ドラゴンフライ24
勝つ為の勝ち筋があるというのに、その線をなぞれない。
(けれど……)
自分がD兵器を操縦すればそれで良いかというと、そうでもない。
操縦してくれているからこそ、撃つ事だけに集中出来るというのに、
(集中し切れない……?信頼していない……?原因が分からない……)
言い表せない気持ちが……表現出来ない乱れが……
「しゃぁねぇ……いくか……」
「いく?どこに?」
五号機のパイロットの、レバーを握る手に力が入る。
「俺は、お前みたいに銃の腕は良くねぇし、アドバイスしてやれる訳でも無いけど……それでも、手伝ってやるよ……その「少し」を俺が払拭してやるよ!!!!」
「まぇっ!!ちょっ!!!!!!」
ペダルを踏み込みと、D兵器が加速する……のだが、
「ダメだって!!!!これじゃあ!!!!」
ペダルを踏み込む事で、D兵器は最大出力で飛ぶものの、右に逸れて行ってしまう。
それは五号機のパイロットの力量を表すもの。
不調を訴えるD兵器をただ出力全開で運転すれば、右に逸れてしまうのを感じ取ったからこそ、真っ直ぐに飛べるように体の向きを調整しながら、ギリギリの出力で飛んでいた。
おかしな姿勢に、最大出力が出せない状況でも、オウムガイの怪物に距離を離されないように喰らい付いていた……のだが、
「これじゃあ、狙えない!!!!」
最大出力で飛ぶD兵器は、オウムガイの怪物を追い抜く速度で飛ぶが、その速度の分だけ右に膨らんで離れて行ってしまう。
これでは狙えない……これでは線が遠退く……離れた所からの精密射撃……?出来無くは無いが、それで仕留め切れる相手でも……
「なぁ!!!!なんで、俺が最初からこうしなかったか分かるか!!!!」
「えっ……」
息が詰まるようなG。
自分の重さと、四号機のパイロットの重さが襲うが、それでも五号機のパイロットは嬉々として、レバーを力強く握りしめて、レバーを踏み込み続ける。
「ピースが足りなかった!!!!イメージはあったんだ!!!!そこまで辿り着くイメージは!!!!」
「ピース!!!?ピースって何!!!?」
「あのオウムガイの怪物の前に躍り出るのは出来た!!!!でもな、ラストを飾る方法が無かったんだ!!!!」
右へと大きく膨らんだD兵器、オウムガイの怪物から大きく離れてしまって、狙う事は出来無いが、
「体が震えてる……」
四号機のパイロットの体は、これ以上に無いほどに震えている。