ドラゴンフライ22
距離が開いた分、それだけ弾丸の命中精度は落ちる。
これで撃たれる心配は無くなったと言っても過言ではない。
『首尾は上々』
他からの援護があれば、オウムガイの怪物も溜まったものではないが、ドラゴンもどきにミンクが、死ぬまで戦っている。
最初に、その対策に駆り出された兵士達は、オウムガイの怪物にまで手が回らない。
『人を喰らったら、お前も喰らってやろう』
あのドラゴンを模した兵器を破壊し、中の人間を喰らった所で、何かが変わる訳では無いが、それでもここまで遊んだ相手だ、敬意を払うという意味で喰らう事にする。
次第に感じる人の群れ。
仔ウサギを守る為のウサギもいるだろうが、全て喰らえば良い……喰らえば喰らうだけ力になるのだから。
まだまだ、この鳥かごの中で暴れ回れるのかと思うと、ゾクゾクする。
ドラゴンの肉を食って、肥大化した時のようには出来ないだろうが、それでも十分に暴れられる。
背中から追って来るドラゴンを模した兵器から、人の群れに意識を集中させて、
『ではでは……頂こ……う……』
まだ離れた所にいる、人の群れに舌なめずりをした時だった、頭が貫かれる感覚が走る。
それは自分の体が、これから撃ち抜かれるという警告、自分がやられるという未来予知。
『なぜだ……?』
突然の警告、突然の悪夢、オウムガイの怪物は何が起きているのかと戸惑いを隠せずに、悪寒が走る方に目を向けると、
『まさか……』
ドラゴンを模した兵器の銃口が、こちらを狙っている……いや、先程から自分の事を狙っていたのだが、銃口が自分の事を完全に捉えている。
死神の手が、首に絡み付いて締め上げる。
息苦しさを覚え、やられると怯えて……
『ドゥルルルルルルル!!!!!!』
『うぅおおぉおぉぉぉぉ!!!!!?』
『ブチュブチュンンンン!!!!!!』
人の群れに向かって走るのを止めて、全力で逃げ出したのだが、それでも体の横を削られた。
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『外した!!!!』
『わりぃ!!!!』
『大丈夫!!!!』
五号機のパイロットはD兵器を操縦し、四号機のパイロットは火器を担当するが、二人の息は完全には一致していない。
互いに持っている技量を別々に全力に出して、立ち向かっている。
『お前ならやれる!!!!』
『やってみせるよ!!!!』
五号機のパイロットと四号機のパイロット、二人の年齢はリナ達と同じで、本来なら学生なのだが、兵器の適正検査の時に、高い成績を出した事で、学校を退学という形で軍に入隊する事になった。