パン屋との別れ……
「正直めんどうだが明日からの予定を説明する」
「めんどうって……」
「明日からはユニという村を目指す」
「え? あの村に行くの?」
「文句があるならここで死ぬか?」
「いいえ、ありませんよ。ええありませんとも」
「どんな村なんだ?」
「小規模な村で、住人のほとんどが中性的らしい」
「中性的?」
「顔や体格が男女問わず中性的だそうだ。あと不老長寿らしいな」
「へー、へんなの」
「ちなみにお前みたいなやつもいるぞ」
「は?」
「体が男でも中身が女みたいなやつとか、その逆とか」
「うるせぇ、俺は男だ」
「話を戻すと、今回の対象者は1人だ」
「ちなみに誰ですか?」
「村長だ」
「ああ、あの子か」
「どんな人なの?」
「いい人ですよ」
「極端すぎ」
「そうですね……会ったことはあるんですが、一度だけなのであまり詳しいことは……」
「ユニ村の村長は例に違わず中性的な顔立ちで性別は男。分かりやすくいえばヴェリア、お前みたいな感じだ。ちなみに村を作ったのもやつだ」
「へ~そうなんだ」
「お前たちたいして役にたたんな」
「すみません」
「まあ役にたたないならそれまでというだけだ」
「はあ……」
「まあ詳しい話は向かう途中に話す。向こうに着くにはどのくらいかかる?」
「歩いて3日かな」
「だそうだ。ここからはやっと旅らしくなる……といっても大したことはないと思うがな。説明は以上だ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
説明などが終わったので、俺はリビングでゲームをやっていた。
「何やってんだ?」
ディアニスがきた。
「ぽよぽよ」
「なんだそれ?」
「キャラクターがぽよっていう脂肪を消して痩せるゲーム」
「面白そうだな」
「やるか?」
「ああ」
「最初だからお前は難易度激痩せでいいぞ」
「はっ、なめんなよ」
数分後……
「ま、負けた」
「残念だったな。実は激痩せより激太のほうが結果的にいいんだよ」
「てめぇ、だましたな」
「別にだましてないが?」
「もう一回だ」
「いいぞ」
さらに数分後……
「……負けた」
「まあ、そうなるよな」
「うるせえ、もう一回だ」
「いいが、その代わり次負けたら寝ろよ?」
「わあったよ」
そしてさらに数分後……
「また負けた……」
「んじゃ、寝ろ」
「チッ……次は負けねえからな」
次があればな……
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「んー……」
寝ぼけ眼で時計を見る……
「まだ5時か……」
寝返りを打った……すると……
「ん?」
やはりそこにはイケメソの顔がドアップであった。
ぺチッ……
殴っt……zzz
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「エルさん今朝はどうしたんですか?」
「なにがだ?」
「今日も頬が赤いですよ……というか嬉しそうですけど?」
「なんでもない」
「そうですか? シラカゼさんは……いつもより不機嫌ですね」
「んなことより今日は……何すんだっけ?」
「「「は?」」」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
あれから説明(という名の説教)を少し(1時間)して、準備をしているところだ。
「さて、もういいか?」
「いいよ……」
なにをしてるんだこいつは?
「今日でこの店とはさよならか……思い出すと色々あったな……」
「よし、準備ができたら外に出ろ」
「劇薬パンや凶器パンの研究をしたり……そういえば、」
「なに独りでしゃべってんのか知らんが早くしろよ」
「……分かったよ」
しばらく外で待っているとパン屋が出てきた……
「遅いぞ」
「ごめんね」
そう言ってパン屋は店のほうを向いた……
「……」
「おいフレン……」
パン屋を無視して、俺はフレンを呼んだ。
「今まで色々あったけど……」
「やってくれ」
「今までありがとう」
そう言ってパン屋は頭を下げた。そして頭を上げると……
「え? ……」
そしてゆっくりこっちを振り替える。
「あの……僕の店消えたんだけど……」
「まあ、消したからな」
「え? ちょ、ひどくない? 確かにさよならって言ったけどさあ、生き残れたらまた戻ってくるんだよ? なんで消したの?」
「持ってくから」
「……え?」
「お前の店持ってく」
「もうメチャクチャだよ……」