ハブ酒85
向こうにいるリディさんは、側にいるリディさんとは違うと思いつつも、
「あっちに行くッス!!!!」
向こうのリディさんも、信じてしまう。
「ミ…ミィオ!!!!待て!!!!」
何かに呼ばれるかのように、走り出すミィオを呼び留めようと、リディが声を掛けるが、ミィオの足は止まらない。
「とりあえず追いましょう!!」
そんなミィオに対して、美優は止めるのではなく、一緒に付いて行こうと追い掛け、
「そうね」
「はぐれたら危険です」
リナとツバメも行ってしまう。
「……仕方無い」
こんな所ではぐれたら危険なのは、その通りで、リディも後を追う。
ミィオを筆頭にして、ドラゴンもどきと鉢合わせないように、みんなで路地裏をクネクネと進んでいると、
「そっか!!あそこに行こうとしてるんだねミィオ!!」
「あそこ?あそこスか?」
「こんな時にとぼけなくても……っていうより、リディさんだっているんだよ」
どこに向かっているのかと気付いたリナが、ミィオと並走して走り出す。
「リナは、この先に何があるのか分かるんすか?」
「そっか……あたし黙ってたもんね……この間の件で、あたしも知ってるの」
「そっ…そうなんスか……」
もう一人の、幻影のリディさんを追い掛けているだけのミィオにとって、リナの言っている場所がどこなのか分かるはずも無く、曖昧な返事で言葉を交わしていると、
「あそこ!!」
「あそこ?」
リナが唐突に、建築中の建物を指差す。
そこが一体なんなのかという話だが、幻覚であるリディさんが入り口で手招きしている。
「リディさん良いですよね‼!?緊急事態ですから!!!!」
「えっ?あっ…あぁ……良いんじゃないか?」
なんでこのタイミングで、自分に声を掛けられるのかと戸惑いつつも、年長者だからかと納得して、全員で建築中の建物中に入り込むと、
「なんだここは……」
中の造りを見て、ここが単なる建築中の建物じゃないとリディはすぐに勘付き、
「ここから出るぞ‼」
全員を、この場から離れさせようとするのだが、
「こんな時にまで、そんなこと言っている場合じゃないですよ!!!!」
「こら!!!!」
リナに腕を掴まれると、そのまま壁際に連れて行かれる。
「ここは建築中の場所じゃないんだ!!!!こんな所に居たら攫われても文句を言えないんだぞ!!!!」
ここは自分の管轄外の場所、どこが管理しているか分からない施設。
いくら緊急事態とはいえ、無断で入られるのを毛嫌いする組織はいくらでもいる。
とにかく何でも良いから、この場から離れようとするのだが、
「……ごめんなさい」
「ぐぇ!!!!」
羽交い絞めにされ、そのまま頭を掴まれて壁の方に向けられると、
「ここですよね」
『網膜を確認』
勝手に自分の網膜パターンを機械が読んで、目の前の壁が開くのであった。




