プロローグ2
「10人ね~……なんでそんなに呼ぶんだ?」
「現在の魔王は5人いるんだよ。その関係で5人ずつになってるんだ」
「それって5人よりも多く呼べるのか?」
そこには『バランス崩壊するのでは?』というニュアンスが込められていた。
「簡単にはできないけど不可能でもないよ? ただ、その場合は議会が絡んでくるから逆に不利になるってことで呼ばないんだ」
「なるほど面倒だな……でもそれなら別に良いんじゃないか?」
実際10人ならバランスもとれていて問題がないように思われる。しかし……
「そう、それは問題がない……とは言わないけど、そこらへんは置いておくとしてね? 一番の問題は召喚がどれも不完全なものばかりでね? 基本的には問題ないんだけど……よく関係のない子を巻き込むんだよね。最悪勇者の肉体や精神に影響するとかもたまにあるね」
ヘルトゥナは溜め息をついてお茶を飲む。神様も色々と鬱憤が溜まっているようだ。
「しかも勇者の中には戦いたくないとか何とかで残るんだよね。ただでさえイレギュラーが多いのに、そういう子たちが絡んでくると面倒なんだよ」
「それは大変だなー」
そんなことは微塵も思わないが。
「全然感情籠ってないよ」
「別にどうでも良いからな」
ヘルトゥナはまた溜め息をついた。
「まあ……話を戻すと、さらに今回は神々はそれどころじゃなくて管理できないんだ」
「何かあるのか?」
「この世界の外の神との戦争が近くてね……色々準備があるんだ」
そこで俺はお茶を飲み干す。
「で、つまるところ俺に何をしろと?」
「君には勇者の召喚に向けて現在の転生者の抹殺を行って欲しい」
「ほう……いいのか? 一応こっち側のやつもいるんだろ?」
ここにきて俺は初めて頬が緩んだ。俺は別に戦いたいわけではない。だが……普通に面白そうだ。
「こっち側といっても彼らは自由気ままだからね~……別にそれは構わないんだけど……そのせいで処理が面倒になるんだよね。まあ、正直それだけなら僕は別に放置で良いと思うんだけどね」
「で、実際の理由は?」
そこでヘルトゥナはいかにも面倒だという顔をした。
「議会に力をつけてほしくないからだよ。転生者は力を与えられる……だから神以上に強くなる可能性が高いんだよね」
「それで自分たちの脅威は潰したいと?」
「まあそういうこと。もちろん神々は人間を愛しているからね……一応試練でもあるんだ」
「フッ……愛している? さてどうだか?」
俺は皮肉を込めてそう言いつつ、苦笑した。
「まあいい……とにかく俺にそいつらを仕留めてこいということでいいんだな」
「うん。悪いんだけど君たちにはそうしてきて欲しい」
「君たちってことは俺以外にもいるんだな」
「うん。君も含めて8人」
俺は目を細めた。
「ほう? ずいぶんと多いな?」
「彼らはある程度鍛練を積んでるからね。対抗するには数ってね」
「そんなにいたらやらないやつとかでてくるだろ?どうするんだ?」
「もちろん。そういった事態も想定しているよ。その場合は、勇者に戦ってもらうことになってるよ。まあ要は彼らの足止めと戦力を削ることが目的だしね」
「なるほどね。その分自由は保証されているんだろ?」
「うん。君たちの自由は保証するよ。もちろん、この件を引き受けるかどうかもだけどね」
「引き受けない場合は?」
そこで一瞬沈黙が訪れる……
「悪いんだけど、本来あるべきところに帰って貰うよ。帰る場所があればだけどね~。君はこちらに呼ばれた時点で向こうに返すことはできない。それが神様同士の取り決めだからね」
「くどいな。つまりどうなると?」
「君は無へと帰すよ……世界との縁が切れるからね。存在が消えるのは、痛いんだってよ? イメージとしては、酸素が無くなって窒息する感じかな? まあもちろん肉体だけじゃなく精神的にもだけどね」
目の前の神様は笑顔でそんなことを言ってきやがりました。
そこで俺も溜め息をつき、やれやれといった仕草をする。
「つまり損な役回りなわけか」
「それはお互い様だよ」
「どうだかな? そう言う割には、楽しそうだが?」
俺がそう言ったところで、互いに笑いあう。どちらも自虐気味にだが……
「まあ何にしても悪いとは思うし、引き受けてくれたら自由だけじゃなくできるだけサポートはするよ」
「ハイハイ、んじゃ引き受けますよ~神様~」
「うんうんよしよし。それじゃあ君の能力とか、仲間の紹介をしようか」
そう言って、ヘルトゥナが指を鳴らすと俺の左側の方に扉が7つ現れた。