優子の気遣いは儚き時間
優子は由紀江にあることが言い出せずにいた。それはたった一言。
『由紀江さんの家に行ってもいいですか?』
という言葉だ。
この言葉がなぜ言えなかったのか。それは由紀江の普段の生活を見ているからだった。
由紀江は社長だ。出勤や休日なんて関係ない。いつ休むのかもわからない。日曜日であっても何かあれば関係なく働いている。普段は休んでいるようではあるが。土曜日も休みの日はあるようにも思える。以前、
「できる社長って、ちゃんと休むんだって。」
ということを、由紀江自身が言葉にしていたことがあった。優子には土日祝の休みを与えているから、由紀江もその通り休むことが、できる社長の条件とみているはずである。わからないが。
ただ、それでも基本毎日何かはしているようである。だからこそ、由紀江に対して「家に行っていいか」なんてことが簡単に聞けないのだ。たとえ休みだったとしても、由紀江にとっては貴重な休みのはずである。一人でゆっくり横になって居たいかもしれない。そう思うと、優子は一言が言い出せなかった。
しかし城崎温泉から帰ってくる途中、由紀江は言っていた。『一人暮らしやめて、またうちで一緒に暮らせばいいじゃん。』と。由紀江も優子と一緒に過ごしたいのだ。優子もその言葉を帰ってきてから何度も思い出していた。もし今、同居していたら、以前よりももっと親しく過ごせているのだろうか、と。由紀江にとって自分はどういった存在なのか。自分は負担になる存在か否か。由紀江が本気で「一緒に暮らせばいい」と言っているのなら、それはとても嬉しいことだし、そうありたいと思える。優子はそんなことを最近いつも考えていた。
由紀江と仕事をしている平日も、由紀江に会えない休日も。




