はじまりの森の大仕事?
俺はフレンディアたちと共にテーブルとイスを配置して座った。
「んじゃ、俺たちは拠点の整理をする。ということでだ……まあ今できるのは、あと寝るところの用意ぐらいだろ。調理関係は水が必要だから探索が終わるまでは保留。近くに水場がなければ、その時に考えるとしよう」
「シエリアガ、アトカマドモホシイッテ、イッテタ」
「そうか。では、それも作ってやってくれ」
「モウツクッテキタヨ」
「そうかよくやった」
「エヘヘ、ヨカッタネフレン?」
フレンは相変わらずの無表情だったが、どこか少し嬉しそうに見えた。
「では、フレンとララ、お前たちはここで待機して地図の作成と他のやつらを監視しておけ。万が一ということもあり得るからな」
「ワカッタ」
「では、フィリユス行くぞ」
「うん……あと俺のことはフィルでいいよ」
「そうか。では行くぞフィル」
「うん……」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
俺とフィルは、そこから少しだけ離れた所にあった大きな木の前に来た。
「まあここら辺でいいだろう。さてお前の出番だフィル」
「うん任せて」
「では、ここの雑草を抜いてもらう」
「……えっ?」
「何が『えっ?』だ。早くやれ」
「いや何か、俺のだけ地味なんだけど……」
「バカめ、雑草抜きも立派な仕事だ。こんなに雑草があっては寝られんだろ? だいたい、お前なら一瞬でここら辺の雑草を抜けるだろうが」
「そうだけど……」
「俺は火属性の魔法を扱える。だからこの場を焼け野原にするのは容易い。だがなフィル、そうした場合は煙が出て目立つ。しかも寝る時には、焦げた臭いと灰だらけの中で寝ることになる……お前はそんな中で寝たいか?」
「確かに嫌だ……でも、そこは風属性の魔法でどうにかできるんじゃ……」
「甘いな……確かにそれを使えば煙を誤魔化しつつ、灰や臭いを吹き飛ばせるだろうよ。だがそれには、精密な操作をするために集中する必要がある。それでは俺1人……例え2人でやっても時間がかかりすぎるし、労力を無駄に消費するだけだ」
「じゃ、じゃあ3人なら……」
「俺とリリィはともかく、ディアニスにできるとでも? 灰ごと地面を抉るだろうよ」
「そっか……分かった。俺、やるよシラカゼ君」
「ああ、頑張れ」
そして、フィルは近くの雑草を一つ掴んで抜いた……
「はあはあ……どうシラカゼ君?」
「上出来だ」
フィルは雑草を一本だけ抜いたように見えた……いや正確に言えば、フィルが雑草を抜くと同時に、他の雑草もひとりでに抜けたように見えた。それは見ていて少し気持ちがよかった。
「あとは集めてもらいたいんだが……もう終わったか……」
「はあはあ……うん……」
たかが雑草、されど雑草……雑草抜きがこんなに清々しいと思ったのは初めてだ。
「よくやった。あとはさっきのイスに座って休んでいろ」
「うん……」
地面に仰向けで倒れているフィルは、満足そうに少し笑っていた……まあ今回は許すとしよう……
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
俺たちが戻ると……
「シラカゼクン、チズノホウ、カンセイシタヨ。アト、ヴェリアクンモ、モウスグカエッテクルヨ」
「早いな……分かった。では地図を出してくれ」
ララがフレンの手を離れ、テーブルの上に登った。そしてトコトコと歩き中央に機械を置いた。するとそこから地図が浮かび上がった。
「近くに川が流れているな」
どうやら水は大丈夫そうだ。
「ちなみに水質検査はやったか?」
「ミズハ、ノミミズトシテ、モンダイナイヨ……タダマモノガミズノナカヤ、マワリニイルヨ」
「それだけ分かれば十分だ。魔物はあいつらに処理させればいいしな」
そうしていると……
「今どんな感じかしら?」
シエリアがきた。
「ああ、近くに川があった」
「あらそうなの? それはよかったわ」
「狩りに行ってるやつらが帰ってきたら、魔物を追い払って結界をヴェリアに張ってもらうつもりだ」
そんなことを話していると……
「ただいまシラカゼ君。僕がどうしたって?」
ヴェリアが抱きついてきた。もちろんすぐにはがした。
「お前にここの結界を張ってもらうと話してたところだ」
「むぅ~……ハグくらいさせてくれてもいいじゃん」
「嫌だ」
「じゃあ僕もやだ」
「……はあ、分かった。好きにしろ」
「えっ? いいの?」
「ああ」
「えへへ」
そして再度抱きついてくるヴェリア……
「フフフ……腐腐……っぎゃー顔がー、てか目、目がー」
シエリアが気持ちの悪い顔がムカついたので、顔めがけて火属性の魔法で作ったボール……ファイヤーボールを投げつけた。




