連絡が無いことに少々苛立った。
しかしリカルドのルーニーを帯びているユリアーヌの現在地を探しだすのは簡単なことだった。
アシャンテ孤児院か…あちらで何か問題が起こり、セレイナが行かざるをえなかったのでユリアーヌを伴ったのだろうということはリカルドにも容易に想像できた。
「リカルド?大丈夫か?」
窓の外に広がる青空を睨むように見つめ廊下に一人佇むリカルドに、通りがかったジョゼフが声をかけた。
「ああ、ちょっと離れた場所のルーニーを確認していた。」
「ユリアちゃんか?心配性だな。彼女がお前の家から出ることはないだろう?」
「俺が留守の間は母が付いているのだが、それが先ほど彼女を伴って家を出たようだ。」
驚いた顔を向けるジョゼフに行先は母の経営する孤児院であると説明した。
リカルドの家の大まかな事情を知るジョゼフは、一緒に居るのが彼の母親であれば大事ないだろうと思った。
「君の母上が一緒なら心配ないだろう?そのうち伝令が送られてくるさ。さてと俺はこれから魔石に余剰魔力の注入に行くんだが一緒にどうだ?あそこを利用している者たちが君を長い間見かけないと言っていたけれど大丈夫なのかい?」
利用する者同士は事故を未然に防ぐため互いに気にしあっている。
ユリアーヌが青い石を身に付けていたときには、青い石がリカルドの余剰魔力を自然に取り入れることで少しずつ余剰分を放出していたことになっていたということを知るジョゼフは、今は同じ家に住んでいる2人の状況を含ませて尋ねた。
リカルドは実は…と照れながらユリアーヌへの魔力の受け渡しを告白した。
量こそ多くは無いが、毎日ユリアーヌにルーニーを渡している。
それに彼女も渡したルーニーを扱うことができたということも伝えた。
恐らくリカルドの日々溜まりゆく余剰部分のルーニー量を渡しているので、一旦大量放出した豊穣祭のセレモニー以降は魔力過多の症状が出ていないのだと考えられた。
「それって凄いことで興味深いことだよね。でもルーニーを全く持たないユリアちゃんだから出来るのかな?これはルーニーの研究分野の人たちが喜びそうなネタだね。わぁ…黙っていた方がいいかも。」
おおきな魔力の代償として、触れる者への不快感と魔力過多の症状には気を付けなければならない。
国の職務に関わる者は定期的な放出や魔石への注入の場が用意されているが、そうでない者は不快感を与えるということで避けられたリ、事故を起こすことも少なくない。
この世界にルーニーを生まれながらして全く持たない人はいないが、稀に事故や病気などで後天的に失ってしまった者はいる。
持っていたものを急に失った彼らの失意もまた大きい。
余剰魔力がそういった人々を救えたら素晴らしいことだろう。
しかし珍しい事例を研究し後世に役立てることが発展に繋がるのだろうが、彼女を狙う謎の集団がいる今はそんなことに構ってはいられない。
先ほどリカルドが見ていた青空を映す窓から金色の光が飛び込んで来て、立ち話をしていたリカルドとジョゼフの周りをクルリと回るとリカルドの胸の前で光の球体となった。
短め&あまり進んでない感じで スミマセン。




