表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/16

あと少しだけ……

 やっとのことでたどり着いたその光景は、地獄絵図以外のなにものでもなかった。

 半壊して横たわる飛行機。さらにそこからは炎が燃え上がっていた。

 飛行機が墜落するまでに、一応乗客は全員脱出している。

 中に人はいないはずだ、いるならその付近だ。

 ぼくは人影を探す。

 ……見つけた。

 少しだけ逃げるのが遅かった僕と立那。

 爆発に巻き込まれ、二人ともかなりの傷を負った。

 だけどおかげで近い空間にたどり着いたようだ。

 そろそろ動かなくなってきた体を這わせるようにして、僕は彼女に近づいて行く。

 ようやく近までたどり着いたぼくは彼女の顔を見やり、一言つぶやいた。

「……ごめん」

 それはたくさんの後悔のうち、彼女だけに向けられた後悔だ。

 妖精のように可憐で可愛い顔や、雪のように白くて綺麗な肌、自慢のセミロング、彼女の着ている制服すらもすべてボロボロになっている。

 彼女は一言も発さずに黙ったままだった。

 ぼくは彼女の右手に触れる。

 …………。

 脈の音なんて聞こえなかった。

 それは彼女が死していることを意味している。

 認めたくなかった。

 だけどこの状況だからことできることもあった。

 ぼくは彼女の隣で仰向けになった。

 そして彼女の右腕をぼくの左手で包み込んだ。

 つめたい……でも、自然と心は温かくなってきた。

 彼女は彼らとの思いでが浮かび上がる。

 それはぼくにとって宝物だ。

 だからそれを抱いて終われるのならば、後悔はない……いや、一つだけある。

 ぼくは隣の少女に語りかける。

「ねえ、立那。あのときしてくれようとした答えはなんだったんだよ?」

 思いを伝え、しばしの時間がたった。

 やっとくれた答えはなんだったんだよ?

 でもまあ、こうやって二人で終わるのも悪くない。

 あれ、冷たい。

 これは雨?

 感覚が消えていく。

 あと少し、もう少しだけ……彼女のそばにいたい。

 だってぼくは彼女が好きだから。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ