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第三話 2

翌朝、通学路でミハルとばったり会う。

どこか不機嫌そうな顔をして歩いていた。


「ミハルどうしたの?」

「あぁ、ちょっとな。」


よく見ると口元が切れていて血が滲んでいた。


「え?怪我してるじゃん。何があったの?」

「ちょっと静香にな…。よくわからんが…。」


先輩が殴った?

先輩はそんな事をする姿を想像できない。

理由なく…いや、理由があっても殴ったりすることがあるだろうか?


「ミハル…よっぽどの事をしたんじゃないの?」

「あ?全然わかんねぇ。いつも通り色々話してたら突然ぶん殴られた。」

「何言って怒らせたの?」

「いや…それは言えねぇ。それも静香との約束だからな。」

「ふーん。ならいいけど…。あんまり先輩に迷惑かけないでよね。」


そういえばよく先輩と会って話してるみたいだけど付き合ってたりするのかな?ミハルはあんまり付き合うとかそういうタイプでは無いような気がするけど…。

実際、先輩との関係は気にはなっていた。

少し先輩について聞くと約束と言って答えてはくれない。


「ふあぁ…。」

「ミハルがあくびとか珍しいね。」

「昨日あんまり寝てないんだよ。」

「夜遊び?停学とかになるよ?」

「んー…。まあこれも言えないな。また殴られたらたまったもんじゃねぇ。」

「何?また約束?」

「まあそんな感じだ。」


結局いつもの様にはぐらかされながら会話は終わる。


「じゃあ私はこのまま教室に行くから。」

「あぁ、まあ俺は適当に寝てくるわ。」

「授業出なさいよ。」


そんな私の声を聞き流しながらミハルは何処かへ歩いた行った。

私は一人教室へ向かう。

昨日の今日だ。実際教室に行きたくない。

鼓動が速くなる。

教室のドアに手をかけ、一呼吸してドアを開ける。

皆がこっちを見る。

私は下を向きながら自分の席へと着く。

机には何もないようだ。

恐る恐る顔を上げる。

黒板も特に何か書かれているわけでもない。

よかった。

今日は特に何もなさそうだ。

しかし教室は何かソワソワしている。

教室を見渡す。

特に異変はないように見える。

何に皆ソワソワしているのかわからない。

そこに一人の女子生徒が話しかけてくる。


「あんたさぁ。」

「…何?」

「ちょっと…やめときなって。」


もう一人の女子生徒に止められてその場を去る。

何なのだ。

話しかけてきた女子生徒は校門で私に言いがかりを付けてきた女子生徒の友達である。

クラスのいわゆるリア充メンバーの一人だ。


…?

そういえば…。


もう一度クラスを見渡す。

リア充メンバーの中心とも言える、私に言いがかりを付けてきた女子生徒のリーダー的な子が来ていない。

いつもならその子を中心に輪ができているはずだ。


教室の違和感。


それはリーダーの子が来ていない。

そしてそのグループの女の子が皆私を見ている。

来ていない理由が私であると言うかのように。

そしてその違和感はホームルームにて衝撃の事実へと変わる。


「皆さんに残念な報告があります。」


担任から告げられた言葉。

それはリーダーの女の子が朝型遺体で発見されたとの事だ。

話を聞くと夜、グループでやりとりをしていたらしいのだがリーダーの女の子が全く参加しなかったらしい。

そしてその後も一切連絡が取れなかったとの事。

昨日、あんな事があった後だ。

私が何か知っているのではないかと一人の女子生徒が話しかけてきたらしい。

そんな事あるわけ無いのだがやたらと彼女たちの視線が痛い。

ホームルームが終わるとまた女子生徒に声をかけられる。


「あんた何か知らないの?」

「何かって…?」

「昨日あんな事されたから仕返しとかしたんじゃないの?」

「仕返しなんて…。そんな事してないよ。」

「はぁ?あんたが何かしたんだろ!?ホントの事言えよ!」


どんどんエスカレートしていく女子生徒達。

周りの生徒もソワソワしながらこちらを見ている。


「何話してんの?」


空気をぶち壊すような呑気な声。


「…ミハル?」

「あ、ミハル君。聞いてよ。この女ヤバいんだよ。復讐で人殺しなんて頭狂ってるよ。」

「そうだよ。ミハル君こんな奴と一緒にいたらヤバイよ。」

「ち…違うよ…。ミハル。私はそんな事…。」


ミハルの方を見るとミハルはポカンとした顔をしていた。


「遥乃はそんな事してねぇよ。」


不思議そうな顔をしてミハルは言う。


「何でそんな事わかるの?」

「コイツに決まってんじゃん!ミハル君騙されてるんだよ!」

「そうだよ!大人しそうな顔してるけど実際はヤバイ奴なんだよ!」


教室中に罵声が響き渡る。


「違ぇって言ってんだろ?」


その一言で教室が静まり返る。


普段のミハルからは考えられない様な冷たい、心臓に刺さるような声。

その一言で泣きそうになる女子生徒までいた。


「あんた…覚えてなよ…。」


捨て台詞のように一言残し、机を蹴って去っていった。


その姿をじっと見ているミハル。


「あの…ミハル?ありがとう。」

「あぁ、別にいいよ。」


とはいえ、このまま教室にいることは出来なく、また図書室に行くことにした。


何がどうなっているのだ。クラスメイトが突然死んだ。

それを何故か私のせいにされる。私は悪口を書かれた被害者無のに。復讐なんて、したくても出来るわけが無い。しかも殺人なんて…。


「教室帰りたくないな…。」


昨日に続き、今日も一日一人図書室で過ごすことにした。

単位とか大丈夫かな。

そんな事を考えつつも少しずつ、この現実を嫌に思うようになっていた。


「私…何で生きてるのかな…。やりたいこともないし、学生としてもまともに通えていない。友達もいないし…先輩も卒業したし。ミハルくらいしか…。」


少しずつ、負の感情が生まれた事を認識した。

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