表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/62

14 1日を終えて

ブクマや評価をありがとうございます。

読んでくださった方からの反応があると気合が入ります。

今日は孤児院へ行く予定がトラブル続きでなかなか向かえずに困っていたところ、偶然通りかかった騎士団第2騎士隊のリカルド隊長に助けてもらったことで孤児院でのお菓子作りも無事行えた。

院の前で降ろしてもらい、リカルドを見送ってから菓子作りに取り掛かるまでボ~っとしてしまい「おねえちゃん、だいじょうぶ?」などと子どもたちに心配されてしまった。

ユリアーヌは髪を結いエプロンを付け、冷たい水で手を洗うことで気持ちを切り替えた。

今日はクッキーだったので小さい子も生地を好きな型で抜いたり、成形したりアイシングをしたりと終始楽しそうでユリアーヌの心も和んだ。


オーブンを作動させたり、蛇口から湯を出したりなどはルーニーが必要になるのだが、今日は驚いたことにとても調子がいい。

ユリアーヌの場合自身のルーニーが無いので、ペンダントの特殊な魔石が取り込んだ周りからもたらされる余ったルーニーを自身のものと偽って使用している。

周りにあるものから漏れ出たルーニーなので、いつも同じだけの安定した供給があるとは限らない。

不思議と今日は今までになく強く安定したルーニーが使えてよかったが、母がいないときに上手く出来なかったら…と少し不安も抱えていたのだった。


「焼きあがりを待つ間に片付けをしてしまいましょう!」


ユリアーヌのひと言で小さい子が洗い場へ使った道具を運び、大きい子が洗う。

その間の年齢の子が洗いあがったものを拭いて…と、見事な連携で片付いた。

焼きあがったクッキーを冷まして保存缶に詰めればおやつの出来上がりだ。

今日のお礼にと昼食として孤児院が子どもたちと同じ、質素ではあるもののふわふわのパンと具だくさんのスープを振る舞ってくれるので一緒に頂く。

食休みに絵本を読んで聞かせ、その後は暫し院の庭で遊んでいるうちに子どもたちは午睡の時間になる。


今日もほぼいつも通りの時間に終わった。

しかし今日はいつものように迎えの馬車がない。

だから辻馬車で帰ろうと院の門を出るとそこには見慣れた馬車が道の脇に寄せてあり、御者台にはヨハンが座っていた。


「ヨハン!仕事に戻って大丈夫なの?」


ユリアーヌが聞けばヨハンは慌てて御者台から降り、帽子をとって頭を深々と下げた。


「今朝は申し訳ございませんでした。代わりの御者の確認もせず飛び出してしまったので、お嬢様に大変なご迷惑をおかけしました。」


ヨハンは深く頭を下げたまま帽子を強く握り、顔を上げない。


「いいの。使用人だって家族の緊急時はそちらを優先するというのが、我が家の方針になっているでしょう。だから構わないのよ。」


眉をハの字に下げたヨハンがやっと顔を上げて言った。


「ありがとうございます!おかげで母を病院に連れていくことができました。」


何度も頭を下げるヨハンを鎮めて馬車に乗り込む。

馬車の窓から見た景色は、リカルドに乗せてもらった騎馬での景色とは違うように思えた。


帰宅後にヨハンの話を聞くと、ヨハンの母親が物を持ったまま足を捻って転倒し、頭を打ったらしい。

母親はヨハンが仕事を終えて帰宅するまで我慢して待つことにしていたが、捻った足がどんどん腫れて熱を持ち痛みも伴って苦しんでいた。

そこにたまたま訪れた近所の主婦が見つけ、彼女によってオルスター家に連絡が来たそうだ。


話を聞き終えたユリアーヌは、今日はヨハンが早く帰れるようにして欲しいと執事にお願いした。

心配した母マリアンヌの熱も下がったことを聞いて自室に戻ったユリアーヌは、アリスの手を借りながら外出着から普段着に着替え終えると窓辺のソファーに腰掛けた。

ため息をひとつついたところでドアが軽くノックされ返事をすると、主に母マリアンヌの身の回りを整えてくれる侍女のエリーが茶の用意をして入ってきた。


「珍しくお疲れのようですね。どうかなさいました?」


声を掛けながらも手際良く茶の準備をし、カップに良い香りのハーブティーを注いでいく。


「う~ん…今日は色々なことがあったから。」


ユリアーヌが言えば、今日は1人での孤児院訪問で子どもたち相手に疲れているのだと思ったのか、エリーが用意した茶菓子はチョコレートだった。


「では夕食までは静かに過ごされますか?」


衣装の片付けが済みクローゼットから出てきたアリスが尋ねる。

ユリアーヌが「ええ」と答えたので、エリーとアリスはそっとユリアーヌの部屋を出ていった。

ユリアーヌが調合している気持ちが休まるハーブティーを一口飲みこむと、今日近くに感じた温かさと柑橘系の香りを思い出した。


「どんなものをお渡ししたらいいかしら?」


突然浮かんだ彼の姿に頬を染めたユリアーヌは、ソファーから移動し机の前に立つ。

その引出しから母直伝のレシピ帳を取り出した。

再びソファーに戻り膝上に置いた母直伝のレシピ帳を開きながら、今日のお礼にリカルドへと渡すものを考えた。


この度もありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ