オリオン座-1
わりと適当にさらりと書くので変なはなしになりそうです←
このホットケーキみたいなふうわふわした人生は送れないものかな、とひーくんがぶつぶつ言いながらそれにシロップをばんばかかけるものだから、わたしは慌てて取り上げて、ついでに無理だよ、と教えてあげた。世の中そんなにみくびっちゃいかんよ君。
え、じゃあ雲なら? まるで何も分かっていない調子で彼はもう一度訊く。いやいやそういう問題じゃないって、と手の代わりにシロップの容器を振って答えたけど、わたしのホットケーキに落ちてきたのは糸を引く二、三滴だけだった。恨めしい思いでホットケーキから垂れるほどたっぷりのシロップがかかったひーくんのお皿を見つめる。気付かないふりなのかそれとも本当に気付いていないのか、彼はそうかあ、無理かあ、と間延びした調子で言い、それからその延長線みたいにあまりにもさらりと付け加えた。あのさ、おれ、死ぬことにした。
え、待って、今なんて。思わず顔を上げて聞き返した。さっきと同じ口調で、彼は繰り返す。おれね、死ぬことにしたの。彼の顔に射す光の筋が、ゆらゆらと揺れる。どうやら冗談ではないらしい。
え、待ってなんでどうして、何かの病気? ううん、と彼は軽い調子で首を振った。じゃあ何なんで。いや、歩がホットケーキ人生は無理だっつうから。何それそれだけ? ていうかわたしのせいなわけ? 呆れて問うと、今度は不貞腐れたように頷く。惰性で生きてたってさ、意味ないよ。諭すように説くように言った。古びた人間は新しい人間に場所を譲るべきなんだって。
ひーくんは自分が古びた人間だと思うわけ? からかう調子でわたしは訊いた。さっきまでの恐れとか不安みたいなものはすっかり消え去って、代わりに今はばかばかしいって思いがわたしの身体を占領している。彼がまた誰かさんの偉人伝みたいなものに感化されているのはどう考えても明らかだったし、だいたい今までだって何度もジャングルに住むだとか仕事を辞めるだとか騒ぐだけ騒いで翌日にはけろりと忘れているのだ。今回だって、今はほら、あんなに深刻に眉を寄せて頷いているけど、明日にはすっかり忘れているに違いない。わたしは真面目に彼の相手をするのを止めて、シロップを精一杯引き延ばして塗ったホットケーキを食べ始めた。
ところが。




