表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/62

24

この度もお読みくださり、ありがとうございます。

屋敷の主であるアーノルドは領地に住む兄の呼び出しで早朝、実家に向けて出て行ったらしい。

兄が領地で数年前から栽培し始めた新しい交配種の葡萄が安定してとれるようになり、いよいよワインを作る段階になったようで最近のアーノルドは休日の大半をそちらに使っている。


休みだが特に予定の無いユリアーヌは籠とハサミを持って、庭の一角で育てているハーブを収穫していた。

どのハーブを何に使って…などと考えながら、パチンパチンと切っていく。

籠からは切りたてのハーブの甘く爽やかな香りがした。


「お天気も良いですし、こちらでお茶にしてはいかがですか?」


アリスが近くのガゼボで茶はどうかと提案してくれたのでそうすることにした。

手を洗う水の用意をしてくれたのでそれで手を洗うと、左手首にムズムズを感じ「虫に刺されてしまった?」と目をやる。


すると昨日施した術の跡が黒色から金色へと変っていて、その異変に戸惑い慌てて右手でそこに触れるとポッと小さな光の玉が現れた。

ユリアーヌは「きゃっ!」と驚いたが、それが何なのか察して慌てて反対の手で首に巻いていたスカーフを取ってガゼボの机の上に広げた。


広げたスカーフの上に手首に乗っている光の玉をそっと移す。

身につけているペンダントの青い石を介してルーニーを指先に集中させ、そしてスカーフの上で光る玉にチョンと触れた。

パッと形を崩した玉はそのままスカーフの上で文字を形成した。


『一度お会いして確認したいことがあります。

 サナ植物庭園の温室に来ることができますか?

 温室コンジェルジュに「プロテアが見たい」と言ってください。

 本日の午後、お会いできればと思っています。

 是非だけ術痕を通して知らせてください。 リカルド・アーバンヒル 』


1分ほど文字を形成していた光がだんだんと消えていく。

その様子を目で追っていたが返事をしなければと思い、その仕方が分からないユリアーヌは母の元へと向かう。


「アリス、お茶の用意はガゼボではなくお母さまのところにして。」


ティーセットを乗せたワゴンを押して来たアリスにそう伝え、ユリアーヌは慌てて屋敷に入った。

母マリアンヌの部屋の扉をノックすれば、返事があってからエリーが扉を開けてくれた。


「お母さま、相談があるの。少しいいかしら?」


「いいわよ、どうぞ。」


マリアンヌは誰かに手紙をしたためている最中であったようだが、手を止めてにこやかに返事をした。

ユリアーヌは先ほど現れたルーナの変わった光の伝令の説明をした。


「その返事をしたいのだけれど、お母さまは方法をご存じ?」


マリアンヌも普通程度のルーニーを持ち合わせているが、伝令のようにルーニーを大きくルーナに変化させるなどのことができるほどではない。

それでも刺繍針にルーニーを流し込み、ルーナに変換しつつ刺繍をする『祈願縫い』ができるので思念を送るという意味では共通する部分がありそうだ。


「恐らく術痕に触れながらルーニーをそこに集中させてユリアの思念を送り込めばいいと思うの。こういうことはアーノルドが一番詳しいのだけれど、ちょっと聞けないし…ね。」


二人で顔を見合わせて微笑む。


ユリアーヌは術痕に触れながら「やってみるわ。」と言って、ペンダントを介してルーニーをコントロールする。

先ほど金色から黒へと戻った術痕が再び金色に光る。


「今じゃないかしら?」と言うマリアンヌの指示で『ショウチシマシタ』と思念を流し込む。

すると術痕が瞬いて黒色に戻った。


「今ので…よかったのかしら?」


「きっと大丈夫よ!」


ユリアーヌはホッと胸をなでおろした。

どこか子どものように喜ぶマリアンヌは顔の血色もいつもより良いようだ。


「さあ、ユリアが出かける支度をしなくちゃ!」


マリアンヌはまるで自分が出掛けるかのように、人一倍張り切って侍女のエリーとアリスにあれこれと指示を出し始めた。

ブクマ&評価をして頂き、とても嬉しいです。

一言コメントもありがとうございます♡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ