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プロローグ2 勝原優子の過去

 勝原優子(かどはらゆうこ)勝原智也(かどはらともや)の弟の一人娘だった。

 しかし、勝原智也と親戚関係であった勝原優子の一家は、その噂や家柄の特定などを受け、昔から多くの差別、迫害を受けていた。

 それで優子の父は特に迫害を受けて、何度も土地を追われ、精神的に追い込まれていった。その迫害は妻や娘の優子にまで及ぶことは常であった。優子の父はそれに耐えられなくなり、自殺を選んだ。優子がまだ小学校低学年の時である。

 残された優子の母は絶望した。それでも優子だけは守っていかなければならないと思った。それで日に日に過保護になってもいった。しかし、夫が死んでも迫害は続いた。苗字を変えようとも思ったが、特定する人間がいる限りそれは無駄なことだともわかっていたし、何よりそんな気力さえもわかなくなっていた。夫が死に、迫害に犯され、自分自身も仕事も迫害によって長続きせず、優子も学校で先生からも迫害され、優子の母も精神的に限界が来ていた。それで優子の母は、次第に優子に対して暴力も振るうようになってしまった。その理由はわからないが、おそらくは優子に対する過保護と精神の限界、そして優子という勝原の血を継ぐ者に対しての自分の人生を狂わされたという憎しみ。愛と憎しみと精神的限界が混ざり合って、優子に対する暴力と溺愛と過保護とが混ざった、見るに堪えない様相になってしまった。そんな優子の母は、それでも経済的負担のために仕事をやり続け、家事もやり続け、優子の面倒も見続け、身体的に限界が来て、優子が中学に入る前に過労で倒れて亡くなった。

 こうして優子は小学生時代に両親を亡くしたのだった。

 優子の中学時代は養護施設で暮らしていた。しかしそこでも施設の職員から恐れられ、迫害された。学校に通っても先生は皆優子を危険視して、その噂は保護者に伝わり、生徒に伝わり、犯罪者の家の人間として迫害を受け続けた。中学時代の優子には居場所がなかった。学校も施設も優子を迫害し、いじめた。それでも優子は心を殺して中学時代を耐えた。しかし高校に進学するときにその土地を離れることを決意した。そこで運よく、母型の方の遠い親戚の老婆老爺の家に入ることとなった。これが優子にとっては初めての安息だった。その二人の夫婦は子供を早くに亡くしずっと二人で生きてきた。そんな中に優子が来たので、非常にかわいがった。悪心など全くなく、優子の高校時代に愛情を注いだ。そしてその家は山奥の高台の集落にあった。集落皆が優子をかわいがった。中には優子の事情を知る者もいたが、それでも優子を悪いようには扱わなかった。

 しかし学校では別だ。学校では今までと同じように迫害を受けた。家から高校まではかなり距離があるが、それでも優子は高校まではと学校に通った。

 そんなある日、事件が起きる。

 優子は今自分がお世話になっている集落までも噂になっていた。それはいつものように、先生から保護者に伝わり生徒に伝わったというものだった。

 一つの女子と男子の生徒グループがその噂を広めており、そんな中で一人の女子生徒が優子に対し、「その集落の人も犯罪所の共犯なんじゃないの?」とからかうようなことを言った。優子はその言葉にはひどい怒りを覚えた。しかし優子から何かすることはなかった。そうすると、女子生徒は調子に乗って、優子の髪を掴んで、クラス中に聞こえるように「こいつ何も言い返せない、もう自分で虐殺犯罪者って認めてんだね。」といった。すると近くにいた男子生徒が「ちょっと・・・、やりすぎなんじゃ・・・。もうやめなよ・・・。」といった。女子生徒は、「はぁ?もしかしてこいつのこと好きなの?犯罪者のこと好きになるとかやばいね。ぎゃはははは!」といって、周りにいたそのグループの男女もそれに参加した。

 優子は今まで自分が迫害されてきたことは常であったため慣れていたが、自分を守ってくれる人、自分をかばってくれる人が迫害されるのは慣れていなかった。これが初めてだったのだ。

 優子は立ち上がり、自分の髪を掴んでいる女子生徒の顔面に向かって思いっきりこぶしを撃った。女子生徒はまるで軽い発泡スチロールかのように、机や椅子を巻き込んで数メートル吹っ飛んでいった。クラス中に激震が走った。女子生徒痙攣し意識がない。鼻や口から血が出ている。周りの女子生徒は叫び、男子生徒は「やばい本性現したぞ!」と化け物扱い。吹っ飛ばされた女子生徒と一緒にいた、体格の良い男子生徒が優子にとびかかり押さえつけようとしたが、優子はそれを軽々払いのけ、その男子生徒の襟をつかんで、勢いよく教室の廊下側の窓へ放り投げた。男子生徒は窓を突き破り、破片が刺さり、そのまま廊下へ投げ出された。

 優子の細い華奢な体からは想像もつかない力だった。

 周りのクラスの生徒は何事だという感じだった。

 優子は自分にこんな力があるなんて今まで知らなかった。その力に放心状態だった。ふと周りを見ると、みな化け物を見る目をしている。さっき優子をかばおうとしてくれた男子生徒も怯えた様子だった。

 優子は放り投げた男子生徒が死んでしまったのではないかと心配をした。それで教室から廊下に出て確認しようとしたところ、後ろから勢いよく先生がとびかかってきて、ガラスが散らばっている床に叩きつけられ、そこに押さえつけられた。それから複数人の先生が優子をガラスの散らばる床に押さえつけて、顔からは血が出て、それでも頭も押さえつけられて、優子はもうどうでもいいと諦め、警察が来るまでその状態だった。

 それが原因でこの学校にはいられなくなった。この学校にいられなくなったということは、集落からも出るしかなくなったということである。優子はこれ以上自分が集落にいることが集落の皆のためにはならないと思い、そして高校も追われたのでこれ以上ここには住めないという理由で集落を出ることにした。親戚の夫婦はひどく悲しんだ。集落の人たちも皆寂しくなると惜しんだ。それでも優子が決めたのならと、皆優子を送り出した。優子は行く先を告げなかった。自分とこの集落は完全に縁を切ると決めたからだ。

 それからして、優子が懸念した通り、集落にメディアの取材が押し寄せた。しかしそこには優子はいない。優子はすでに田舎を離れ、東京に来ていたのだった。

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