ハブ酒2
「うぅ……」
「リナ良い?君と火内君は特別な体を持っているから、泥水をすすろうと、そういう液体を飲もうとも何とかなるかもしれないけど、僕とミィオは普通の人間なんだ。あんなのを飲んだら体を壊しちゃう」
「だったらアタシと火内君で、あの液体を飲めば、水は二人で飲めるじゃん」
「それは緊急事態の話だよ」
「むぅ……」
リナが頬を膨らませて不貞腐れる。
危うく小此木の血液成分が血漿と血球に別れてしまう所であったが、火内がリナを再び捕まえ、子犬を抱っこするように背中から手を回して、今度は逃げられないように抱き上げる。
「そうだよね、本当に緊急事態になって水が足りなくなったら、僕達は液体を飲もう」
「……うん」
火内の慰めに、渋々と頷くのであった。
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そもそもの事の発端は二週間前に遡る。
「これより特別訓練を開始する。お前達には今回、水を断絶させて貰う」
「水の断絶?」
「それって生活どうするの……」
例によって教官からの突然の宣言に、全員が戦々恐々となる。
水が無くて人間が生きられるのは一週間程……それを日々の訓練をこなしながらとなれば……
「早とちりをするな。お前達には、その日の朝に水を提供する。だが水栓を止めるので、通常のトイレ、共用の洗濯機は使えなくなる。仮設トイレは設置してあるから、後で場所を伝える」
どうやら、完全に水を絶たれるという訳では無いらしいが、ライフラインは絶たれるという話。
色々と説明を受けながら、また厄介な事をさせられると思いつつも、まぁ何とかなるかと思っていたのだが、
「後、この期間の間は外に出る時は、私服を禁ずる」
「私服を禁ずる?」
変な命令を最後に受けた。
とりあえず支給された水を受け取って、その日は学校生活を無事に終えると、
「どこか出かけるスか?」
今日は明日は休暇で、外出が認められているので外に出掛けようと、ミィオが持ち掛ける。
「うん、甘い物食べに行きたい!!」
するとリナは、ミィオと一緒に出掛けるというが、
「ごめん、買い出しに行かないといけないから」
「そっか、火内君は家族の事があるもんね……小此木は?」
「今日は、あそこに行かないといけないから」
「あぁ…だから私服をバックに詰めていたんスね」
「秘密警察じゃないけど、軍人だから」
火内と小此木は、それぞれで用事があるからと出掛けてしまったので、
「それじゃあ」
「自分らだけで行くッス」
二人だけで、外に出掛けるのであった。