ドラゴンフライ26
足りない物があるとすれば、それは最後の一押し。
間違い無く良い腕をしていて、油断をすればやられるという状況であったが、勢いを押し込むというのが足りない。
狙われて苦しくはあるが、命を奪われるという絶望的な恐怖は感じず、何とかなるという希望を感じられた。
『それも、こうなってはお終いではあるが……』
補給をしに行ったのか、離脱をしたのか……ドラゴンを模した兵器は離れた。
脅威ではあるが、何とかなる。
次に姿を現した時は……
『正面からやりあってやろう!!!!!!』
先に見える、人の群れに胸を高鳴らすのであった。
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「何だあれは!!!!あんなのは報告に聞いてないぞ!!!!」
他の部隊が、ミンクと化け物を相手にしている間に避難経路作り、民間人を安全な場所へと誘導しながら、護衛していたのだが、
『ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ……………………!!!!!!!!!!』
遠く離れた所でも輪郭が分かる、気色の悪い生物が自分達の方へと向かって来る。
その姿は、オウムガイのようで、触手をバタバタとさせ、貝の部分には大きな顔がある。
「怯むな!!!!撃て!!!!あれは味方じゃないのは明白だ!!!!近付けさせるな!!!!」
」
『『『バッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッ!!!!!!!!!!!!』』』
「きゃぁあぁあぁあぁああぁあ!!!!!!!!!!」
銃を持つ全ての兵士達が、一斉にトリガーを引くと、避難経路を移動していた民間人達の足が止まってしまう。
突然の戦場、聞いた事の無い音、緊迫した空気、それと明らかに自分達を襲うとする怪物。
自分達の命が危機に晒されているのは、嫌でも感じる。
「大丈夫ですから!!!!我々が皆さんを守ります!!!!足を止めずに進んで下さい!!!!」
動きの止まってしまった民間人を鼓舞するように、兵士が大きな声を張り上げるが、
「早く行けよ!!!!」
「ねぇ何をしてるの!!!!」
一度始まった崩壊は、群れを壊してしまう。
群衆雪崩、前の状況を理解していない者達が早く逃げたいと、おしくら饅頭のように前々へと詰め寄り、前は前で戦場の圧に怯えて身動きが取れない。
「建物の中に避難させろ!!!!経路を変えろぉぉぉぉぉ!!!!」
指揮を執っている者は、この状況を一早く察知して、柔軟に対応とするのだが、
「いいから早く進めよ!!!!」
集団行動をさせられているストレスから、命令されるというのが耐えられなくて、大騒ぎを始めてしまう。