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この度もお読みくださり、ありがとうございます。

豊穣祭が行われる数日前にリカルドへ本を届けに行くことになった。

リカルドに限らず本を頼まれ、届けに行っても当人が席にいないことが多い。

その場合は本に不在中に届けに来た旨を伝えるカードを挟んで置いていく。

しかし、その日彼は執務室に居た。

勤務中にどこかで顔を合わせても人目が気になり親しく話ができないことが続いていたのだが、この日は久しぶりに話をすることができた。


「豊穣祭の休暇は何処で過ごす?」


リカルドが休暇の予定を聞いてきた。

ユリアーヌは王都居るということとキャロルも一緒だという安心感、それにリカルド自身が忙しいだろうから…と、リカルドに休暇の予定などを伝えていなかった。


「今年は王都で過ごします。1日目はキャロルと豊穣祭の街に出てみようかと思っていまして、2日目は母とフィルダナ家に行く予定にしています。」


それを聞いてリカルドは眉間にしわを寄せた。


「街に出るのか。なぜ知らせなかった?」


「えっ?」


いつもより少し低い声に感じたリカルドの声が少し怒っているように感じ、ユリアーヌは戸惑ってしまう。


「どこにいるか把握できていると、守るのにも素早く反応出来るから大まかな予定は知らせて欲しかった。」


次に発した声音はいつも通りに戻っていて決して責めるようなものではなかったが、ユリアーヌの返事は「はい…。」と小さなものになってしまった。

ユリアーヌはおずおずとキャロルと2人きりではなくヨハンも護衛を兼ねて付いて歩くと伝えたのだが、それでもリカルドは難色を示していた。

しかし仕事の途中でいつまでもここにいることもできないのでユリアーヌは執務室を後にした。



この日の閉館間際の図書館に突然リカルドが来て、カウンターで閉館準備をしていたユリアーヌとキャロルの前に立って言った。


「豊穣祭には私が同行する。」


「「えっ!」」


二人同時に驚いた声を上げてしまった。


「あ…あの、その日の騎士様方はお忙しいのでは?」


慌ててユリアーヌが問う。


「君は仕事の中でも優先される特別警護の対象者だから心配いらない。」


同行が嬉しく思えたユリアーヌだったが、続く『優先される特別警護』という言葉が心にチクリと刺さった。

ユリアーヌは『警護の対象者』であっても一緒に居られることが嬉しくもあり、反面それだから彼は私と一緒にいてくれているのかも…という寂しい気持ちも生まれた。

リカルドが図書館を出て行った後にキャロルが「やったわね!」とウインクして言ったが、ユリアーヌは心中複雑だった。

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