スタートからの衝突
翌日、わしは早く目が覚めた。
東京の朝は、島根とは違う匂いと音でいっぱいじゃ。
通学ラッシュの電車に揺られながら、わしの心臓はバクバク。
「……よし、今日も全力でやるけぇな」
研究生専用のレッスン室に着くと、昨日よりも多くの先輩たちがいた。
「桜庭さん、昨日は少し遅れ気味だったわね」
葵レナが冷たい目でそう言う。
「……す、すんません!」
わしは頭を下げながらも、胸の中では熱い火が燃えとる。
「わし、絶対負けんけぇな……!」
ダンスレッスンが始まると、振り付けの速さと正確さに圧倒される。
何度も間違えて、汗だくになりながらも必死で食らいつく。
「うわ……まだまだじゃ……!」
そんなとき、ライバルの研究生橘美月が声をかけてきた。
「桜庭さん、地方出身なんだから、もっと練習せんとね」
わしは少しムッとしながらも、言い返す気力はない。
「……はい……頑張ります」
休憩時間、芦田先生が近づいてきた。
「桜庭、まだまだ甘い。だが根性は見えた。そこを伸ばすんじゃ」
わしはその言葉に少し救われ、また拳を握る。
午後のボーカルレッスンでは、音程を外してしまい、また先輩たちに注意される。
「桜庭さん、声の出し方が甘い!」
「す、すんません……!」
心の中で叫ぶ。
「……わし、島根でバイク乗っとるだけじゃダメじゃったんか……!」
でも、悔しい気持ちがわしを前に進ませる。
鏡に映る自分を見て、深呼吸。
「負けんけぇ……絶対、LUNAのステージに立つんじゃ!」
その夜、寮のベッドで汗を拭きながら、わしは思った。
「東京、甘くねぇ……でも、面白い。わし、もっと強くなるけぇな」
島根での仲間や里奈の顔を思い浮かべ、わしは再び決意を固める。
「よし……明日も、全力じゃ!」
こうして、わしの研究生生活はトラブルと衝突の連続で幕を開けたんじゃ。




