ハブ酒71
戦うという意思、立ち向かう勇気が掻き消された二人は引き下がっていく……残念な話だが、二人は負けたのだ。
ほんの一縷の望みが蒸発した。
戦えば死ぬかもしれないが、もしかしたら勝てるかもしれない……か細くても「勝つ」という選択肢があると思っていたが、
『『『『『何だつまらんではないか!!!!!!!!!!!!ふふふ聡いではないか!!!!!!!!!!!!』』』』』
常闇の向こうの存在は、そんなに甘くなかった。
引き下がった二人は意気消沈しながら、もっとも高い建物の屋上に降り立ち、闇を見上げる。
砕けた空から、ヘドロのようにボタボタと闇が零れ落ちて、鳥かごの中に染みて来る「常闇」は、ビルから漏れる光を浴びても、その光を吸収して、尚も暗い。
地上に零れた常闇が、暗い水溜まりを創りだすとそこだけが、この世の理から消えてしまう。
『……無理だ……こんなのは無理だ……』
原人は、地面に広がる理の外に絶望を覚えるのと同時に、ドラゴンの背中から降りてしまう。
それはもう、戦う事を完全に諦めてしまったという現れ。
建物の屋上から、常闇がどうなるのかと顔を出すと、
『『『『『うむうむ随分と満たされているではないか……良い働きをしたな』』』』』
常闇は、原人の視線を感じ取って褒め称える。
『うっ……』
原人にとって、その褒め称えは嬉しいものでは無かった。
それはまるで、お前の事は分かっているぞと……お前の命は握っているぞと脅されているようで……生きた心地がしない。
『…………』
火内もまた、屋上から首を出して、常闇の成り行きを黙って見ていると、
『『『『『ふふふ……そんなおぼこい目で見られては恥ずかしいわい』』』』』
『あっ…ぅっ……』
自分の事も見られ、子ども扱いされる言葉を投げ掛けられたが、反論も言い返す事も出来ない。
二人で、抵抗出来ずに常闇を見守ってしまっていると、
『『『『『やれやれ……古い体は重くて嫌じゃのぅ……我々も体をリニューアルしたいものだ』』』』』
暗い闇の水溜まりから、常闇がついに姿を現す。
『龍?』
それは鰐のように細長い顔に、大蛇のように鱗がビッシリと刻まれた太く長い首……それは東洋における伝説であり、西洋のドラゴンに匹敵する存在。
『ドラゴン?』
その体は巨象を思わせる体に、鷲のような屈強な手足に、コウモリのような羽……それは西洋における伝説であり、東洋の龍に匹敵する存在。
龍とドラゴンの二体が現れたかというと、そうではない。
常闇の水溜まりから現れたそれは……
『『『『『さてさて……もう少し栄養を補給するとするかの!!!!!!!!!!!!』』』』』
ドラゴンの首の部分が龍で、体がドラゴンという創造物であった。




