合格からの挑戦
東京で迎えた翌日、わしはドキドキしながらLUNA事務所に向かった。
オーディションの結果が気になって仕方ない。
「桜庭凛さん、合格です」
芦田先生の言葉に、わしの胸はドーンと高鳴った。
「やった……わし、やったんじゃ!」
でも、喜んでる暇はなかった。
今日から早速、研究生としてのレッスンが始まるんじゃ。
⸻
レッスン室に入ると、すでに先輩たちが勢揃いしとった。
「桜庭さん、今日からよろしくね」
笑顔の結城かいりが軽く手を振る。
でも、その横には冷たい視線を放つ葵レナの姿も。
「……地方出身か。ダンス大丈夫なん?」
その言葉に、わしの心はギクッとする。
「大丈夫じゃけぇ、見とれよ!」
最初のウォーミングアップから、わしは汗だく。
ダンスのステップも歌も、東京レベルの速さと精密さに圧倒される。
「うわ……全然ついていけん……」
でも、わしは逃げん。
そして、トラブルが起きた。
振り付けの確認中、わしが少し間違えた瞬間、隣の先輩佐伯れいながピシャリと声をあげる。
「桜庭さん、何回言わせるんですか!ちゃんと覚えて!」
その言い方に、他の同期たちもチラチラわしを見る。
わし、思わず反発しそうになった。
「うるさいわ!わし、今やっとるんじゃけぇ!」
でも芦田先生の鋭い視線が飛んできた。
「桜庭!その態度は何じゃ!」
わしは一瞬、心臓が止まるかと思った。
「……す、すんません!」
声を震わせながらも、全力で踊り続けるしかなかった。
レッスン後、汗だくで床に座り込みながら、心の中で呟く。
「……東京、甘くねぇ……でも、逃げんけぇな」
島根のバイク仲間や里奈の顔が浮かぶ。
「わし、絶対やり遂げるけぇ……!」
トラブルで心が折れそうになった瞬間、ほんの少しだけ希望も見えたんじゃ。
「……この壁を越えたら、わし、もっと強くなれるはず」
そう思いながら、わしは深く息を吸い込んだ。
汗と悔しさでびしょ濡れの衣装を握りしめ、次のレッスンに備える。
東京での本格的な戦いは、まだ始まったばかりなんじゃ。




