ドラゴンフライ21
『……そういう事か!!!!』
落下して来るのは、この状況に絶望した自殺者ではない。
それも、しっかりとD兵器を知っていて、しかも、操縦しているのが自分だと知っている者。
少しでも、自分で位置を調整をすれば、吹き飛ぶと分かっているから、自分の操縦の腕を心底信じて、落下している。
『だったら!!!!』
落下している人物が変な動きをしても、対応出来るように余裕を持たせていたが、その余裕を、落ちて来る者を拾う事だけにリソースを割く。
落下している人間を救うのではなく、用事の途中で拾うように。
計器を一切見ない、視線は逃げるオウムガイの怪物に向ける。
どうやって、安全に落下して来る人間を助けるでは無く、あの逃げ惑うオウムガイの怪物を、どう調理をするかと、舌なめずりをして……
『ドサンッ!!!!』
「良い所に来た!!!!」
「途中で、安全に拾うの止めたでしょ!!!!」
自分のパイロットシートにしがみつくのは、あの四号機のパイロットであった。
「んな事はねぇさ!!!!俺の膝の上に乗れって!!!!」
「ハッチ閉めて!!!!」
「あいよ!!!!」
四号機のパイロットが、五号機のパイロットの膝の上に移動するとハッチが閉まり、内部に格納される。
「アーム使うよ!!!!」
「頼んだ!!!!」
四号機のパイロットは、五号機のパイロットが握っているレバーとは別の、横に備わっているアームレバーを引き出す。
それは指を嵌めるタイプのレバー。
D兵器の基本の動きは、予めプログラムされている物から状況に合わせて動くのだが、それでは対応出来ない細かい動きをする時に、アームレバーを使う。
本来、こんな飛んでいる時に使うような物では無いのだが、
「好きなように飛んで!!!!」
「言われるまでも!!!!」
二人乗りで乗るというなら「使えなくなくも無い」裏技。
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『ほっほっ……少し乱れたが、諦めた訳では無いのか』
自分を追って来る、ドラゴンを模した兵器であったが、建物から飛び降りた人間を助けようと、軌道を乱した。
そのまま、落下して来る人間を救うのに集中してくれれば、こちらも距離を離せたものという話であったが、それは一瞬で、すぐに自分の後を追って来た。
『それでも人助けのうちに、他の人が死ぬ事になるぞ』
D兵器が見えなくなる程、距離を離したわけでは訳では無いが、それでも距離が開いた。