はじまりの森の朝
「ん? もう朝か」
木々の間からは光が差し込んでいた……ところで
「……何してんだ?」
「おはようシラカゼ君」
俺の左右にはヴェリアとフィルが寝ていた。そしてしゃがんで、にやけながらこっちを見てくるバカ……どうしてこうなった?
「シエリアさん? 何してるんですか? まだ朝食の準備できていませんよね?」
笑顔のリリィがシエリアの背後に立っていた。シエリアは気づいていなかったようで、顔を青くして震えている……ゆっくりと首を後ろにまわした。
「あ、あはは、いやね~リリィちゃん。これはちょっとした休憩よ」
「へ~そうですか。私達が朝食を取りに行った時も、準備があるからといって残ったのに、帰ってきてみればシラカゼさんのところで、ニヤニヤとシラカゼさんたちを観察してましたよね?」
「い、いやそれh「問答無用です。こっちにきてください……」
引きずられていくシエリア……
「ひええ、ごめんなさい。ちゃんと真面目にやるから許して~」
「うるさいですよ」
シエリアはつれていかれた……
「おい。お前達もいつまで寝てんだ」
「ん? ……あ~おはようシラカゼ君」
ヴェリアが起きた……
「早く起きろフィル」
起き上がって、フィルを蹴る。
「ぅ……痛い……痛いよシラカゼ君」
「ならさっさと起きろ。だいたい何でお前達が俺の横で寝てるんだ?」
「だってシラカゼ君昨日一緒に寝てくれるって約束してくれたし」
「今度と言ったんだ、今度と。フィルに関しては約束してないだろうが」
「ヴェリア君が寝てたから俺もシラカゼ君たちと寝たいなぁと思って」
「はあ……で? エルはどこだ?」
「エルさんは森の奥で魔物と戦ってると思うよ」
「分かった。もういい」
あきらめて起きるとするか……
「あー待ってよ、シラカゼ君~」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「さて準備ができたようだし、これから町を目指すぞ」
「「「おおー」」」
「おい、そこの3バカ」
3バカ=フィル、ディアニス、シエリアだ。
「誰がバカだ!」
「そうよそうよ!」
「遠足に行くわけじゃないんだぞ?」
「……ごめん」
フィルは謝り、しゅんとしている……
「いいじゃない」
「そうだそうだ」
「ディアニスさん、シエリアさん?」
「はい‼ すみませんでした‼」
素早く土下座するシエリア……もはやプライドは捨てたな。
「わ、悪かったよ」
二人はリリィの笑顔に圧されて謝った。
「おまえら本当に学ばないな」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「町はこの森を抜けて、平原地帯を少し行ったところにある。いきなり町には突入しない。まず平原の近くを仮拠点として、情報を集めて転生者を狩る」
「そういえば、転生者2人の情報ってあるのかい?」
「能力とかは把握済みだ。詳しくは今夜話すが、転生者のうちの一人は……通称悪夢のパン屋さんと呼ばれているそうだ」
「なんだそれ?」
「なんでそう呼ばれてるの?」
「ヘルトゥナの情報によると、武器にパンを使っているからだそうだ」
「ヤバイな」
「パンに毒物などを混入して相手を毒殺したり、フランスパンで相手を撲殺してそのまま血をジャム代わりにして食べたりとかしてるらしい」
「こわ……」
「人食いのお前には、言われたくないだろうよ」
「よくつぶれないわね……」
「普段は真面目に経営してるそうだ」
「へぇ~……それじゃあ、もう一人は?」
「もう一人は……」
「もう一人は?」
「……聖人だそうだ」
「えっ? 魔族の町なのに?」
「細かい事情は知らんが、別に捕まっているわけじゃないそうだ」
「へ~それでどんなやつなんだ?」
「……それは「シラカゼ」
俺が説明しようとしたら、エルにとめられた。
「なんだ?」
「大丈夫か?」
そう言って、頭を撫でてきた。
「別に普通だが?」
「それにしては眠そうだが?」
ださないようにしていたんだが……バレてたか……
「少し眠いだけだ」
「そうか? 無理しなくてもいいぞ?」
エルはしゃがんだ……
「ほら、背負ってやるから」
「いや、別にいらん」
「シラカゼさん」
「なんだ?」
「休んだ方がいいですよ。昨日の夜も頑張っていたようですし……」
「二人も起きていたが?」
「ソウダケド、キミハ、スキルヲズット、ツカッテイタンダヨネ? ナラヤスマナキャダヨ」
「そのくらい別に「いいじゃねえかシラカゼ。俺たちとしてはお前に死なれちゃ困るしな」
「そうよ! 無理しちゃダメよ!」
珍しく、真面目な顔をしているシエリア。
「だから……腐腐……早くエル君に……ぎゃー、また目がー‼」
前言撤回……
「ほら、シラカゼ」
「チッ……」
なんでこいつに、おぶられなきゃならんのだ……そう思っていると……
「ふぇ?」
フィルと目があった……よし。




