ハブ酒6
戦争犯罪をしたとか、他の鳥かごのスパイとかではないから、薬を使われたり拷問を受けたりしなかったが、根掘り葉掘りで、言葉を変えて質問される……それは本人ですら気付いていない事を、引っ張り出すための話術。
予め、こちらで予習をしていたお陰で、何とか切り抜ける事が出来た……
「いけないんだ、ココア飲んだら」
「ツバメさん」
あの時の事を思い出しながら、無意識にココアを口に付けていた。
「今は、水制限をされてる時期でしょ」
「見逃して下さいよ。あれは学生の頃の、お遊びなんですから」
限られた水分だけでどうやって生活するか、地上に降りれば、水を好きなだけ使える環境というのは少なく、特に、基地から離れての任務となればなおさら……その為に、水の大切さを叩き込む。
「地上で降りた時に、水制限すれば良いのに」
「それをやったら、学生なんて生きられないですよ」
ツバメは小此木の横に座ると、恋人の甘い時間のように小此木の耳元に口を近付けて、
「準備は出来てるから……」
小さい声で、か細く囁く。
「ツバメさんのエッチ」
「ふふっ……期待しておいて……」
小此木は囁かれた耳を擦りながら、おもむろに立ち上がって、その場を後にするのであった。
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「ただいま」
「お帰り……」
「お帰りッス……」
「その様子だと……」
「飲食店でも飲み物は提供されないって……」
「その為の制服らしいッス……」
「そっか……こっちは買い物してたら呼び止められて……売れないって……」
三人は顔を合わせて、参ったなと顔をしかめる。
渡された水は生活水も含まれているが、料理をして、食器を洗って、風呂に入って、洗濯をして……それに飲み水……それを考えたら絶対に足りない量、何かを節約していかないと、水は底を付く。
「トイレの水を使えなくしたのは、そういう事か」
トイレの水を飲むのは抵抗があるが、風呂に洗濯に使えれば全然話が変わる。
「どうしよう……」
「大丈夫ッスよリナ!!みんなで概算しようッス!!」
「そうだよ、まだ初日だよ?そんなに心配しなくて大丈夫だよ」
水が使えないという環境、その中でリナは、特に不安そうになるのであった。