ドラゴンフライ28
銃を持つ兵士たち全員が、怪物に向かってトリガーを引くが、
『ブチュブチュブチュブチュブチュブチュブチュブチュ!!!!!!!!!!』
弾丸が怪物にめり込むだけで、致命傷を与えられていない。
異質な存在。
大きな人の顔を引っ提げて向かって来るそれが、この世の物では無く、あの世から来たと思わせる。
「重火器は用意出来ないのか!!!!」
「無理です!!!!我々は護衛です!!!!重火器は他に回されています!!!!」
指揮官だって、自分達の手元に重火器が無いのは分かっている……だが、それでも叫ばずにはいられない。
自分達が所持している装備では、抵抗出来無いというのを肌で感じてしまっている……どんな武器を……どんな武器があれば、あの怪物に抵抗出来るのかと想像も付かないが、
「……応援を頼め!!!!ここを死守するんだ!!!!」
「了解です!!!!」
民間人を守らなければならない。
すぐに応援が来る訳ではないし、多くの民間人が死ぬ事になるが、それでも応援が来てくれれば、民間人が皆殺しにされないで済むはず。
「早く中に入れよ!!!!」
「ねぇ!!!!何が起きてるの!!!?」
阿鼻叫喚と化しているこの状況を治める術は無く、
「怯むなぁぁぁ!!!!!!あんなの見掛け倒しだぁぁぁ!!!!!!」
『『『『『バッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッ!!!!!!!!!!!!』』』』』
兵士達の怒号と銃声が虚しく響く。
『ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ!!!!!!!!!!』
『………………………………………………………………!!!!!!!!』
オウムガイの姿をした怪物が無数のような触手で大地を鳴らしながら、何か奇声を上げて、その大きな顔を笑顔で歪ませて迫る。
抵抗する事が無駄であり、抵抗する事が虚しい行為だと理解しながらそれでも……
『キュュュュュュュュュュュュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
「何の音だ!!!!」
オウムガイの怪物が、大地を鳴らす音を、卑しい笑顔と共に上げた奇声を、掻き消す程の音が響いた次の瞬間、
『ドッッッッッッッッッゴオオォォオオォオオォオォォォォオォォオオオォォ!!!!!!!!!!』
地面を抉りながら、巨大なドラゴンが自分達の前へと、立ち塞がった。