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51 箍

本日は、少し甘めでお送りします(笑)


そんな日々を送るある日、午後のお茶の時間が過ぎたころにリカルドが帰宅した。

玄関でリカルドを出迎えたユリアーヌは、遠慮する彼から脱いだコートを受け取った。

セレイナはいつものように帰宅したリカルドを確認すると、急ぎ転移魔法で孤児院へと戻って行ってしまった。

帰宅したリカルドはユリアーヌの額に「ただいま。」と言いながらキスをする。

その後は自室に向かい騎士服から普段着に着替えた後に、執事から渡された郵便物や書類に目を通している。

ユリアーヌはほぼいつも通りの時間に仕上がった衣類を下働きの女中から受け取り、リカルドのクローゼットルームへ仕舞うために彼の部屋へ向かい扉をノックした。


「どうぞ。」の低い声にそっと扉を開いて中に入る。


「ユリアか。そのようなことを君がしなくてもいいのに。でも…ありがとう。」


ユリアーヌは「何かを任されている方が居心地いいのです。」と笑顔で言うと、奥のクローゼットルームに入って行った。

衣類をそれぞれの棚に収めると、先ほど預かったコートもほこり取りのブラシをかけてから吊るした。

コートの胸ポケットにリカルドが愛用している万年筆が入っていることに気付き、それを取り出してから彼の寝室を出る。


「リカルド様、胸ポケットに入っていた万年筆は机の上でよろしいですか?」


机に置こうとしていたところ名を呼ばれ、彼が腰掛けているソファーに手招きされた。

万年筆を手渡そうと近づき彼に差し出すとその手が引かれ、彼の胸の中に飛び込むような形になってしまった。


「今日、婚約申請書を提出してきた。」


リカルドは自身の膝に乗せたユリアーヌの耳元でそう言うと、彼女の黒い瞳を見つめそして柔らかな唇に口づけた。


日ごろの彼の口付けは額や頬などが多く、唇にはあまりしようとはしない。

唇にしたとしても触れるだけのごく短く軽いものだ。

ユリアーヌにはよくわからないが、リカルド曰く「押さえが利かなくなってしまう」からだと言う。

しかし今日はいつもより唇が強く長く押し付けられ、角度を変えては何度も繰り返される。

鼻だけの呼吸では苦しくなったユリアーヌはリカルドが少し離れたときに、酸素を求めるように唇の合わせを緩めた。


リカルドは彼女の唇が緩んだその隙を逃さず、口づけを更に深いものにした。

深い口づけを続けながら彼女の体を持ち上げ返して、ユリアーヌをソファーに押し倒し横たえた。

深く長い口付けにユリアーヌは頭がぼんやりしてきたが、胸の鼓動は早くなるばかり。

瞳が潤み頬を染めるユリアーヌを見てリカルドは、彼女との深い口づけにますます夢中になっていった。


ユリアーヌは遠くの方で扉がノックされたような気がした。

気のせいではなく控えめなノックがあり、その数十秒後に再び先ほどより強めのノックがされて、それに気付き正気に戻ったユリアーヌが覆いかぶさるリカルドの胸板を強く押した。

リカルドはしぶしぶユリアーヌから離れると、上気した顔の彼女を抱き起こしながら自身の胸に包み込んだ。

そして不機嫌な声で「何だ?」とノックへの返事をした。

少しだけ扉を開けたマーサは真っ赤になってリカルドの胸の中に納まるユリアーヌに気付いたらしく、リカルドに強い視線を送りながら言った。


「失礼します。お食事の準備が整いました。」


何となくきまりが悪いリカルドが「ああ、分かった。」と答えれば


「坊ちゃま、十分承知されていられますでしょうが、ユリアーヌ様はまだお預かりしている大切なお嬢様ですからね。節度を守ってくださいまし。」


マーサの表情は笑顔ではあるものの、声は低く厳しい口調で言った後にドアを閉めた。

リカルドは大きなため息をひとつ吐くと片手で頭をガシガシと掻き立ちあがり、ユリアーヌの手を取って立たせると食事へと向かった。

本日までお付き合いいただき、ありがとうございました。

亀更新ではございますが、来年もよろしくお願いします。

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