空へと
「至急!!至急!!RLの襲撃!!至急!!至急!!RLの……!!」
『バギッ!!』
「ぐぇ⁉」
それは、ほんの一時の戦い。
人間という古い器に閉じ込められた生命では、RLHに対抗など……特にマナを正しくその身に宿せるようになった者を相手にして、パワードスーツを着用していない人間が勝てる訳が無い。
『…………』
指令室の中に転がる、いくつもの死体。
雷鳴化した自分には他愛の無い作戦。
単身で敵の基地に入り込み、敵の指令室を叩く……その後は……
『こちら鳥かご!!何があった!!』
最後の兵士は受話器を取っていたが、それは鳥かごへと直通する回線だったのだろう、鳥かごのオペレーターが、何事かと連絡を返して来る。
『…………』
声を発せられない体では、この通話を止める術はない。
『どうした!!返事をしろ!!』
このまま放置していては痺れを切らして、周辺の基地に連絡を取られ、敵の応援を寄こされてしまうが、
『…………』
慌てたりしない。
『パサパサ……』
代わりに喋ってくれる、この鳥がいてくれれば話は違う。
色とりどりの喋る鳥の中から、最も彼に近しい青い色を持った鳥を貰った。
頭を指先で軽く撫でてから喉をくすぐり、自分の思っている事を、青い鳥に念じると、
「RLの襲撃を受けています、RLを掃討してから輸送機を出すので、予定時刻を後程伝え直します」
自分が思った言葉を代わりに喋ってくれる。
『了解した……が、これは緊急用の回線だ。以後は、通常回線を使うように』
「申し訳ありません」
回線の向こうにいた相手は、用事が済んだ途端に通話を切った。
「緊急用の回線……RLの襲撃が緊急では無いか……」
敵ながら現場で戦わない者というのは、気楽というのか……
「彼等なら……」
『…………』
そこで青い鳥の口を優しく塞ぐ、その先はお喋りが過ぎる。
予定通り指令室の制圧を終えた……後は、用意された段取り通りに進むだけ。
基地全体に放送を掛ける為、マイクに青い鳥を近付け、
「緊急事態が発生、周辺でRLの群れが発見された。スクランブル班は、所定の場所に出撃。上官は作戦室に集まり、その他の者達は、いつでも出られるように宿舎にて待機せよ」
これで良い……これで空へ行ける。