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我は風の子  作者: 勝木 青葉
第一話 観察池
2/10

01

プロローグ


 この世界には、私たちと、そうでない者達が存在する。彼らは時に知恵を与え私たちの助けとなり、そして時に災いをもたらし、私たちを苦しめる。そしてまた、時には人間との間に愛を育み命を与える。

 彼ら"天魔"と云う存在は、見る人の心によって善にも悪にもなりうるのだ。私にとっては…



第一話 観察池


「…つ、千本松!聞いてるか!?」

聞いているか、と聞かれれば聞いている。けれど、そんなことより…

「えっと、すみません。聞いてませんでした。」

「そんな風にいつもボーッとしてる様じゃ、中学生になってからやっていけないぞ!第一!先生が一所懸命話している時は、千本松もちゃんと話を聞きなさい!」

 そう言って川の瀬先生は私の頭に教科書の角を落とした。ゴンッと嫌な音を立てて痛みが頭に刺さる。思わず制裁をくらった所をさすると、先生は一言付けたした。

「これが先生の心の痛みだ。」

クスクスとクラス全体に笑いがひろがった。


 授業終了のチャイムが流れた途端、クラスだけでなく廊下までもが一気に騒がしくなるのはいつもの事だ。クラスメイト達は皆、十分間という短い休み時間を十分過ぎる程に楽しんでいる。だが、授業中に注意を受けた私だけは違った。授業が終わってすぐ先生と目が合い、手招きによって教壇の前へと誘導された。

「なんで呼ばれたかは、分かっているな?」

「……」

「分からないのか?」

「……」

「千本松?」

「え……あ、すみません。ボーッとしてました。」

「分かっているんだな?」

「あーいえ、今ボーッとしてて……何でしたっけ?」

「……はぁ…お前はいつもそんな風に上の空で、授業にも集中出来てないだろ?ちゃんと夜寝てるのか?何か悩み事があるなら家族や友達に相談したらどうだ?勿論先生でもいいぞ!」

「あ、はい大丈夫です。(それよりも、先生の後ろのそれが…気になって集中出来ないんだけどなぁ。)」

 先生は私が心配だとか、そんな話をしていたけれど、私は先生の後ろに居る"ソレ"の方がずっと心配だ。周りの子達や先生には見えないのだろうけれど、ソレは確かに存在していて、時に悪さをする。

「(水っぽいなぁ……先週、観察池の水キレイにしたって、先生言ってたっけ…後で見に行ってみようかな。喜んでるっぽいし、害はなさそう。)」

「大丈夫か?」

 ポンッと先生の手が肩に乗り、ハッと意識が目の前の先生に戻った。

「あっはぃ<キーンコーンカーンコーン>」

 私が言い終わる前に授業開始のチャイムが鳴り、説教タイムは終了となった。そして同時に、私の短い休み時間も強制終了した。「席に着け。」爽やかな笑顔に怒りを覚えたのは言うまでもない。ぞろぞろとクラスメイト達は席に着き、仕方がなく自分も流れに従った。

「それじゃあ、月曜日の帰りの会で話した通り、皆も自分の進路について親御さんと相談して来てくれたと思うので、今から配る紙に自分の第一志望と第二志望の中学の名前を書いて提出して下さい。まぁ、だいたいの人は同じ中学だろうけど、私立に行きたい人も居るだろうからな。あー、あと一番下になりたい職業も書いて下さい。はい!それじゃあ紙配ります。」

 先生の話が終わると、クラスメイト達はざわついた。HRってのは普通の授業とは違い、ある程度は話しても怒られない。私の周りも同様で、隣の女の子も紙を後ろへ回しながら私の方へと身体を向け、話の体制を整えた。

「ねぇねぇ木葉ちゃん!木葉ちゃんは私立行く?私は梅ヶ丘女子の制服が可愛くって、どーしようか迷ってるんだー」

「(制服かぁ…)あぁそうだね、桂木さんだったら梅ヶ丘の制服似合いそうだね」

「えっ!本当ー!?木葉ちゃんにそう言ってもらえると桃香嬉しいなぁ」

「はぁ……。」

 桂木さんは小首をかしげたり、鼻唄をうたったり、可愛い動作の連鎖反応を起こしていた。そして、それを加速させる人物が現れる。

「こらぁ桂木!制服を理由に中学きめるなんて親御さん悲しむぞ!」

 川の瀬先生の姿をとらえた瞬間、桂木さんの瞳が眩い程に輝くのが見えた。

「(くっ、眩しい!これがクラスNo.1女子の実力かっ!)」

「えぇ。先生は桃香が梅女の制服着てるの見てみたくないんですかぁ?」

 ド直球な桂木さんのアピールには感服する。10歳以上も年上の相手、しかも教師にここまで怯む事なく投球していく桂木さんは凄い。

「可愛い制服を着ている生徒よりも、真面目に勉強している生徒の方が先生にとっては可愛いものなんだ!分かるか、千本松!!」

「(ふむ、中々先生らしい事を…)って、私ですか!?」

「そうだ!授業中上の空じゃダメだぞ!ほら!話しても良いからちゃんと希望校を書きなさい!」

「(まだ怒ってたのか…)」

 言われた通り渡された紙を見つめる。真っ白なそこに、自分の名前と学区指定の中学の名前だけ書いて裏返しにした。

 机に伏せた私の頭の上を、クラスメイト達の笑い声が交差して聞こえた。みんな、何かしらの夢を語り合う。それは、平凡であったり非凡であったりした。この世界の殆んどの人間が見る事の出来ない者を、私は見る事が出来る。けれど、見えない人が多いこの世界で、それは存在しないのと同じ。故に、私は平凡であって非凡、非凡であって平凡なんだ。要するに言いたい事は…これと言って夢は無いです。それだけ。





初投稿です!

川の瀬先生は"生徒思いの凄くいい先生"で、常に全力投球!

自分も全力で投稿します!

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