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46 物語は真か

この度もお読みくださり、ありがとうございます。

ルーカス殿下が『噂』とも『物語』ともとれる話を読み終えた。

社交界での陰湿な話は何処にでも数多くあり、珍しいものではない。


「物語じみた話ではあるが、この話に近しい話や語り伝えが周辺諸国に多々あって驚いている。」


殿下の指示で各地に散った諜報部員が似通った話をいくつも持ち帰って来た。

こうなると同じ話が伝承のように広まっているとしか考えられなかった。


ルーカスは先日リングランに帰国したナサニエル・イスバスへも調査の依頼をしていた。

ネイサンの調査では御年50歳のリングラン現国王がお生まれになったころから成人されご結婚されるまで、リングラン国の社交界は正に件の物語のような殺伐とした状況であったらしい。

ネイサンはよもや自国の話だったかと、当時の社交界を知っているだろう人物を当たって行った。

すると国王と同年代の大臣が昔、顔のただれた貴族令嬢がいたことを覚えていたとネイサンから連絡があった。

ネイサンはその大臣の記憶を頼りにその家を特定し、調べをつけた。


『アラバスタ―伯爵家』


今でも上位貴族であるが現在その実は名ばかりで、爵位をなんとか保つのが精いっぱいの状態だとか。

家が傾き始めたのは現当主ミカルゲ・アラバスターが成人する少し前。

彼の母マルグリッドが亡くなってから徐々に衰退していったとのこと。

亡くなった母マルグリッドはフォルスタ国から嫁いできており、金まわりの良い貴族の出身であったらしくアラバスター家にはマルグリッドの実家から多くの資金援助がされていたという。

しかしマルグリッドが亡くなった頃に時を同じくして、彼女の実家でも代替わりが起こったためにそれをきっかけに援助が途絶えたようだ。

当時の領主だった父ジェンダーは困窮する生活の中で、顔がただれ婚期を逃した娘…サラディナーサを成金中年男爵の後妻へと金銭援助を条件に身売りのような形で嫁がせたということだった。

この辺りは『例の物語』と逆になる点であったが、この貴族を恐れてのことか…或いはこの家に関わりがある者が醜聞を取り払うために変えたのでは…と推測できる。


「ネイサンがそこまで調べ上げてくれたから、私はジョゼフに我が国の調査をさせていた。さあジョー報告を。」


「はい。アラバスター家が特定できたためにアラバスターを援助していた我が国にあるマルグリッドの実家と娘のサラディナーサを嫁がせた家も特定することができました。」


ジョゼフは続けた。


「娘…サラディナーサを後妻にもらったのはフォルスタ国西の都市アズルにある領地に暮らし、男爵位を持つ『ダルシオ・ハスラー』。」


この部屋にいてその名を聞いた者は皆、覚えのある人物にハッとする。


「ええ、お察しの通りあの健康茶と陶器製の女神像の輸入事業をやっている男でした。

そしてリングラン国のアラバスタ―伯爵家へとマルグリッドを嫁がせ援助までしていた家は『プレンダー子爵家』です。」



2日前ジョゼフは2人の部下を伴い王都から少し離れた領地を持つ、プレンダー子爵家へと足を運んだ。

現当主はアラバスタ―家に嫁いだマルグリッドの兄の子孫で、既に2代の代替わりしているためアラバスタ―伯爵家ともハスラー男爵家とも繋がりは無かった。

そうなると聞き込みでは情報収集は望めないので、代わりに家系図を見せてもらうことにした。

するとマルグリッドには兄の他に弟がいることが分かった。

兄の方は現当主の子どもたちに至るまでの名前の記述がされているが、弟には以降の系図が繋がっておらず、「ラッカム」という名前には生年月日は記載されているが没年月日はなく名の上からバツ印がしてあった。


「ラッカムという名がバツ印で消されていますが、これは死亡したことを表しますか?」


ジョゼフが聞くと現プレンダー当主のサイモンが家系図とは別に保管している、この家で日記のように綴られている帳面で確認をしてくれた。


「ええっと…、その者は神籍に身を置いた為に系図から外されたようです。ルーニーが強かったようで、10歳でマルクス教会へ入信しております。その10年後には本人が俗世との離縁の意志を示したので、彼に関する物や記録は全て破棄されたようです。本来ならば出自が分からないように全ての物から消さなければならないのでしょうが、少ないながらも彼に関することが残されていたのはおそらく曹祖母が祖父よりも長生きしていたので、ラッカムを想う彼女の親心に対する家族の配慮だったと思われます。」


ジョゼフはプレンダーの当主に協力のお礼を述べて屋敷を後にした。


「おそらく『ラッカム』というのが曲解を唱え、マルクス教会から分裂し神聖派を立ち上げた張本人で間違いは無いだろう…と思われます。」


ジョゼフは確信を持ってそう言った。


ユリア&リカルドのラブめのお話が無くてスミマセン。

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