ハブ酒32
自分が、リディさんにお礼をしたかっただけなのに、食事会に発展している。
そこまでの事をしてくれなくても良いと伝えたかったが、
「ただ残念な事なんスけど、招待されてるのはリナだけで、火内と小此木はまた今度って話しなんス」
嬉々としているミィオを見ては、その言葉を出す事は出来無い。
「リディさんって、どんな人なの?」
今から待ちきれないという様子……どうしてここまで、リディさんとの食事会を心待ちにしているのかを聞いても良いが、そもそもリディさんが何者かというのを知らないので、その事に付いて聞いてみるのだが、
「…………」
「ミィオ?」
そこでミィオの顔が曇る。
「ごめん…喋りたくない事なら聞かないよ」
「……リディさんは、アネキと自分を助けてくれた人なんス」
「助けてくれた?」
「そうッス……リナには少しだけ話ておくッスけど、話した事はリディさんとアネキに秘密にしておいて欲しいッス」
「うん……」
今の今までの雲一つ無い快晴な表情に、これから雨が降るかのような曇天の表情……何か気に障る事なら聞かないと言ったが、ミィオは少し息を整えると口を開く。
「自分とアネキが地上育ちっというのは、昔に話したと思うッス」
「うん」
「でも、自分達が生まれたのは村や街じゃなくて、前線基地なんス」
「前線基地?」
それは言葉の意味の通り、美優とミィオの出身地は特殊で、前線の基地で生まれた。
「RLが繁殖しないように出撃して、RLが都市の方に来ないようにする為の人身御供……そこで働いてたのが自分のお母さん何スけど、そのパートナーだったのがリディさんだったんッス」
「確かお母さんは……」
「その前線基地の隊長と副隊長、お母さんとリディさんの四人の活躍は周囲の治安に一躍買っていたらしいッス」
「らしい?」
「自分が幼少期になる時には、準都市に引っ越したから、前線基地の時の話はアネキから教えて貰ったんス」
「そうなんだ……」
「隊長と副隊長が、自分の命を賭して戦って死んじゃって……ただ、今までの功績で、前線基地に勤めている者の中から準都市に居住を構える事が許されて、それで子供がいるお母さんが、準都市に行く権利を貰ったんス」
「リディさんは?」
「それ何スけど、リディさんは元々鳥かご育ちで、家族との不仲が原因で地上に送られて来たらしくて、お母さんが準都市に行く時には鳥かごに帰ったッス」
簡単な触りしか話さないが、それでも、ミィオの身の上話が不穏な物だというのは十分に分かる。




