世話を病む淑女
俺が部屋に入るとそこには……誰もいなかった。
「……どういうことだ?」
俺はとりあえず部屋を出た。
「誰もいないんだが?」
「はあ……彼女なら、君がヴェリア君と話している間に、リリィちゃんの部屋に行ったよ」
「なんだ、それなら早くそう言え」
「もう、僕はそんな横暴な子にしたつもりはないよ」
「別に、育てられた記憶はない」
「育ててなくても、造ったのは僕だよ。つまり、産みの親だよ」
「産みの親より育ての親……産んでも育てないなら、親を名乗る権利はないね」
少なくとも俺はそう思う……
「もう、あー言えばこう言う……」
神様は諦めたように言った。
シラカゼが一瞬だが、遠い目をしたのに気づいたからだ。
「とにかく、俺は行く」
俺はまた、リリィの部屋に入って行った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ねぇ? リリィちゃん、お姉さんと遊びましょう?」
「あの……やめてください……あっシラカゼさん」
俺が部屋に入ると赤髪の女が少女に絡んでいた。
「……何度も悪いな。お取り込み中のようだから、俺はこれで……」
「待って‼ 助けてくださいよ‼」
「ん? そうか、んじゃ」
そう言って、ドアを開ける。
「えっ? ちょっとまt「おーい、ヘルトゥナ~不審者がいるn「ちょっと待ってーーー‼」
少女は少年が出て行くと思い、再度止めようとしたが、どうやら杞憂であったと知り、安心した。
一方、女の方は少女のセリフを代弁し、全力で少年とドアの方に走りドアを閉めてこちらを向いた。
「何をしているの、君?」
「通報」
「やめてよ‼」
「はあ……面倒なんで、とっとと捕まろうか? 不審者さん?」
「嫌よ‼ ていうか、私不審者じゃないわよ」
「じゃあ、ロリコン」
「ちがうわよ‼ っていうかさっきと大差ないじゃない‼」
「じゃあ、もうめんどいから変態でいいや。んで変態、話を進めたいんだが?」
「はあ……だから違うわよ。私は、シエリア。あなた、最後にきた子よね? よろしくね」
「ああ、俺はシラカゼ。よろしく」
さて、シエリアの見た目はというと、髪と同じ赤の瞳を持ち、服は白のシャツで黒に赤と白の模様がはいったスカートをはいている。
「ところで君……フフ腐、なるほどね……」
と言いながら、神様に折角綺麗に造ってもらったであろう顔に、気持ちの悪い笑みを浮かべてジロジロとこっちを見てくる変態。
「エル×シラ? いや、フィリ×シラかしら? うーん……あえてシラ×エルとか、シラ×フィリというのも……腐腐腐腐腐」
とよくわからんし知りたくもない、不快極まりないワードを言いながら妄想にふけるシエリア……
「んじゃリリィ、俺次に行くから」
「ちょっと、待ちなさい‼」
「なんださっきから? もう、次の部屋に行きたいんだが……」
「私も行くわ」
「そうか、来るな」
「何でよ?」
「ウザい、キモい、不快の三点が揃ってるから」
「ちょっと、流石に言いすぎよそれ。だいたい理由も、まだ言ってないのに」
「聞きたくもないね」
そう言って、シラカゼは部屋から出ていこうとする。
「ちょっとまt……「ガンッ」
シエリアが、待ってと言おうとしたところで、すごい音がした。
振り替えると……
「どうぞ、シラカゼさん次に行ってください」
そう言うリリィの手には、どこから持ってきたのだろうか? でかいモーニングスターが握られている。……なぜ、あんな華奢な体で、そんなものが持てるのだろうか? 一方、シエリアは床に倒れていた……もちろん、頭から出血していた。
「ああ、助かった」
しかしそれを見てもノーリアクションの少年……
っとそこで、少年の足がつかまれた。
「まっ、まだよ……まだ私はy「ガンガンガン……」
そして、再度無情にも振るわれる鉄槌……しかも今回それは、何度も振るわれた。
しかし、それでもシエリアは原型を留めている……本当にしぶとい。
「よし、これでいいでしょう。では、今度こそ行ってきてください」
と、良い仕事をしたとばかりに満足気な少女。
「ああ」
俺は今度こそ部屋を出た。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「何か騒がしかったけど。大丈夫?」
「ああ、特に問題はなかった」
実際は問題しかなかったが……
「そう……じゃああと4人のところに行っておいで。あーあと次の子からは気を付けなよ?」
「ん? 何かあるのか?」
「ちょっと、扱いづらい子達だから」
「そうか……まあ、何とかするさ」
そして、次の部屋へと入った。