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導入~4~

ゲーム、最近やってないですね……どんなゲームが面白いのかがわからなくなっているようです、どうやら。


一度は大人買いもしてみたいなぁ。


誤字脱字、その他感想や「ここをこうした方がいいんじゃない?」などの意見がありましたらよろしくお願いします。客観的な人の目が今欲しいので。

 数日経ち、勇気から連絡が入った。今日両親の友人が来て、PDを貰ったそうだ。俺もその報せを聞き、すぐに向かうと返答した。勇気は俺の来訪を心待ちにしていたのか、玄関から出てくるなり一も二もなく、俺を部屋まで引っ張っていった。


 部屋に着いてから少し落ち着きがない勇気に、俺は昨日の夜にやっていたスパイ映画のように尋ねた。


「で――例のブツは?」


 こんな茶番に付き合ってくれるかどうか不安だったが、勇気は状況を理解したのかニヤリと笑い、声色を変えて話し始めた。


「勿論ですぜ、旦那ぁ。そこにありまっせぇ……」


 どうやら勇気も昨日の映画を見ていたようで、武器屋の店主と寸分違わぬ台詞を吐き、机の上を指差した。

 机の上には、長方形のパッケージとヘルメットの姿が。


「おお、これが……」


「そうだ。俺が何としてでも手に入れたかった――《フィシス・ドミネーション》だ!」


 俺はパッケージを手に取り、神妙な面持ちで七つの鉱石、いや、宝石か――が埋め込まれたリングのロゴマークを眺めた。


 これが俺が初めて経験するVRMMO。そう思うと、どこか形容しがたい感覚に身体中が支配される。勇気も同じ気持ちなのか、同じようにパッケージを見て恍惚とした表情を浮かべた。しかしすぐに現実に戻ってきたのか、パッケージを持って俺の元までやってきた。


「さて……早速やるか」


 落ち着いたような声だったが、その目は興奮を隠しきれていない。どこか力が篭っている。


「……そうだな。目の前にあるのに、頬擦りしてるだけじゃ勿体無い。さっさとやるか」


 俺は包みを剥がし、パッケージからソフトを出す。そして机の上にある俺の《クオリア》を持ち、ソフトを挿入するために上部に取り付けられている挿入口を開いて入れた。すぐに稼動音が鳴り始め、さっきまで静かだった部屋が少しだけ騒がしくなった。


「そういや、ユーザー登録は済ませたのか?」


 ヘルメットを被りながら勇気が聞いた。少し頭のサイズが合わないのか、中でゴツゴツと当たる音がする。しかしそうなっていても構造上に問題は無らしく、しっかりと脳波を受け取れるんだとか。俺も同じようにヘルメットを被り、くぐもった声で返す。


「それなら問題ないぞ。凛に借りて、既に済ませてあるからな」


 勇気は納得したようで、なるほど、といってクッションを置いた床の上に横になった。長時間その格好でやるのか、と問うと、いつものことだ、と受け答えた。俺は身体が痛くなりそうだったので、勇気のベッドを借りることに。そして顎の下にハーネスの紐を通して、《クオリア》をしっかりと固定した。


 ちなみに、今日が発売日なので凛も朝早くからお店に並びに行っている。こうして成り行き任せで手に入れてしまってとても申し訳がないのだが、凛より先にプレイさせて頂こう。しばらくしたら凛も連絡を入れるといっていたので、プレイをしながらそのときを待とう。


「さて……クオリア・オープン!」


 勇気が先に《クオリア》との同期をはじめる。俺も沸き立つような嬉しさを抑えながら、すぐさま先に飛び込んでいった勇気の後を追う。


「クオリア・オープン!」


 瞼の裏に張り付いていた宇宙が、一瞬のうちにして暗黒に変わる。瞼を閉じているときとは違った、本当の暗闇が俺の視界を支配した。


 しかし、そんな暗黒もすぐに終わる。一筋の光が俺の顔に当たったかと思うと、それと同種の光がすぐに全身を包み込み始めた。俺を包んだ光は形を変えながら不安定に飛び回り、眼前に焦点を合わせると、俺が今装着しているヘルメットの頂点と同じ正五角形のマーク―――つまり、《クオリア》のロゴマークに変化していった。ぼやけて見えていたマークは段々と鮮明に浮き上がり、俺の脳とのリンクが成功した証として、鮮烈な音と色を残して盛大に破裂した。


 最初の段階で視覚野と聴覚野の接続が完了した。次に体表面の感覚を調整し、先ほどまでのベッドと毛布を消す。他の感覚野ともすぐに接続が終わり、身体全身が先ほどまでとは違った無機質な感覚に支配される。まだ何も脳に送り込んでいないので、このような感覚になるんだとか。この時間が、とてもむず痒い。


 全ての感覚と《クオリア》の同期が完了し、表示されたSTARTの文字と同時に、視界が眩いばかりの光に包まれた。


「うわっ……!」


 急なフラッシュに思わず目を細める。二・三度視界が明滅した後、ゆっくりと目を開けてみるとそこには――どこかレトロな雰囲気を感じさせる、バーのような風景が。


「うぇっと……ここは……?」


 どこかで見たことのある、雑多な雰囲気。勇気の姿は見当たらない。

 ここは、小さい頃一度だけ両親に連れて行って貰った海外の、ヨーロッパのバーの雰囲気に似ている。どことなく陽気な、それでいて趣のある内装だ。中をグルッと見回すと、クラシックな様式を醸し出しているカウンターの中に、見知らぬ女の人の姿があった。


 その女の人が不意にニカッっと笑ったかと思うと、


「――ようこそ! 《フィシス・ドミネーション》へ!」


 辺りを響かすような大音量で挨拶をしてきた。思わず両耳を手でふさぐ。


「新規プレイヤーの方ですね? では、どうぞこちらへ!」


 女の人――もとい、受付のお姉さんはこちらに手招きをしてきた。恐らく、アカウントの登録手続きか何かをさせるのだろう。カウンターの台の裏から何か腕輪のようなももを取り出し、俺の目の前へと突き出した。


「さぁ、こちらを腕にはめて、必要事項を入力してください!」


 俺はそのお姉さんの笑顔に何かプレッシャーのようなものを感じ、おずおずと手を出してその腕輪を受け取った。リストバンドのようなものかと思っていたのだが、ガチガチの金属で、しかも一度付けると絶対に外れない仕様になっていた。付けた後は手を抜こうとしても、回しても、引っ張っても、ウンともスンともいわなかった。


 そして、腕輪の中心にあるプレートの真ん中には何故か不自然に大穴が開いており――まるで、何かを嵌める場所かのように大きく口を開けていた。


「それでは、今からネームと容姿を決めてもらいます! 入力よろしくお願いします!」


 俺がそのアナに疑問を持っていると、お姉さんは右手を操作し、俺の腹より少し下の所にホログラムキーボードを出現させた。俺は驚きのあまり目を丸くする。

 《クオリア》は脳に直接作用する所為で、感じるものは本物と同等、その再現度は現実以上と言われるほどだ。驚くのも無理は無いだろう。


 俺は出現したホロキーボードに自身の名前から文字って《RYU》と入力し、これだと某ゲームの格闘家みたいだということに気がついた。少し考えてから、名前をカタカナの《リュウ》にに変え、容姿の選択に移った。


 容姿は自身の姿をそのまま映し出すコピーと、自身で設定して作り出していくアバターという二つのものがあった。途中での変更は可能だと聞き、俺は入力の必要が一切ないコピーを選択した。そうすると少しの間俺の身体が光に包まれ、初期装備に姿を変えたのだった。


 初期装備は特に飾りつけもされていない、深緑色のコート。しかしサイズは俺に合わせて計算されているようで、ダボダボせず、それでいてきつくもない。とても着心地がよかった。


「それでは次に、質問を幾つかさせていただきます。よろしいですか?」


 すると、画面にYES/NOの選択肢が出現し、俺の意思の確認をした。これにNOで答えたらどうなるんだろう、と考えてNOに指が動きかけるが、もしそれで取り返しのつかないことになったらどうしようと思い、結局YESのコマンドを押すことになった。


 YESを選択するとまたもや腹より低い位置にキーボードが出現し、目の前には数十個の質問が表示された。どんな質問があるのかと視線を巡らせてみると、比較的ジャンルを問わないような、本当に様々な質問がそこにはあった。テキパキと入力を済ませ、最後の質問へと移る。


 《Q:この世界で、どのように生きていきたいですか?》


 他の質問とは違い、これだけ記述形式だった。恐らく仕様なのだろう。俺は何度か質問を見返し、すぐさま記入しようとして、考え込んだ。


 成り行きでこのゲームをやることになったというのに、生きていくとか、そんなヘビーなことすぐに浮かんでくるわけがない。勇気だったら、プレイヤーの頂点に立ちたいとかそんなのだろうが、俺はそういった目的が全くない。


 もうしばらく考えてみる。適当に入力してしまってもいいが、それではなんだかこの質問自体を否定してしまっているような気がする。俺は考え抜いた挙句、こう入力することにした。


 《A:未定》


「よし……」


 結果的に決まっていないものを入力するなど、俺には無理な話だった。キーボードを操作し、決定ボタンを押す。最後の問いのために認証されないのではと思ったが、それも杞憂に終わり、無事にウィンドウを閉じることができた。


 どうやら決定を押すとお姉さんのほうに情報が送られるようで、ニッコリとした表情を浮かべた後、カウンターの奥に引っ込んでいった。そしてすぐさま帰ってきたかと思うと、両手に少し大きな機械を抱えて持ってきた。そしてカウンターの上に置き、ここに手を置いてください、とゆっくりとした口調で呼び掛けた。


「な、なにこれ?」


「質問の結果を示すための機械です。これで貴方のタイプが決まります。さぁ、手を置いてください!」


 その機械はどこか、医療機関に置かれている血圧を測るものに似ていた。俺は怪しみながらも、お姉さんに促され、それと同じように手を入れ置いた。すると不意にガチン、と音がして、腕輪の部分が何かで固定された。


「へ? な、なにこれ!?」


「すぐに終わりますからね~……はいっと」


 お姉さんは機械の側面に付いているボタンを色々押した後、キーボードを出現させ入力した俺のデータを機械に転送し始めた。何が起こるのかと眺めていると、不意に手首に近い辺りから強い熱気を感じた。あまりの熱さに手を引っ込めようとするが、しっかりと固定された手首の所為で外すことができない。痛みに耐え、やっと固定された手首が外されると、先ほどまで物足りなかった腕輪のプレート部分に、鉱石が埋め込まれていた。


「こ、これは……?」


「その腕輪に埋め込まれた石はプレイヤーのタイプを表しています! 貴方のタイプは《メテオライト》ですね!」


 どうやら質問によって変わるタイプとはこの事らしい。他にどんなタイプがあるのか気にもなったが、後で勇気にでも聞けばわかるだろうと思い、口にしかけた言葉を喉の奥で止めた。


「《メテオライト》か……」


 俺はじっくりと自分の腕輪を見つめた。少し傾けてみると、どことなく優しいような、それでいて暗いような、幻想的な輝きを放ち、俺に星空の瞬きを連想させた。黒色のようにも見えるが、光に当てるとそれは天鵞絨びろうどのように輝き、俺に不思議な感情を抱かせた。痛みもいつの間にか引いている。


「それでは、これでアカウントの登録手続きは終了です! ありがとうございました!」


 お姉さんは深くお辞儀をした後、もう一度俺のことを見てこう言った。


「貴方の武運長久をお祈りしています! それでは大いなる《リバルダイト》の地へ!」


 声と同時に俺の身体を白い光が包み込んだ。と思った瞬間、視界がホワイトアウトした。不意に身体を謎の浮遊感が襲い、身体が様々な方向へと反転する。これが転送というやつなのだろう。とてつもない浮遊感が俺の身体をしばらく支配した。そして、身体に重力が戻ってきた所で、ホワイトアウトした視界は色を取り戻し、広がった世界に俺は目を疑った。


 西洋建築風な建物がずらりと並ぶ、石畳の世界。頭上に降り注ぐ、太陽の熱気。どこからか聞こえてくる陽気な音楽。鼻腔をくすぐる柑橘系の果物の匂い。そしてそれらを全て掻き消すような、大勢の、人、人、人。転送されてすぐでもわかる、ここが始まりの地――


「ここが、大都市オルオン……!」


 俺は目に飛び込んできた光景に、震え、興奮し、歓喜に顔を綻ばせた。

これで導入部は終わりです。


ここからまた作成していくので、時間がかかります。どうかご了承ください。

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