ハブ酒3
二人だけのお出掛けでも、充分楽しい時間を過ごせるのだが、
「ちょっと緊張するね」
「制服を着て、うろつくな……って注意されてるスからね」
二人っきりで、制服を着て街中をうろつくのは少し緊張する。
普段は制服を着て、街中を闊歩するなとお達しが出ているのに、今月だけは制服を着て生活しろとの命令……普段の生活とは真逆の行為、規律違反をしているかのようで周囲の目も気になってしまうが、
「……ねぇミィオ」
「そうッスねぇ……」
命令で制服を着た状態で歩いているだけなのだが、周りも普段は見かけない制服着た生徒がいるからか、チラチラとこちらをに視線を投げ掛けてくる。
物珍しいから見られていると、言われたらそうだが……こちらも普段しない事をしているから、気になると言ったらそうだが……
「お店に急ごう……」
「それが良いッス……」
まるで何かに狙われているかのように、二人は足早に走り、いつもの甘味処に逃げ込むと、
「あんみつをお願いします」
「自分はミックスパフェをッス」
「かしこまりました」
通された席に座り、いつもの注文をして一息つく。
昼を過ぎたばかりで、店内の中には自分達二人しかいないお陰で、他人の煩わしい視線を気にしないで済む。
「制服を着るなって意味が良く分かるよ……」
「あそこまで好機の目に晒されると、気分が悪くなるッス……っと、店内さん」
「なんでしょうか?」
「お水をお願いするッス」
一息付いた所で、喉を潤わせようとしたが、お冷がテーブルに置かれていない事に気付いて、お冷を貰おうとするのだが、
「あぁ……あのね二人共……」
「はい?」
店員が申し訳なさそうな顔をする。
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「今日は何を作ろうかな」
凛の食事の為の買い物、自分が食べる訳ではないが、凛が美味しいと言いながら食べてくれるのは嬉しい。
「餃子にしようかな」
オムライスに、ハンバーグと洋食を作って来たので、ここで中華風も良いかもしれない。
火内は挽肉と餃子の皮を買い……
「そうだった、ジュースも買っておかなきゃ」
飲み過ぎないように、小さな缶を幾つかカゴに放り込んでから、レジに向かうと、
「あっ、君……君かぁ……」
「……?」
「ちょっと待っててくれないかな」
「はい……」
レジの店員さんが困った顔をして少し間を開けてから、レジを一回止めて、事務室の方へと行ってしまうのであった。