厳しいスタート
朝、東京の冷たい空気に包まれながら、わしはレッスン室の前で深呼吸した。
「よし……今日も全力でやるけぇな」
ドアを開けると、昨日とは違う厳しい空気が漂っとった。
先輩たちは黙々とウォーミングアップをしていて、話しかける余裕なんてなさそうじゃ。
「……す、すごい緊張する……」
小さく呟きながらも、わしはその輪に入るしかない。
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最初のダンスレッスンが始まると、振り付けの速さに思わず戸惑う。
「うわ……島根とは全然違う……!」
手足が思うように動かんし、音も少しズレてしまう。
葵レナがすぐ隣で、冷たい目でわしを見とる。
「桜庭さん、遅れてるわよ」
言い方にムッとしそうになるけど、わしはグッと堪える。
「……よし、次こそ完璧にする!」
心の中で拳を握り、もう一度振り付けを頭に叩き込む。
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休憩時間、同期の橘美月が近づいてきた。
「桜庭さん、まだ島根気分抜けてないんじゃない?」
わしはムッとするが、口には出さん。
「……東京じゃ、全力出すだけじゃけぇ」
美月の挑発的な笑みに、心が少し熱くなる。
「負けんけぇな……!」
午後のボーカルレッスンでは、音程が外れて先輩に注意される。
「桜庭!声の出し方が甘い!」
わしは汗だくになりながら、心の中で叫ぶ。
「……悔しい……でも、負けん!」
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夜、寮に戻ったわしは鏡の前でひとり振り返る。
今日の失敗、先輩たちの厳しさ、ライバル美月の挑発――
全てがわしを成長させる糧になると信じたい。
「東京、甘くない……でも、わし、負けん」
島根で培った根性と熱い気持ちを胸に、わしは明日のレッスンに備えて眠る。
こうして、凛の東京研究生生活は、本格的な試練の幕を開けたんじゃ。




