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由紀江の会社

 昨日は由紀江(ゆきえ)優子(ゆうこ)も疲れてすぐに寝てしまった。

 翌日、二人は改めて挨拶をした。朝食を二人でとり、その日は由紀江の会社の社内の案内をすることにした。

 いい時間になったところで、由紀江は優子を連れて建物二階の事務所の方へ向かい案内を始めた。

 事務所はそう広くない。窓側に由紀江の席があって、その斜め前に談話用のソファーとテーブルがある。なんだか某名探偵の漫画の某探偵事務所みたいな配置だ。しかしそこにプラスして、由紀江の席のもう片方の斜め前に、机が二つ並んでいる。

「この二つの机ね。完全に物置用なんだけど。この一つを優子ちゃんの席とします。もちろん私側の席でね。今日片付けるから明日から使ってね。」

 そのほか、事務所内のトイレや冷蔵庫、備品などの説明を受けた。

「一人でいたわりに、結構整備されてるでしょ?」

 そうして事務所内の説明が終わり、次はその談話用のソファーに座って会社の説明と仕事内容、雇用条件の話をすることとなった。

「私の会社は大まかに言えば商社。といっても、そんな立派なものでもないけど。マーケティングはしっかりやってるつもり。コンサルはしてないよ。そこは安心してね。」

 優子はその「安心してね」の意味がよくわからなかったが、由紀江の後の説明によると、コンサルは相当しんどいらしい。いわゆるブラックに近くなる。そこまでは手を出したくないから、マーケティングにとどまっているのだそう。

「いわゆるものを売る会社ということですね。」

「そうだね。まあ、この前それが行き過ぎて、危ない商品に手出しちゃったんだけど…。」

「危ない商品?」

 優子は気になった。もしかして犯罪的なものに手を染めたということなのかと少し心配になったが、由紀江曰く、

「法の範囲内で暴れたというか…、まあ、でも儲け話で悪い船に乗っちゃったって感じだね。今はもう清算したけど。全部その事業自分から潰したし。」

 その事業とやらはどうも、特捜局、つまりは特殊能力の類に関わってくるものらしく、かなり危ない橋を渡ったようである。しかしそのことは特に公になることもなく、法に触れているわけでもなく、むしろ確かに儲けられたらしく、うまい事業だったようだ。

「今はもうそんな貪欲にはならずに、安全な橋を渡ってるよ。まあ経営者が貪欲にならずにどうするんだってこともあるけどね。」

 由紀江はそう言いながらも、もうあの類の商売には関わらないと固く誓っている様子だった。

 そんなこんなで優子は、由紀江の会社がどのあたりに商売をかけているかとか、もっと詳細にはどういった部類の商社なのかとか、マーケティングの経験を活用して他にもこんなことをやっているとか、そういった会社の説明を受けた。

「さて、まあ細かい会社の説明はこんなところかな。次は優子ちゃんの仕事内容だけど。事務をやってもらおうと思ってるよ。慣れてきたらさっき言っていた事業の運用の一部もやってもらいたいかな。」

「わかりました。言われたことはやります。」

「頼もしいね。」

 由紀江は優子の優秀さを聞いていたので、どこまでやれる子なのかとかなり期待していた。

「じゃあお次は会社の規定とか待遇とか…。」

 そういいながら、由紀江は雇用契約書を優子に見せた。そこには、仕事内容や待遇や会社の福利厚生などがびっしり書いてある。

「これね。結構細かく書いてるからよく読んどいてね。」

「はい。」

 優子はいったんその内容に目を通した。

「それでね優子ちゃん。やっぱり給料は大事なんだよ。どう?その給料で納得できそう?」

「私が今どれだけできるかもわからないのに、私に何も拒否する権利はありません。というより、いいんですか、この額。私が以前調べた東京の新卒大卒の給料くらいありますけど…。」

「ん?ああ、そう、それを意識したの。だって、給料低いとやる気でないでしょ?私はやる気でないから。それに私は優子ちゃんに期待してるからね。まあその給料はいったん試用期間額とでも思って。様子見てこれじゃ足りないなと思ったら、一年待たずに昇給するから。」

 由紀江は優子に期待しているということもあるが、実はそれよりも、優子のこれからを見越して、優子が自立して、自分の人生を人間らしく歩んでいってほしいという思いも込めていた。それに会社は小さいが収益はそれなりなので、実はまだ余力がある。由紀江は優子に対しては惜しみなく、待遇を良くしようと考えていた。


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