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16 紋章

この度もお読みくださり、ありがとうございます。^0^

1週間の張り込みが終わりジョゼフと共に報告書をまとめ、謁見には時間がかかるものなので手続きを取り王太子殿下から声がかかるのを待つ。

その間二人は騎士団に戻ると日常の生活に戻し訓練等をこなす。

続いて昼食後に時間が取れるように事務仕事を片付ける。

ジョゼフと約束して昼食を取った後、一緒に騎士団の保管庫に向かった。


「ここに紋章についての古い綴りがあるなんてビックリしたよ。」


リカルドと速足で歩くジョゼフが言う。

リカルドは以前担当した事件が終結し保管に訪れた時に保管庫の端に簡易資料室を見かけ、そこに貴族に関する本があったことを思い出したのだ。


「王政だった頃の名残だな。意外と貴族に関係する資料もあったことを記憶している。」


保管庫の奥の棚の陰になった場所にそれほど大きくない書架と一人用の机があった。

書架の中から貴族の紋章一覧を見つけ、手に取る。


「これ?…じゃないか?」

「ん~。いや、違うな。」


一族で似通った紋章を使ったり、結婚や統合で両家の紋が融合されたり新しく作られたりもする。

資料もだいぶ古いものであり、判別出来るのはリカルドの記憶だけだった。


「これ?…ああ、この鷲だ!」


リカルドは断言した。


「鷲って昔は王族に連なる家に使われていたのだね。これは…2代前の王の弟、ローランド・イル・フォルスタ殿下が公爵位を賜った時の紋か?」


「恐らくそうだろう。ローランド公爵の血を引く一族は?…家系図あるか?」


リカルドのその言葉でジョゼフが書架から王家とその縁の家系図を取り出して開き、ゆっくり間違わないように線をたどっていく。


「ローランド殿下は隣国リングランのクリスティン王女と結婚している。子どもは一人。娘のアリアだけだ。そのアリアと結婚したのが…」


リカルドの指も線をたどる。


「エスタナス・フィルダナ侯爵だ!」


「現大臣のシルベス・フィルダナ殿の祖父か。」


「フィルダナ家には?…シルベス殿には息子はいたか?」


「シルベス殿には弟もいたはずだ。その方の子の可能性もある。」


ジョゼフは複雑な顔をしながら言う。


「あの青年について明日、王立学校に行って調べてくる。事務所に従兄弟がいるから名簿を見せてもらってくる。」


ジョゼフとリカルドは今日得た情報をメモし、二人連なって保管庫を後にした。



翌日昼過ぎ、ジョゼフが王立学校で調べたことの報告があるらしくリカルドの机上に光の球体があった。

その球体に手のひらをかざすと球体は弾けて文字を形成する。


『例の件で報告がある。本日夕方、僕の執務室に来てくれ。』


リカルドはその日の就業時間が終わった時刻にジョゼフの執務室を訪れた。


「ジョー、ひとりで行ってもらって悪かった。それでどうだった?」


リカルドの質問にジョゼフは良い香りのコーヒーを2人分淹れながら言った。


「王立学校の高等科1年にエリック・フィルダナという青年がいる。シルベス殿のご子息だった。母はステファニー、そして妹がいる。ユリアーヌ殿が妹かとも思ったが、妹は4歳年下でロゼリアという名だった。彼自身はシルベス殿と同じ薄い茶色の髪に新緑の瞳、現在の魔力は上級ランクだ。」


「彼がフィルダナ家のご子息だということが分かったが、他に分かったことはあるのか?」


リカルドは彼とあの教会の繋がりも、やけに親しげだったユリアーヌとの関係も見えてはこなかった。


「それが現大臣の子息ということで安全上、情報開示はそこまでになっている。これ以上踏み込むとなるとそれなりの手続きや書類が必要となって、正当な理由と本人の同意が必要となる。」


それにしてもフィルダナ家の子息が新聖派のサン・ジーノ教会に何の用があったのだろう。

しかも無防備にルーニーの気配すら消さずに、いったい何を?


「フィルダナ家のご子息とユリアーヌちゃんとの関係も気にかかるよね?」


急にプライベートモードの話し方で馴れ馴れしく「ユリアーヌちゃん」などとジョゼフが言うので、リカルドは少しイラッとした。


「かなり親しげだったからな。彼女自身があの教会と関わりがあるとは思えないが、フィルダナの坊ちゃんと関わることで彼女が巻き込まれないといいが。」


リカルドが眉間にしわを寄せて言うと、ジョゼフは得意げに「あのね…」と話を続けた。


「王立学校で思うような情報が引き出せなかったから、貴族のことは貴族にということでね、僕の屋敷で母に聞いてみたら面白いことが分かったんだ。」


ジョゼフの話はこうだった。



ジョゼフの母であるマーレン伯爵夫人は貴族の夫人らしく社交に熱心だった。

フィルダナ家に跡取りのご子息が誕生した当時、マーレン家では3人目も男児(この男児がジョゼフ)で5歳だったことから、男の子育ての先輩としてマーレン夫人はフィルダナ侯爵夫人の良き話し相手になっていたようだ。


以前顔を合わせた夜会で話をすると気が合ったようで、その後も頻繁にフィルダナ夫人主催のサロンやお茶会に招かれていたという。

ジョゼフの母がフィルダナ家で珍しい黒目黒髪の少女を見掛けるようになったのは、頻繁に行き来するようになって10年ほど経った頃のようだ。


その子は10歳くらいでフィルダナ夫人はその少女を「ユリア」と呼んで可愛がっていた。

髪や瞳の色が珍しいこともあって目を引いたが、それ以上にとても愛らしく奥ゆかしいところにも好感が持てたし、控えめだがしっかりとフィルダナ家のご息女の遊び相手を勤めていたのを記憶している。


貴族たるもの息子の嫁にといち早く目星をつけておくのは常識で、3人の息子を持つマーレン夫人ももちろんフィルダナ夫人に少女のことを尋ねたそうだ。

社交の勉強と行儀見習いで週に何度か侯爵家に来ているということは教えてくれたのだが、どこの家のご令嬢なのかは上手くはぐらかされてしまったという。

本人も10歳ほどなのに、出自の分かることは絶対に漏らさない余計な話をしないという利発さを持っていた。


それから3年…ジョゼフやリカルドが魔導師学校を卒業し騎士団に入隊した頃に、その少女をフィルダナ家のお茶会で見かけることが無くなった…とマーレン夫人は記憶しているという。


フィルダナ夫人にその少女のことを尋ねると「ちょっと事情があってね…。」と悲しそうな顔をするので、誰もが不幸なことがあったのか…と気を使い、それ以上少女のことを聞く者はいなかったという。

母の話からこの黒髪の少女が、ユリアーヌであることは確実だとジョゼフは言った。



「先ほどの話の中に『幼い時期から嫁の目星を付ける』というのがあったが、フィルダナ家の子息の婚約者…ということなのだろうか?」


眉間にしわを寄せながらリカルドが聞く。


「それはどうだろう?ご子息のエリックに婚約者がいると公式な発表は今のところないけれど…年齢的にそうであってもおかしくない。そうかもしれないし、単に当時の行儀見習いだったのかもしれない。まあ、確かに言えることは、フィルダナ家と関わりがあるということだね。だからこの時期にチェックの厳しい公の職員に採用されたことだって、それだけ確かな後ろ盾があるからだろう。」


確かにその通りだ。

公の職員は庁舎が王宮に隣接していることもあり身辺調査とあわせて、通常試験や面接などの適性検査を行い採用が決まる。

したがって結果が出るまで数カ月かかるのが普通だ。


「ところでリカルドは彼女のことはどこまで知っている?」


ジョゼフがコーヒーカップを持ち上げながら、顔を緩ませて聞いてくる。


「ほんの数回言葉を交わしたくらいだから、実のところほとんど知らない。言葉遣いや所作などから受けてきた教育の良さと愛情を感じる。それから派手さはないが上等な衣服や品の良い持ち物からは生活水準が高いことが分かるな。」


リカルドがユリアーヌを想いながら言えば、ジョゼフは、


「貴族籍を持つ家やそれに準ずる家…それか貿易商や羽振りのいい商家という線もあるな。稀な黒髪黒目の容姿をしていて今の今まで隠れる?いや…隠すように暮らしていたのだから、あの噂も本当なのかもしれないな。」


リカルドは「噂?」と聞き返した。


「母から聞いたのだけれど、最近の社交界は王太子殿下の『花嫁候補』の話題で持ちきりらしい。その一人が彼女らしいよ。最近王立図書館で彼女を見かけるようになってから、昔のフィルダナ家の黒髪の少女を知る者たちが花嫁候補の1人だと噂をしているようだ。」


その噂は昔のようにお茶会や夜会を行っている貴族籍を持つ人々の大きな話題らしい。


「あくまでも噂だから気にするなよ。」


リカルドがジョゼフの部屋から退出するときにそう言われたものの、花嫁候補の話を聞いた後はリカルドの中で「まさかな」という気持ちと「あり得ない話ではない」という気持ちが交差する。


そんな複雑な気持ちで張り込みの報告を王太子にしに行かなくてはならない。


コツコツと書いて少し書き溜めようと思っているのですが、なかなか前に進みません。

書こうと思い描いている場面があるのですが、そこに繋げるための間のストーリーがモヤモヤしています。

がんばります。

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