うん、おいしいよ
「まあそうよね。うんうん」
いつの間にか、エルさん以外は近くに来ていた……
「シエリア、本当に分かってるの? 僕にはバカっぽくて理解できないんだけど」
あーこれは……
「はっ、それはお前がバカだからだろヴェリア?」
だよね……
「はいはい、ケンカしない」
「別にいいじゃないですか、ヴェリア君。ディアニスさんは説明は下手ですけど、言っていることは立派ですよ?」
「お前、誉めてんのか、ケンカ売ってんのかはっきりしろよ……」
両方だと思うよ。
「えぇ? どこが立派なの?」
「他人は自分が努力していれば、自然と自分のことを高く評価してくれるというところです」
ディアニス君より分かりやすい……リリィちゃん、この中でも若いんだけど……
「だってそれ、要するに独り善がりでしょう? 人が勝手に寄ってくるとか言ってるけど、それって自分のことばかりで人の事を見てないじゃん。それじゃあ人が集まったって、すぐに離れていくと思うんだけど?」
そう言われると、確かにそうだ。
「確かにそうですけど……」
「じゃあお前は、どうすればいいってんだ?」
「僕なら、まず人の事を知ろうとするかな。人の好みとか趣味とか分かれば話ができて、そこから仲良くなれるわけだし」
「じゃあそいつの趣味が、こいつみたいだったらどうすんだよ?」
そう言って、俺を指さすディアニス君……うぅ……
「こら、人を指差しちゃダメでしょ」
叱られるディアニス君。
「そんな趣味の人、普通いないじゃん」
うぅ……この娘ストレートに失礼だよ。
「普通はそうでも今いるだろうが‼」
「やめてくださいよ、二人とも。本人の目の前で……別に気にしないでくださいね? フィルさん」
「あ……うん……」
俺の心、もうズタズタだよ……
「その時は、出来るだけ相手にあわせるけど……」
「じゃあ、食われんの?」
「出来るだけって言ったじゃん」
「じゃあ無理じゃねえか」
うぅ……
「もういいかげんにしなさい‼」
シエリアさんが本気で怒った。
「2人の意見、どっちもいいじゃない。欠けてるところがあっても、いい面もあるんだから……だからほら」
シエリアさんは2人の手を握手させる。
「こうすれば、欠けたところも補えるでしょ?」
シエリアさん……
「……シエリアさん」
「何? リリィちゃん?」
「珍しく、いいところですが、魔物です……」
「えっ? ちょっ、待ってよ! せっかくいい感じだったのに……」
「よっしゃー! かかってこい」
全部だいなしだ……
「……まああれよ……2人の意見を足して2で割るくらいが、ちょうどいいのよ……」
「もう、そんな落ち込まないでくださいよ」
子どもになだめられる大人……色々と残念だよ。
「フィルクン、ヨカッタネ」
「……どこが?」
「ミンナト、オハナシデキタ」
「凄く一方的だったけど?」
「デモ、ミンナノコトヲ、キケテ、タノシカッタ」
確かに……
「……そうだね」
「ネエ、フィルクン。カレモイレテアゲヨウヨ」
フレンさんとララはエルさんの方を向いていた……うぅ……まだ睨んでるよ……
「でも、俺のこと睨んでるよ」
「ダイジョウブ。コウイエバ、イインダ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「……あのエルさん?」
「……なんだ」
うぅ……そんなに睨まないでよお……
「実は俺、ちょっと疲れてきました……なんて」
笑ってみたけど、きっと苦笑いになってる……
「だからなんだ?」
「な、なのでですね、シラカゼ君を代わりに、おぶっていただけないかなぁ~なんて……」
「……」
「ああ、ほら、あれですよ。シラカゼ君、ディアニス君があんなに騒いでいても起きないですから、交代しても目的地に着いてうまくごまかせばバレませんよ……」
たぶんだけど……
「……のか?」
「ふぇ?」
エルさん、声小さくて聞こえないよぉ……
「だから、いいのかと聞いている」
「えっ……あーはい、むしろお願いします」
とりあえず、エルさんに代わってもらった……
「ありがとうございます。それじゃあ……」
「フィル」
「は、はい?」
まだなにかあるの?
「お前いいやつだな」
「あ……はい……」




