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旧・病みパで始める終焉物語(エンドシナリオ)  作者: 紅暮
第1章 はじめてのおつかい
22/32

うん、おいしいよ

「まあそうよね。うんうん」


いつの間にか、エルさん以外は近くに来ていた……


「シエリア、本当に分かってるの? 僕にはバカっぽくて理解できないんだけど」


あーこれは……


「はっ、それはお前がバカだからだろヴェリア?」


だよね……


「はいはい、ケンカしない」


「別にいいじゃないですか、ヴェリア君。ディアニスさんは説明は下手ですけど、言っていることは立派ですよ?」


「お前、誉めてんのか、ケンカ売ってんのかはっきりしろよ……」


両方だと思うよ。


「えぇ? どこが立派なの?」


「他人は自分が努力していれば、自然と自分のことを高く評価してくれるというところです」


ディアニス君より分かりやすい……リリィちゃん、この中でも若いんだけど……


「だってそれ、要するに独り善がりでしょう? 人が勝手に寄ってくるとか言ってるけど、それって自分のことばかりで人の事を見てないじゃん。それじゃあ人が集まったって、すぐに離れていくと思うんだけど?」


そう言われると、確かにそうだ。


「確かにそうですけど……」


「じゃあお前は、どうすればいいってんだ?」


「僕なら、まず人の事を知ろうとするかな。人の好みとか趣味とか分かれば話ができて、そこから仲良くなれるわけだし」


「じゃあそいつの趣味が、こいつみたいだったらどうすんだよ?」


そう言って、俺を指さすディアニス君……うぅ……


「こら、人を指差しちゃダメでしょ」


叱られるディアニス君。


「そんな趣味の人、普通いないじゃん」


うぅ……この娘ストレートに失礼だよ。


「普通はそうでも今いるだろうが‼」


「やめてくださいよ、二人とも。本人の目の前で……別に気にしないでくださいね? フィルさん」


「あ……うん……」


俺の心、もうズタズタだよ……


「その時は、出来るだけ相手にあわせるけど……」


「じゃあ、食われんの?」


「出来るだけって言ったじゃん」


「じゃあ無理じゃねえか」


うぅ……


「もういいかげんにしなさい‼」


シエリアさんが本気で怒った。


「2人の意見、どっちもいいじゃない。欠けてるところがあっても、いい面もあるんだから……だからほら」


シエリアさんは2人の手を握手させる。


「こうすれば、欠けたところも補えるでしょ?」


シエリアさん……


「……シエリアさん」


「何? リリィちゃん?」


「珍しく、いいところですが、魔物です……」


「えっ? ちょっ、待ってよ! せっかくいい感じだったのに……」


「よっしゃー! かかってこい」


全部だいなしだ……


「……まああれよ……2人の意見を足して2で割るくらいが、ちょうどいいのよ……」


「もう、そんな落ち込まないでくださいよ」


子どもになだめられる大人……色々と残念だよ。


「フィルクン、ヨカッタネ」


「……どこが?」


「ミンナト、オハナシデキタ」


「凄く一方的だったけど?」


「デモ、ミンナノコトヲ、キケテ、タノシカッタ」


確かに……


「……そうだね」


「ネエ、フィルクン。カレモイレテアゲヨウヨ」


フレンさんとララはエルさんの方を向いていた……うぅ……まだ睨んでるよ……


「でも、俺のこと睨んでるよ」


「ダイジョウブ。コウイエバ、イインダ」



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「……あのエルさん?」


「……なんだ」


うぅ……そんなに睨まないでよお……


「実は俺、ちょっと疲れてきました……なんて」


笑ってみたけど、きっと苦笑いになってる……


「だからなんだ?」


「な、なのでですね、シラカゼ君を代わりに、おぶっていただけないかなぁ~なんて……」


「……」


「ああ、ほら、あれですよ。シラカゼ君、ディアニス君があんなに騒いでいても起きないですから、交代しても目的地に着いてうまくごまかせばバレませんよ……」


たぶんだけど……


「……のか?」


「ふぇ?」


エルさん、声小さくて聞こえないよぉ……


「だから、いいのかと聞いている」


「えっ……あーはい、むしろお願いします」


とりあえず、エルさんに代わってもらった……


「ありがとうございます。それじゃあ……」


「フィル」


「は、はい?」


まだなにかあるの?


「お前いいやつだな」


「あ……はい……」

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