ハブ酒27
火内とは、自分の機械の目を見せる為に、ゼロ距離と言えるほどに顔を近付けた事があるが……
「早く人間になりたい?」
「それは、どうだろうな?まぁ…本人は、そう思ってるかもな」
「いえ、すみません……でも、こいつが人間じゃないって、写真から分かる物なんですか?」
リディは写真を見ただけで、火内が人間じゃないというが、何を判断材料にしているのか……スマホの中に映る火内を凝視していると、
「そいつの本当の髪色、瞳は青色だ」
「あぁ…染めてるのとカラーコンタクトしてるんですか……原色ぽくって変だとは思っていたんですが……」
「そいつはな、あたしと一緒にいたRLH……お前が知っている、三人目のRLHの友人だったんだ」
「火内 刃……あの時のRLH……」
彼の最期の時の、少し前に会っている。
肉体はヒビの入ったガラス瓶の弱々しく、息をするだけで、透明なガラス瓶の中が削れて薄くなる。
生きる為の生命の活動が、死へと連れて逝く……ミィオと同い年位の少年が、老いた老人のような今際の姿に絶句したが……
「今でも覚えています……あの凄惨な姿……それと焔の色……」
それ以上に心を奪われて声を発せなくなったのは、焔の色。
暗い闇の中で見つめた炎のように、目を閉じれば今でも脳裏に色鮮やかに燃え盛る焔。
この少年が今ここで死んで、肉体が滅んだとしても、魂は穢される事無く、残り続けるのだと、一切の疑い無く思う事が出来た。
「だから、あいつも赤い髪に……ちな何ですけど、この二人は同姓同名なんですか?」
「いや全く違うな」
色んな物をぶち込んだ紅茶もどきを机に置くと、一枚の資料を引き出しから取り出して、美優に渡す。
「これは……核露 雫?」
渡された資料に目を通すと、名前が違う事に気付いたのだが、
「こいつ……こんなに綺麗だったのか?」
その美しい姿の前では、些細な問題にすらならない……それは芸術品の域……端正に整えられた顔立ちもそうだが……左右対称の顔付き。
人の顔立ちは……個性的な魅力という話は今回は置いておくとして、左右対称であるほど美しく整って見え、黄金比率というのが完璧である。
石を削った彫刻なら、この美しさも分かる……美しさの理想を求めて、狂気の沙汰で石を削り出すのだから……
しかし、この核露 雫は人間、細胞の分裂によって生まれる不確実な生物なのに、完璧な美しさを保有している。




