少しざわざわする休日
日曜日。優子と由紀江は、由紀江の家で炭酸ジュースを飲んでテレビを見ながらたわいもない話をしていた。
「由紀江さん、昨日も仕事してたんですか。」
「まあね。そういうもんだよ、社長って。むしろ、一週間に一回以上休みとってる私の方が稀なんじゃないかな。」
「そうですか。なんでそんな大変な立ち位置に自分からなりに行くんですか?」
「たいていの人は、そんな大変になるなんて思ってもないんだよ。みんな希望をもって野望を持って会社を立ち上げるからね。そんで、一年後には約三割が廃業、三年後には五割が廃業だってさ。怖いねー。そんなもんだよ。」
「この会社は三年ですよね。その生き残りの五割に入ってるんですね。」
「そだね。社員はいれないで、細々とやってたよ。」
優子と由紀江は会社の話をした。優子は経営者になる野望や夢なんかこれっぽっちも持っていないようで、そんな大変なことをよく自分から飛び込んでいくなと思っているようだった。
それからもいろいろ話していた。初めのころに比べたら優子との会話もかなり普通になってきた。普通に会話できるこの状況が由紀江は嬉しかった。
「来週だね。温泉。」
「そうですね。すこしざわざわしています。」
「お?楽しみ?」
「たぶん、そうなんだと思います。」
優子は、初めての温泉旅行が迫る中、落ち着かない気分のようだ。
「私もだよ。優子ちゃんとの旅行。楽しみ。」
優子はきょとんとした。
「温泉が楽しみなのではないのですか?」
「もちろん温泉も楽しみだよ。だけど、優子ちゃんと行けるのがいいんじゃん。」
由紀江自身はその言葉には深く考えていることはなかった。本当のことをそのまま言っただけだ。しかしその言葉は優子にとっては特別な言葉だったようだ。優子は少し目線をそらして、
「そうですか。」
とつぶやいて、とても穏やかな表情になった。ような気がする。無表情には変わりなかったからだ。しかし、その声は少し嬉しそうな、そんな感じが漂っていた。




