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前進~3~

テストも終了、後は夏休みを迎えるだけ……頑張るぞー


誤字脱字、その他感想や「更新に時間かかりすぎだろ!」など意見がございましたらお願いします。ちなみに更新はリアル事情で変動するため変更は難しいです。

 大都市オルオンは東西南北に地区分けをされており、一つ一つのルートがそれぞれ意味を持っている。


 東門から行ける正規ルートの《オーリエ地区》には一番最初の《始まり街道》を始め、このゲームの最終目的地である《アベレスト・ノーツ》などがある。一つ一つの領域は狭いが――狭いとはいっても、一つ一つの領域はリアル換算で直径15㎞はあるらしい――その中には多種多彩なモンスターや自然のギミックなどが複数存在しており、ひとえに攻略できないように工夫が施されている。その一つ一つに製作者の本気が窺える。


 今回、その中の一つである《始まり街道》にて銀狼に痛手を負わされた俺たちは一旦ログアウトし、勇気の家にて話し合いをすることに。そこでは今回の領域で起こったことと、そしてこれからのプレイ方針について取り決めた。


 初心者向けの領域のはずなのに何故あのような強力なモンスターが出たのか――俺はまず、それを勇気に聞いた。


 勇気が言うには、このゲームでは隣の領域で出現するモンスターがバグか仕様かで稀にその領域で出現するという。隣の領域のモンスターが出てくることは滅多に無いはずなのだが、俺らは運悪くその“滅多に”出てくることの無い《シルベンフルフ》にエンカウントしてしまったらしい。


 領域では上級者向けであろうが初心者向けであろうが、絶対に油断してはならない。これがこのゲームの掟のようなものである。勇気も直前まで忘れていたそうだ。


 そしてもう一つ話し合ったことがある。勇気のソロプレイ提案である。


 レベル・スキルも含めてある程度の安全マージンを取っていないと、イレギュラーが発生した場合、迅速な対応が出来ないことが今回の《シルベンウルフ》でわかった。それを考慮して今日から約三週間、パーティでのプレイをやめることになった。詰まる所のソロプレイというヤツである。


 パーティでのプレイをやめることで発生するメリットは約三つ。


 一つは経験値稼ぎ。これにおいてソロに勝るものは無い。パーティではソロと比べて貰える経験値の量が少ないのに対し、ソロではパーティと比べて圧倒的に多くの経験値が入手できる。


 もう一つはスキル熟練度の向上。やはり一人で戦う分、スキルの使用数がパーティと違って必然的に増える。なのでソロを行えば攻撃の幅を広げるバトルスキルは勿論、回避に必要な補助スキルでも多くの上達が見られるだろう。魔法も然り、だ。


 そして最後に――まぁ、これは感覚的なものなのだが――ソロでの戦闘を重ねていくことによって、このゲームそのものに早く慣れることが出来る。勇気みたいなβテスターがどういったことをしてきたかは知らないが、俺みたいな初心者ニュービーがこのゲームにおいて戦闘のコツを掴むには、まずより多くの戦闘を経験することが一番手っ取り早いだろう。これはゲームに限らず、どんなことにも言えることだ。


 他にも何かあるかもしれないが、とにかくこの三つがソロプレイにおいてのメリットである。


 俺は最初、パーティプレイの解消に反対だった。まだまだ勇気に聞きたいこともあったし、モンスターの魔法による遠隔攻撃もあるのではないかと危惧した。それでは捌ききれずにゲームオーバーになってしまうだろうし、そうなったらメリットよりもデメリットのほうが先行する。俺はそれを恐れたのだ。凛も俺の意見に賛同してくれた――まぁ恐らく、勇気としばらく離れるのが嫌だったと思われるが。


 しかし、理由を聞いてみれば納得するのは早いもので、俺がOKを出すまでそこまで時間はかからなかった。


 序盤では魔法を放ってくる敵そのものが居らず、戦闘もそこまで厳しいものにならないんだとか。それならソロでやってもそこまで危険な戦闘になることにはならないだろう。


 俺は勇気の意見に乗ることにした。質問も現実で聞けばいいことだし、凛からも渋々ながら了承した。


 こうして話し合いは無事終了し、俺たちはそれぞれのプレイをしていくことになったのだが――


「――ん? 何だお前ら?」


 ソロを始めて一週間と少し、大分経験も積んでモンスターへの対処も手際よくできるようになった頃。俺は四、五人のパーティプレイヤーに囲まれた。


 それは俺があるものを手に入れ、そしてオルオンに帰ろうとしているときに起こった出来事だった。


 俺は先程、《ワイズピジョン》というこの《始まり街道》でも出現率がかなり低いレアモンスターに出会った。レアなだけにレベルもそこそこ高く設定されている。


 俺は数十分かけて《ワイズピジョン》を狩り、そのドロップアイテムである《白羽のペンダント》を手に入れた。装備すると敵から貰える経験値の量が1.5倍になるという、序盤ではなんともありがたいアクセサリーだったので、俺は上機嫌でオルオンに帰ろうとしていた。それなのに――


「よう兄ちゃん。今、白鳩と戦ってたよなぁ?」


 パーティのリーダーと思しき男がこちらに近づいてくる。背は俺より二回りほどは高いだろうか――少し見上げるような形になってしまった。


「あ、あぁ。そうだが……」


 リーダー格の迫力に少々気圧されながらも俺は言う。


 男たちの装備はそれなりに整っており、俺の直刀より少しばかり格上だろうと思われる長剣ロングソードを背中に差していた。


 彼らが言う白鳩とはこの場合、《ワイズピジョン》を指しているはずだ。略称で呼んでいるということは、コイツらはきっとβテスターだろう。しかし、この様子は何やらおかしい。


「てことはよぉ、もしかして何かレアな装備をドロップしていたりしてなぁ? だとしたら嬉しいねぇ……お前ら!」


 男が声を張り上げると、他のプレイヤーたちが一斉に武器を引き抜いた。勇気もそうだったが、βテスト上がりの連中はみな剣の構え方がサマになっている。それだけで今までどれだけ戦闘を積んできたかがよくわかる。しかも全員が同じペンダントをつけており、目を凝らしてよく見るとそこには真っ青に染め上げられた髑髏のマークが。


「……聞いたことあるぞ。お前ら、確か《ブルー亡霊ファントム》とかいうPK集団だな?」


 《ブルーファントム》。ここ数日ネットでも話題になってきた案外有名なPK集団だ。ヤツらは集団でプレイヤーたちを襲い、奪い取った装備やアイテムで普通のプレイヤーたちより良い装備を手に入れているともっぱらの噂であった。


 そんなヤツらがこんな場所にいるなんて、想像もつかなかった。


「結成からそんなに日が経ってないのに、よく知ってるなぁ」


 男は少し嬉しそうに、左手に持った剣を地面に突き立てた。左利きか――


 コイツ、その喜び方からして名のあるプレイヤーになれたとでも思っているのだろうか。俺から見れば人から物を奪うという最低行為を行っている連中にしか見えないのだが。


 しかし残念ながらもこの状況では逃げ切ることはほぼ不可能だろう。五人に囲まれた段階で、俺の心の中に戦うという選択肢は無い。それは無謀というものだ。ここは悔しいがなんとか隙を付き、逃げることに専念しよう。瞬時に考えた作戦で手を打つ。


「ああ、よく知ってるぜ。リーダーは集団でしかプレイヤーに向かってこない、臆病腐れビーターだってな」


 俺の一言にピクリと身体を震わせたリーダー格の男。これは幾分か賭けも含まれている。反応を見ている限り手応えはあったが、予想通りの反応が返ってこなければ俺はコイツらに為す術も無くやられてしまうだろう。


 男は引きつった笑みを浮かべながら、震える左手でウィンドウを操作する。どうやら、賭けは上手くいったようだ。


「そうかそうかぁ……それなら、1VS1サシ決闘デュエルでもしてみるか!? あぁん!?」


 男が声を上げて俺を威嚇する。と、同時に俺の目の前に薄緑色のメッセージウィンドウが出現した。


≪シャーロ から決闘が申し込まれました。許可しますか?≫


 俺の予想としていた通り、決闘を申し込まれた。


 集団で向かってこられるより、一人一人を相手取って戦闘したほうが遥かに危険度は低い。俺の狙い通り、頭に血が上ったこのシャーロという男はよく考えもせず決闘システムを使用した。


 臆病、と言われれば誰でも否定したくなるはず。しかもそれがリーダー格である自分に対して言われたとあっては、その自尊心もとりわけ傷つけられるだろう。自分は臆病ではないんだということを知らしめる為には、この決闘のシステムを使うのが一番だろうと一般のプレイヤーは考える。


 例に漏れず、シャーロもそういう類のプレイヤーだったということだ。


「やってやるよ」


 俺は静かにそう答え、メッセージの少し下にあるYESのボタンを押した。


 すると押してすぐにガイドによる説明が始まった。ルールは《死闘デスマッチ》、どちらかの体力がゼロになるまで戦い続けるという普通の決闘でもあまり使われない仕様のものだ。


 デスマッチというルールは負けた相手に装備全損と自アイテムの散乱――装備の耐久値がゼロになって壊れること(要修理)とフィールド上に自分の持っていたアイテムが散らばること――が課せられる。ようするに、ゲームオーバーと同義である。


 そんなものを選んでくるのだから、シャーロはかなり本気で俺のことを仕留めたいようだ。


「お前らぁ! コイツに、絶対手ぇ出すんじゃねぞ。俺の獲物だからな……!」


 仲間たちにそう忠告し、鋭い眼光を放ちながら此方を睨み付けるシャーロ。上唇を舌で濡らし、今にも飛び掛ってきそうな勢いで地面に刺さっていた剣を引き抜いた。刀身がギラリと鈍く光る。


≪戦闘前に意思の確認として、お互いのネーム・エイン・クオリティを宣言してください≫


 ここでまたもやメッセージが入った。これは、最終確認みたいなものだろう。ここまで来たら引くわけにはいかない。


 シャーロが声を張り上げ、宣言する。


「《カーキ・ダイヤモンド》のシャーロ! 覚悟しとけよ、クソガキ!」


 その声には俺への殺意が込められており、近づくものを畏怖させる独特な雰囲気を発していた。


 俺はシャーロの宣言に倣い、その殺気に負けじと大声を出す。


「《ビリジアン・メテオ》のリュウ! ……負ける気はサラサラないからな!」


 一連のやり取りが終了し、


 《意思の確認が終わりました。それでは戦闘に入ります――》


 ウィンドウがそう告げた。横には10カウント式のタイマーがセットされていた。


 俺は自分の直刀を腰の鞘から抜き出し、戦闘体勢に入る。


 俺とシャーロの武器を比較してみると、やはりヤツの武器のほうが数段いいものを装備しているのがわかる。両手用の長剣なので、片手用の俺の直刀とは企画が違う。リーチも俺の武器より少しばかり大きい。これでは総合的な面で俺が不利になるのは明らかだ。


 しかし勝算がないわけではない。すごすごと負けてアイテムを渡す気など、俺には全くないからな。この勝負、絶対に勝ってみせる。


 そして、俺の決意と同時にカウントはゼロとなった。


 《戦闘開始》


 目の前に現れたメッセージウィンドウを合図に、俺とシャーロは地面を力強く蹴りだした。

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