由紀江の現状報告
「もしもし。天筒です。二か月ぶりです。」
「ああ、どうだ?あの後は。勝原優子はうまくやっているか?」
由紀江は特捜局の斎藤助安に経過報告の連絡をしていた。
「はい。想像以上にできる子で、仕事に関しては言うことないです。日常生活については、過剰なほど気を遣ってくる状態でした。今では少し気も緩めてくれてきたかなという感じです。」
「そうか。仕事については心配ないだろうとは思っていたが、やはり普段の日常の時間が問題か。少しずつ慣れてきているのならいいが。」
助安も優子のことを心配しているようだ。
助安は普段はぱっと見冷たい冷淡な感じだが、案外人情には厚い。由紀江はそれを認めて、こうして関係を構築している。
由紀江は今の状況を話した。
「まあ、優子さんとは別居が始まってしまったんですけどね…。」
「そうなのか。勝原優子は一人暮らしか。早いな。」
「少し距離感を間違えたのかもしれません…。」
「そうか。天筒に世話になり続けるのがわるいと思ったんだろう。勝原優子は真面目過ぎる。そういう性格だ。おそらく天筒は間違ってはいない。誰がやってもそうなっただろうな。」
「そうですかね…。」
「勝原優子は普通の人間の人生を欲していた。そのあたりはどうだ。」
「ショッピングセンターで買い物とか、花見とかは一緒に行きました。優子さんは特に周りを警戒しすぎることもなく過ごせていたと思います。ただやはり、純粋に楽しむにはまだ時間が必要そうです。たまに無表情ながらも不安そうにすることがあるので。」
「まあ、それは仕方ないかもな。時間をかけて悩んで、馴染んでいくだろう。やはり天筒に頼んで正解だった。よく見てくれている。」
「保護者ですからね。責任がありますから。それに、それだけではなくて、あの子は放っておけない子なんです。あまりにも今までがかわいそうで。あんなに純粋無垢で真面目なのに。」
「そう思えることが、天筒に頼んで正解だったということだ。勝原優子には人間としての平和な人生を送ってもらわなければならない。これもある意味特捜局の役目だしな。また勝原優子と顔を合わせようと思う。六月頭くらいに三か月ぶりに様子を見る。高次も連れて行く。また都合のいい時間をいくつか教えてくれ。」
「わかりました。お待ちしています。また連絡します。」
「それじゃあ。」
電話での報告は簡単に終わらせる。また今度、助安が来た時にじっくり話す。




