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導入~2~

ここは主人公の家族を説明したくて入れました。短いな……もうちょい長く出来なかったものか。


誤字脱字、その他感想や「ここの表現おかしいんじゃないの?」などの意見がありましたらよろしくお願いします。

 家までの帰り道、俺は走り去って行った勇気のことをどこか心の中でないがしろにしていた。今まであまりゲームをやって、これといった感情がわかなかったからだろうか。どうせ俺のことを満足させられるはずは無い、たかがゲームだ、と奥底でタカをくくっていたのだろう。


 あの世界に足を踏み入れるまでは――


「……ただいまー」


「あ、リュウ兄。お帰りー」


「おう。ただいま、宗眞そうま


 勇気に置いていかれた俺は、トボトボ歩いて帰宅をした。家に着くと二つ下の弟の宗眞に、二階、階段奥から声をかけられる。俺はまず靴を脱ぎ、そのまま靴箱に突っ込む。そして靴下を脱ぎながら廊下を歩いてリビングに向かおうとすると、宗眞が二階の階段からドスドスと降りてきた。


「リュウ兄ー、帰ってきてすぐで悪いんだけどさー。ご飯作ってくれない? お腹が空いて死んじゃうよ」


 俺の家では両親は揃いも揃って海外赴任しているので、家事全般は俺がやることになっている。普通は子供だけに家を守らせるというのもどうかと思うが、親の言い分は「リュウが一人いればなんとかなるでしょー」……だそうだ。


 確かにそつなくこなすことできるけど、それでも子供だけを家に残しておく理由にはならないと思う。母方の祖母がたまに来て面倒見てくれるのが唯一の救いだ。


「飯だな、わかった。ところで……りんは?」


 俺には弟の宗眞ともう一人、妹がいる。凛は宗眞と双子で、先に生まれてきたので事実上の姉扱いだ。最近どうやらあるものにハマっているらしいが……


「えっと、なんか部屋でゴソゴソやってたよ」


「またか……どうせまた《クオリア》だろ? さっさと呼んで来い。すぐ出来るものにするから」


 《クオリア》とは最近発売されたVRのハードである。何でも前作のモノとは違い、ロード時間が圧倒的に早くなるのだとか。テレビでの会見を一回だけ見たことがあるが、脳に伝わる信号を早くすることに成功したようで、科学的にも大きな躍進をしたそうだ。ちなみに、もっとゲーム以外のことに活かせよ、と考えたのは俺だけじゃないはずだ。


「えぇーっ? 姉ちゃん、《クオリア》から無理やり起こそうとすると、物凄く機嫌悪くなるんだよ? それを俺にやれって言うの? リュウ兄も鬼だね……」


「文句言うと、飯抜きにすんぞ」


「……はいはーい」


 ブツブツ愚痴る弟の背中を押し、二階に上がらせる。


 凛は最近、家に帰ってからずっとVRだ。兄としては部活にでも入って青春の汗でも流して欲しいのだが、流しているのは頭の中に流れる特殊な電流だけだ。身体に悪影響が無いのかと心配にはなるが、開発側は事故は絶対に起こらないと言い張っている。本当だろうか。


 といっても、俺が勇気から貰うハードも恐らく《クオリア》なんだろうが。


「ま、さっさとなんか作るか」


 俺は脱いだ靴下を洗濯籠に投げ込み、その足でキッチンへと向かう。親から送られてくるお金で生活しているため、あまり無駄遣いはできないが、飯には困らないように一応しっかりと買い置きがしてある。

 今日は適当にありあわせのもので作るか、と自分の中で決めてキャベツなどの野菜を取り出す。


 飯の支度をしてから数分。二人が二階から降りてきた。


「もー。良い所だったのにー……」


 凛は愚痴を言いながらフラフラと一階のリビングに降りてきた。やはり、またVRをやっていたんだろう。肩を回してストレッチの真似事のようなことをしている。俺も勇気から譲ってもらったときは、こんな風になってしまうのだろうか。用心が必要だ。


「呼んで来たよー」


「おう、ありがと」


 丁度、料理も出来上がりかけていた。野菜室にあった野菜を適当にぶち込んで炒めた野菜炒めだ。味付けは塩と胡椒を適当にかけただけのシンプルなもの。それと、調理と同時に温めておいたコンソメスープだ。材料が単調なものばかりなので、文句を言われないか心配な所である。


「さて、冷めないうちに食うぞー」


 宗眞が、待ってました、と言わんばかりに野菜炒めに視線を注ぐ。宗眞は部活動に入って運動をしているわけではないが、育ち盛りなのかその食べる量は俺や凛の倍以上はある。その割には全然太らないし、ある意味とてもうらやましい体質だ。


「宗眞、いちいち五月蝿いわよ」


 嬉しがる宗眞に対して、冷ややかな視線を送る凛。きっとまだ《クオリア》を中断されたことを根に持っているのだろう。


「いいじゃん別に。お腹空いてんだしさー」


「お腹空いてたら普通騒がないでしょ……バカみたい」


「何だって?」


 段々と語勢が強くなる。このまま続けばきっと、喧嘩になることは間違いないだろう。本能的にそう思った俺はどうしたら止められるかを考え、声を大にして言い放つ。


「ほら、二人とも! ……喧嘩すんな。さっさと食うぞ」


 俺はそんな二人を食い止めるため、食事の開始を催促する。どうやら効果はあったようで、二人とも互いに顔を見合わせてから俺の方を向いて反省の顔色を見せた。


「「……はーい」」


 二人の闘志が燃え上がる前に早めに仲裁に入る。こうして早めに注意しないと、後々手をつけられなくなるのだ。例えば、家の中のものが色々と散らばったり、壊れたりと様々に。本当に仲が悪いわけではないのだが……よくわからないものだ。


「それじゃ、頂きます」


「いっただっきまーす」


「……頂きます」


 それぞれが頂きますをし、真条家の食卓が始まった。

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