あと少しだけ……
やっとのことでたどり着いたその光景は、地獄絵図以外のなにものでもなかった。
半壊して横たわる飛行機。さらにそこからは炎が燃え上がっていた。
飛行機が墜落するまでに、一応乗客は全員脱出している。
中に人はいないはずだ、いるならその付近だ。
ぼくは人影を探す。
……見つけた。
少しだけ逃げるのが遅かった僕と立那。
爆発に巻き込まれ、二人ともかなりの傷を負った。
だけどおかげで近い空間にたどり着いたようだ。
そろそろ動かなくなってきた体を這わせるようにして、僕は彼女に近づいて行く。
ようやく近までたどり着いたぼくは彼女の顔を見やり、一言つぶやいた。
「……ごめん」
それはたくさんの後悔のうち、彼女だけに向けられた後悔だ。
妖精のように可憐で可愛い顔や、雪のように白くて綺麗な肌、自慢のセミロング、彼女の着ている制服すらもすべてボロボロになっている。
彼女は一言も発さずに黙ったままだった。
ぼくは彼女の右手に触れる。
…………。
脈の音なんて聞こえなかった。
それは彼女が死していることを意味している。
認めたくなかった。
だけどこの状況だからことできることもあった。
ぼくは彼女の隣で仰向けになった。
そして彼女の右腕をぼくの左手で包み込んだ。
つめたい……でも、自然と心は温かくなってきた。
彼女は彼らとの思いでが浮かび上がる。
それはぼくにとって宝物だ。
だからそれを抱いて終われるのならば、後悔はない……いや、一つだけある。
ぼくは隣の少女に語りかける。
「ねえ、立那。あのときしてくれようとした答えはなんだったんだよ?」
思いを伝え、しばしの時間がたった。
やっとくれた答えはなんだったんだよ?
でもまあ、こうやって二人で終わるのも悪くない。
あれ、冷たい。
これは雨?
感覚が消えていく。
あと少し、もう少しだけ……彼女のそばにいたい。
だってぼくは彼女が好きだから。