ハブ酒100
『ハァァァァァ………』
『ハァァァァァ………』
『ハァァァァァ………』
三つ首の龍のそれぞれの口から瘴気が漏れると、死が蔓延する世界に戻っていく。
マナが混ざる炎で一度は清められた世界が、また紫の霧に包まれてしまう前に、何かしらの動きをするべきなのだろうが、
『ふぅ……ふぅ……ふぅ……』
ドラゴンは息を整えるだけで、その場を動かない。
『どうした肩透かしか?』
『我々が消える前に、息切れをしてるではないか?』
炎の中から姿を現す怪物は、もう人知を超えた存在。
『すまないな、ドラゴンを超えてしまって』
人知を超えた、ドラゴンすらも超えた怪物。
『だが、この世界を見捨てれば、キサマは生きられるかもしれないぞ?』
優しく気遣うかのような声色だが、それは屈辱。
『今逃げるなら、我々はキサマを追わん』
相手を思いやるかのような言葉は、それは恥辱。
『さぁ行くが良い』
恥を晒して行けと言う……それは、自ら頭を垂れて屈服しろという意味。
『……………………』
ドラゴンは息をするのを止めて、眼を閉じる。
『どうした踏ん切りがつかぬか?』
『余計な誇りは、身を亡ぼすぞ?』
身動き一つしないドラゴンを、虫けらのように悪戯に挑発する怪物。
『ドッォスゥゥンッッッ!!!!!!!!!!』
怪物の巨体が動くだけで、地面が揺れ動く。
このままでは踏み潰されて殺されてしまうというのは、火を見るよりも明らかであるが、
『……………』
その現状を受け入れないと言わんばかりに、ドラゴンは目を瞑り続ける。
『ほれほれ、踏み潰してしまうぞ?』
地面の上で、今にも息絶えそうな蝶に飛んでみせろと、囃し立て……
『蝶……?』
それは怪物の中にあった記憶、一人の霊能者。
霊力を、蝶の羽に変換して戦った……
『間抜けだな……やっと気づいたか』
『……っ!!!!!!死ぃぃねぇえぇえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!』
怪物の中である人物を思い出されると、あれほど余裕を見せ付けていたのに、声を荒げるとドラゴンを踏み殺そうとするが、
『準備は、もう終わった…………』
『ぐぅおぁあおあぁおあぁおあぁあおあぉあおあぁ!!!!!!!!!!!!!!』
ドラゴンの体が淡く、白銀の光で包まれると、怪物が恐れ戦いて後退りをする。




